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アグリビジネス業界ニュース

急旋回を迎えた国内農薬事業
流通との関係強化が今後の鍵
住友化学

 住友化学工業(株)は10月1日、同社の子会社である(株)アグロスの農薬関連事業をアグロ事業部に統合し、国内農薬事業の新体制をスタートさせた。国内原体メーカーの雄として歩んできた同社だが、「二重構造」の弊害を除去し、急旋回の様相を呈している。
 旧(株)アグロスの農業用農薬事業は、住友化学アグロ事業部が引き継ぎ、卸商等(約90卸)の流通パートナーへ農薬販売を行う。旧アグロスの全国5カ所の営業所(札幌、仙台、東京、大阪、九州)は、住友化学アグロ事業部の営業所に衣替えし、それぞれ同じ拠点で業務を継続する。
 また、国内の農薬開発及び普及業務を、新設の普及部に集約するとともに、新たに「お客様相談室」を普及部内に設置するなど、顧客に対して充実した各種サービスを展開していく。
 一方、アグロスは10月1日付けで、「(株)日本グリーンアンドガーデン」(略称:G&G)に商号変更し、非農耕地(ゴルフ場、家庭園芸、その他非農耕地全般)分野への農薬等の販売を担う住友化学グループの新生会社として業務を開始した。
 この非農耕地分野の事業についてはゴルフ場、家庭園芸において、アグロスは経験を積み重ねており、新会社の発足を機に、住友化学も既存剤の販売移管・新規剤の開発強化等により、同社の事業基盤を強化していく。
 さらに、アグロスの子会社である西部化成(株)については10月1日付けで住友化学がアグロスの所有する全株式を引き受けて子会社(住友化学90%出資)とし、住友化学グループの農薬製剤を担当する会社として育成を図っていく。


高崎利一氏
高崎利一
住友化学工業(株)
アグロ事業部長
 【解説】
 住友化学がアグロスをアグロ事業部に統合した背景には、国内農薬需要の減少の中「生き残りを賭け、これから国内農薬事業をどう展開していくのかの見知」(高崎利一アグロ事業部長)が有る。
 「住友化学は、これまで原体メーカーに止まっており、末端のニーズを掴みきっていなかった」(同)の反省から、アグロ事業の軸足としてアグロスを取り込むことで、産地や農家により近いところで事業展開を図っていこうとしたもの。統合により、原体メーカーと製剤メーカーの「二重構造の弊害を除去」し、一体化路線で行く。
 一方、ゴルフ場及び家庭園芸を担う新会社「(株)日本グリーンアンドガーデン」は、アグロスを母体とした非農耕地分野の農薬販売会社。アグロスはこの分野でも蓄積したノウハウを所有しており、住友が全面的にサポートしていく。将来的には、一方の関連会社である保土谷アグロスとの連携、さらにこの分野の有力会社との提携及び合弁の可能性ありと筆者は見る。
 2003年10月の三井化学との統合を控えている住友化学は、業界再編という大きな枠組みの中でその渦中にある。アグロスの取り込みは、同社農薬事業の急旋回の様相を見せるが、流通パートナーとこれまで以上に関係強化できるかが鍵となる。



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