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【提言】どう描く? 新たな農協像【横浜国立大学・大妻女子大学名誉教授 田代洋一】2018年9月21日

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・農林中金の奨励金引下げとJAビジネスモデルのチェンジ

 JAは自己改革に着実に取り組み組合員からの評価も高まっているが、組合員と地域の期待に応えるために厳しい金融・経済環境のなかで、どう新たな農協像を描き実現するかが問われている。1県1JAをはじめとした最近のJAのあり方を分析してきた田代洋一横浜国大名誉教授は信用事業の奨励金見直しをきっかけに各地で新たな農協像を検討することが求められていると問題提起する。

◆岐路に立つ総合農協

Yoichi Tashiro.jpg いまJAは中期三か年計画の策定の渦中にあるが、農中の奨励金引下げ等により単協単独での経営見通しが立たず、総合農協としてサバイバルしうるか否かの岐路にたっている。いかなる計画を立てるに当たっても、農協像やビジネスモデルに立ち戻った検討が必要ではないか。

(写真)田代洋一名誉教授

 

 

◆信用事業の代理店化の実相

 政府による農協「改革」押し付けの核心は、農協から信用事業をはく奪し、総合農協を解体し、企業に農村市場を開放するところにある。そこで、信用事業の譲渡・代理店化を飲まなければ、准組合員利用規制するぞという脅しをかけている。
 県信連等の代理店になった場合の単協の信用事業収益は、ある都市農協の例では、貸付金からの収益は9割減、預け金からの収益は3分の1減、大幅に減るはずの事業管理費は2割弱しか減らず、ネット収支は4分の1に激減する。
 政府は「活力創造プラン」で、「単位農協の経営が成り立つよう十分配慮する」(別紙2 農協・農業委員会等に関する改革の推進について)とし、改正金融監督指針もその点をチェックすることとしているが、政府の言いっぱなしになっており、厳しい検証が必要だ。

 

◆准組合員利用規制

 代理店化の実態が以上なら、選択する単協はない。そこで准組合員利用規制という伝家の宝刀をちらつかせるわけだが、仮に規制改革会議に従い、准組合員の信用事業利用を正組合員の50%に制限する場合、貯金額構成で正組35%、准組45%、員外20%の大都市圏の例だと、准組利用は17.5%に減る。それでは員外の方が多くなってしまうので、それも准組並みの制限を受けるとすれば、貯金額は30%減ることになる。 農協改革については(認定)農業者の評価も年々高まっている。自民・公明両党とも准組利用のあり方は組合員の判断に委ねるべきとした。問題の決着は安部総裁の任期満了時に重なるが、現政権に強行する力が残されているかは不明だ。
 しかし、規制改革推進会議の手前もあり、改正農協法附則で検討を決めた事項でもあり、農協陣営が少しでも油断し、「准組問題は都市農協の問題」と割り切ったら、たちまち分断される。准組合員利用規制が農協「改革」の最大の政治テーマであることを忘れず、団結すべきである。

 

◆農中の奨励金引下げの効果

 農中の奨励金利率の変更は、奥・農中理事長が朝日新聞等のインタビューで示した、「2019年度から4年かけて現行の0.6%程度から1~2ポイント下げ」ということだろう。仮に2ポイント下げとし、それがストレートに単協に反映するとすれば、次期3カ年計画が明けた頃には、奨励金収入は0.6%から0.45へ33%減ることになる。
 この数字は、先に准組利用を2分の1に制限された場合の都市農協の貯金の減少率と奇しくも一致する。つまり政府は、農中奨励金引下げにより、労せずして准組利用規制と同じ効果を手に入れられるわけである。農中が政権としめしあわせたわけではないだろうが、あまりのタイミングの「良さ」に驚かされる。
 准組利用規制は政策的恣意であり、反対の声をあげられるが、奨励金引下げはグローバル経済を背景とするJAグループの内部問題なだけに内向せざるを得ない。

 

