食品流通 シリーズ詳細

シリーズ:利益の取れる青果売場の現在!

【榎本 博之 アズライト代表】

2017.04.03 
「海外事例(アメリカ編)」売場で食の動向を感じチャンスの芽を一覧へ

 農業に関わる読者の皆さんが、国内外の事業や施設・設備の視察によって技術・ノウハウといった情報を得ているのと同様、小売業者も様々な場所を視察に訪れ、試行錯誤しながら店舗運営を行っている。その視察先も幅広いが、とりわけ国外で数多くの小売関係者が視察に訪れているのがアメリカである。どのように青果物の付加価値を高めているのだろうか?

◆成長目覚ましいオーガニック野菜

1店舗目の果物平台(before) 以前紹介したとおり、アメリカではオーガニック市場の成長が目覚ましい。Whole Foods Markets(ホールフーズ)のような、オーガニックに力を入れて各地に展開する食品スーパーがあるだけでなく、Wal-MartやKrogerのような全米で展開する大手チェーンも積極的に販売を強化している。オーガニック青果物は前年比二桁増で成長しており、今では一般的なローカルチェーンでもオーガニックが普及する一方で、商品だけでの差別化は難しくなっている。
 とりわけ、厳しい状況に追い込まれているのが、ホールフーズである。直近の既存店売上高は2016年12月期まで6四半期連続で前年同期比を下回り続けている。その要因は、「Whole Paycheck(ホールペイチェック:ホールフーズで毎日買物をしていたら給料がなくなってしまうの意)」と揶揄されるほど、店舗イメージに割高感が根付いてしまった点や、先述の大手チェーンなどのオーガニック市場進出が、競争を激化・同質化させている点によるところが大きい。さらに、昨年からの食料品のデフレ傾向が顕在化し、食品スーパーで軒並み客単価が減少していることが重なった。
 こうして成長が鈍化するなか、ホールフーズでは小型店の新規フォーマット「365」を始動させた。店舗イメージの転換とこれまでと異なる顧客層の獲得を狙った集客力強化により、新たな成長の源泉を発掘するため、西海岸エリアで3店舗が展開されている。

◆バックヤードを店内に移設し鮮度維持

vegvalley 「365」の青果売場で特徴的なのがレイアウトである。約140坪の売場面積を、常温と冷蔵とでフロアを区切っており、従来と異なるつくりとなっている。
 冷蔵部分は「Veg Valley」と呼ばれ、温度帯だけでなく、壁を金属質状の素材で覆い湿度調整も行っている。本来は作業所であるバックヤードに設置されるべき蘇生庫を「Veg Valley」として店内に移設し、より高度な鮮度維持を実現しているのだ。出入口は2ヶ所で、外側からの見通しもよい。鮮度維持という機能的な面に加えて、バックヤードを売場に変換することでの効率性の向上と、もともとホールフーズが強みとして持っている演出力の強化を図る1石3鳥の仕掛けとして集客にも役立っている。このように固定概念にとらわれず、可能性があれば積極的に邁進する姿勢が付加価値を生み出すイノベーションの原動力と言える。
 また、常温コーナーの大部分は果物や土物をメインに、斜め掛けの平台を使った単品量販型の展開となっている。目的・用途を想定しながら、売場位置が設定されていた。さらに、商品特性に合わせて、商品パッケージ、什器の形・設置場所を検討し、値引きや廃棄などのロスの排除に徹底して努めている。例えば、1号店と3号店では、果物平台に枠を入れ陳列量を少なくするなど販売動向に基づいた売場の変更を行っている。売上ばかりではなく、商品管理にも目を向けながら、売場全体の付加価値向上への取り組みを進めている。

◆需要創造のヒント・店内レストラン

3店舗目の果物平台(after) 365とは別に、力を入れているのが店内レストランである。雰囲気はビールレストランに近く、バーカウンターにはいずれも20種類以上のドラフトビールが用意されている。これまではイートインや休憩スペースとしていた場所を改装し、60~80席のテーブル席が設けられている。前菜やトーストサンド、寿司、デザートのアラカルトメニューに加え、プレートやキッズのメニューも用意されている。アラカルトの価格は$10以下のものが中心で、外食よりもかなり安い。
 外食と比べた時の価格の割安感や生鮮素材を活かしたメニュー提供など、新たな集客装置として今後も取り組みが拡がっていくだろう。ハッピーアワーやスポーツデイなどイベントも定期的に行っており、手軽な飲食スペースとして利用できる。また、店内商品の購入者も利用でき、レストランでオーダーした飲み物にデリで購入した食べ物を合わせて利用するお客様も見られた。中の様子は気軽にうかがえるので、メニューを見て、利用しようと思う人も少なくないのではないか。採算性の問題はあるが、昼時の店内は多くの人で賑わっていた。
 これまでも生鮮売場の素材を使ったメニュー作りなど部門を超えた「横串し」の連携は行われてきたが、新たな動きとして店内レストランが注目を集めている。
 日本でも同様の動きがある。食品スーパーが外食や中食(惣菜)に力を入れているのは、新規顧客の取り込みや既存顧客の利用頻度の増大が大きな目的であるが、間接的には、外食での体験を通じたメニューの提案訴求ができている点も見逃せない。外食でおいしいと思えば、自分で作りたいと考えるお客様も現れ、素材や半加工での需要創造につながる。素材からのメニュー提案は(お客様の)経験が乏しいため、なかなか反応が得られない。
 急がば回れではないが、青果部門だけでなく、他部門の取り組みが青果物の需要喚起にもつながっているので、売場をくまなく巡り、食の動向を肌で感じながら新たなチャンスの芽をつかんでほしい。

≪今回のまとめ≫
アメリカの食マーケットの取り組み
(1)固定概念にとらわれない、可能性があれば何でも取り組む姿勢
(2)売上だけでなく、商品管理も付加価値向上につながる
(3)店内レストランを通じたメニュー提案は青果物の需要創造のヒント
(写真上から)1店舗目の果物平台(before)、vegvalley、3店舗目の果物平台(after)

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