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シリーズ:安全な食とは

【天笠啓祐 / 市民バイオテクノロジー情報室代表】

2013.03.01 
第8回 遺伝子組換え鮭がやってくる一覧へ

・初めてのGM動物食品
・性格が獰猛になるなどさまざまな危惧が
・EU議会は輸入禁止を求める
・国産鮭が減少し養殖鮭の輸入が急増

 昨年末、米国FDA(食品医薬品局)は、遺伝子組換え(GM)動物食品としては初めてとなる、成長スピードを早めた鮭について、環境への影響はない、食品としても安全だ、と発表しました。
 実は、この評価書がまとめられた日付は5月4日でした。なぜ実際の発表まで半年以上かかったのか、考えられる理由は大統領選挙だと考えられます。オバマ大統領が消費者から嫌われないように、先延ばししたようです。この評価書案は、まもなく正式に承認される予定で、その後GM鮭が米国内で流通することになります。

◆初めてのGM動物食品

 昨年末、米国FDA(食品医薬品局)は、遺伝子組換え(GM)動物食品としては初めてとなる、成長スピードを早めた鮭について、環境への影響はない、食品としても安全だ、と発表しました。
 実は、この評価書がまとめられた日付は5月4日でした。なぜ実際の発表まで半年以上かかったのか、考えられる理由は大統領選挙だと考えられます。オバマ大統領が消費者から嫌われないように、先延ばししたようです。この評価書案は、まもなく正式に承認される予定で、その後GM鮭が米国内で流通することになります。
 このGM鮭は、米国のベンチャ企業が開発したもので、アトランティック・サーモンの成長を促進させたものです。同社は、この鮭は繁殖不能にしてあるため、安全に養殖できると主張してきました。また、魚そのものを販売するのではなく、卵を養殖場に販売することになっています。その養殖場はパナマにあるものを予定しています。

◆性格が獰猛になるなどさまざまな危惧が

 しかし、もし不妊の鮭が大量に環境中に逃げ出すと、鮭の滅亡をもたらすかもしれません。また、不妊の技術は絶対とはいえず、生殖能力を回復する可能性が高く、そうなるとGM遺伝子の拡散を招きかねません。
 さらには、受精卵を販売することは、当初はパナマだけかもしれませんが、その後、さまざまな場所で養殖されることになり、環境中に逃げ出すリスクを高めることになります。魚を養殖場に完全に封じ込めることなど不可能だからです。
 『ニュー・サイエンティスト』誌は、このGM鮭は性格を変え獰猛になることが分かり、もし環境中に逃げ出すと、生態系に大きな影響がでると指摘しました。鮭は肉食であり、ほかの魚を食べるが、この鮭の場合はさらによく食べるため漁業資源が失われたり、稀少種が失われたりする危険があると指摘しています。
 米インディアナ州パーデュー大学の研究者らは、雄の生殖能力を抑制したGM魚を放流した時に、環境中に生息する野生種が絶滅に追いこまれる時間は、想定されていたより短くなると述べています。
 GM鮭は体が大きく、その分、雌を引きつける能力を高めています。しかし、生命を操作した上に体が大きくなったことから、生殖能力が弱まっています。もし逃げ出したりすると、種の絶滅をもたらすなど生物多様性に与える影響が大きいのです。
 スウェーデン・イエテボリ大学の研究でGM魚が環境中に放流された場合、生態系や人間の健康への影響に対する懸念が示されました。理由として、成長が早いと、それだけ環境中の毒素の蓄積が早く、その毒素を人間が摂取したり、成長ホルモンの濃度も高く、それを摂取することによる、がん細胞を刺激するなどの影響も指摘されました。

◆EU議会は輸入禁止を求める

 このようにさまざまな問題点が指摘されていることから、EU議会は欧州委員会に対して、GM鮭の輸入を禁止し、ヨーロッパの市民の食卓に登場しないよう求めました。
 米国内でも反対の動きが活発化しています。約30の業界団体で構成されている全米動物農業連盟が、このGM鮭を承認しないよう、米連邦議会に要請書を提出しています。またアラスカ州やカリフォルニア州などの鮭の漁業者を抱える州政府や州議会、そして州選出の連邦議会議員も強く反対しています。

◆国産鮭が減少し養殖鮭の輸入が急増

上が遺伝子組み換え鮭、下が通常の鮭 このGM鮭は、日本の食卓の問題でもあります。現在、日本の食卓に出回る鮭の多くが、輸入ものになってしまいました。このところ国内生産量は減り続け、1996年の37万385トンをピークに、2010年には19万7900トンになってしまいました。代わりに増え続けたのが輸入鮭で、2010年には24万8674トンにまで増え、国内生産量をかなり上回りました。
 輸入先も1990年代までは米国やカナダ産が多かったのですが、いまや半数超をチリ産が占めており、しかも天然ものが激減、大半が養殖ものになってしまいました。
 そこに目を付けたのがアクア社である。養殖の主役にこのGM鮭を押し上げようと、開発を進めてきたのです。もし、米国でこの鮭が承認されれば、世界的に流通圧力が強まります。
 作物では種子を制するものが作物を支配してきましたが、漁業では受精卵を制するものが魚の世界を制する時代がやってきそうです。


(写真)
上が遺伝子組み換え鮭、下が通常の鮭

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