◆高度成長期型JAビジネスモデルの矛盾

 奨励金利率の引き下げはこれまでのJAビジネスモデルを直撃する。
 高度成長期以降の農協は、准組合員と貯金量を増やし、貯貸率は落として県信連への貯預率(貯金に対する預け金の割合)を高め(最近では75.4%)、そこからの奨励金収入で経済事業・営農指導事業等の赤字を補てんしてきた。加えて金融自由化後は、金利の低下を貯金量の増大でカバーする広域合併により、同モデルを拡大深化させてきた。それらの結果、2015年度の経常利益=100とすれば、信用事業97、共済事業56、農業事業▲6、生活事業▲6、営農指導事業▲40である。
 しかし、このモデルは大きな矛盾を抱えている。
 第一に、信用・共済事業で准組合員利用依存を高めながら、その准組合員には議決権を与えていないという矛盾。それは法の定めるところとはいえ、協同組合としての経済民主主義に反する。
 第二に、貯金を増やしつつ、他方では正組合員の離脱による出資金減少を座視すれば、自己資本比率が確実に低下するという矛盾。
 第三に、加えて今次の奨励金利率の引き下げでモデルの根幹が崩れた。

 

◆矛盾への現実対応

 JAはこれらの矛盾にどう対応しようとしているか。
 第一は、奨励金利率の低下を貯金量の増大でカバーするために一層の広域合併をする「大きいことはいいことだ」路線。総合農協は残るが、従来の単協は自立性を失う。
 第二は、信用事業を譲渡し代理店になる、政府お勧めの脱総合農協路線。単協は残せるが、そもそも経営が成り立つのか。
 第三は、収益減をコスト削減でカバーするリストラ路線。端的には支店・施設の統廃合である。金融支店の統廃合は、メガバンクや地銀の動向を踏まえた将来の金融情勢への対応という面でも合理化される。広域合併時に、合併への賛成を取り付けるために先送りした課題でもある。
 これはいちばん手っ取り早い道だが、地域密着型業態としての農協の強み、組合員の地域的結集の拠点を失い、農協が「身近な金融機関」として生きる道を狭めかねず、有効な代替措置や説得が欠かせない。
 第四は、高度成長期型ビジネスモデルからの転換を図るモデルチェンジ路線。
 モデルチェンジ自体で経営収支を改善できるわけではないが、いずれの検討の根底にも理念とモデルのチェンジを置く必要がある。

 

◆准組合員を包摂したJAビジネスモデルへ

 准組合員の事業利用に依拠しつつ、議決権は与えないJAビジネスモデルは、准組比率が6割に迫る今日、もう通用しない。結論的には、4分の1を限度として准組合員に議決権を付与すべきである。議決は2分の1以上の出席による2分の1以上の賛成で成立する。そこで正組合員のイニシアティブを確保しつつ准組合員に道を開く限度は1/2×1/2=1/4となる。
 しかし法改正に至るまでの道筋は長く困難だとすれば、准組合員の実質的なJA運営への参加を促すことが現実的課題である。
 准組合員が実質的に発言権を持つようになれば、准組合員の利用からも得た収益を農業者のための経済事業や営農指導事業の補てんに利用することの説得が欠かせない。
 そのためには第一に、正組中心の経済事業の赤字を納得の得られる水準まで縮小することである。誰もが言うが実践は至難だ(次項)。
 第二に、営農指導事業の赤字を、食料自給率の向上、農業の多面的機能の強化、都市・中山間地域農業の持続性確保のための積極的投資として位置付け、准組合員のそれへの参加と貢献を正当に評価し、彼らの納得を得る。JA自己改革の目的も、農業者の所得増大ではなく、食料自給率の向上に置くべきである。
要するに「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」の実質化である。

 

◆縦横の連携強化

 経済事業の赤字縮小を単協単独で果たすことは乾いた雑巾を絞るように険しい。JA単独での中期三か年計画という枠を破る必要がある。高位平準化された品質のロットを拡大するには広域営農指導や集出荷施設の統合等が欠かせない。
 そのためには広域合併や1県1JA化も一つの選択肢ではあろう。しかし合併による規模の経済の効果も必ずしも確認できず、これまでの1県1JA化は、県域が狭く地域のまとまりがあるところ、破綻救済や中山間地域の「足元の明るいうち」合併に限定される(拙稿『農協改革と平成合併』筑波書房、2018年)。やるなら信用事業のためではなく産地の広域・深化をめざすべきだ。
 組織統合だけでなく、本紙でも報道された十勝農協連のような単協間連合や、全農(県本部)と単協(群)の協同による集出荷施設の建設・運営、1県1JAの地区本部間の施設共同設置・利用等の例もある。
 いずれにしてもJAの将来を決めるのは組合員であり、いかなる組織再編があろうと変わらないのは農家組合のまとまりである。そこへの情報公開を徹底し、ともにモデルチェンジを図るべきだろう。

 

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