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アグリビジネス業界ニュース

『BMようりん』小袋の怪!?
製造元を偽り、しかもマンガン・ホウ素が保証成分以下


BMようりん

 「ようりん」、「BMようりん」などの製造を手掛けている日之出化学工業(株)(齊藤正人社長)が困惑している。自社の名前が記載されているが、同社の製造品でなく、しかも保証成分が不足している小袋入りの「BMようりん」が、ホームセンター等で広く販売されているという。事実関係を探ってみた。

 昨年9月、日之出の営業担当者が見慣れない800グラム小袋入りの「BMようりん」を園芸店にて入手した。小袋には製造元「日之出化学」、販売元「大阪レインボー販売」の記載があり、不審に思った同担当者が持ち帰り実態調査を実施したところ、同社は大阪レインボー販売への販売実績がなく、また、小袋へ袋詰めした事実もないことを確認。このため同社は、大阪レインボー販売が間接的、または、他社の「BMようりん」を購入し、リパック後に販売したと断定した。

 これと平行し、同社では問題の製品の分析調査を進めた。その結果は、表1・2の通り「く溶性マンガン」、「く溶性ホウ素」が保証成分量に満たないため「BMようりん」ではないがこと判明、同時に「く溶性苦土」が同社製造の「ようりん」の保証成分量にも満たないため、問題の製品は明らかに同社にて製造されたものではないことがわかった。

大阪レインボー販売とはどのような会社なのか。正式には「大阪レインボー販売(株)」。昭和49年設立の園芸・農業用の肥料・資材、薬品の卸売業者。資本金1500万円。本社は東大阪市小阪本町。近年はホームセンターに新規販路を築き、平成10年2月期には年商14億8300万円を上げるも、販売先が多数に上ることから経費負担が重く、収益状況は低調だった。

その「大阪レインボー販売(株)」は昨年の6月14日、大阪地裁へ民事再生手続きの開始を申し立て、翌15日財産保全命令を受ける。負債総額は、10億3500万円に上っている。

 これらの背景下、日之出化学工業(株)は昨年11月19日付けで「大阪レインボー販売(株)」に対して内容証明郵便にて製造中止や流通在庫の回収等を要求する通告書を提出している。しかし、その後の調査で、同社は既に破産宣告を受け倒産してしまっていることが判明、通告書に対する回答も有耶無耶のままだ。

 筆者の手元に園芸店で売られていたものと同様の「BMようりん」がある。販売業者保証票を見ると生産社名が「日之出化学工業(株)」(京都府舞鶴市)、販売業者名「大阪レインボー販売(株)三重配送センター」(三重県上野市)となっている。もちろん、「保証成分量(%)」は日之出化学工業(株)製と全く変わらない表示だ。製造元を偽り、しかも保証成分に満たないものを公然と販売する今回のケースは、かなり悪質な犯罪行為といえる。

 日之出化学工業(株)にとっては、PL法(製造物責任)の問題に抵触すること、また企業の開発マインドにも影響を及ぼすことからゆゆしき問題だ。同社では刑事告訴も検討したが、相手が倒産してしまっている以上、それも難しい状況だ。企業のモラルが大きく問われる場面であり、消費者(使用者)には信頼のおけるメーカー品の使用を推奨したいが、「本当の製品」かどうか判断することもなかなか難しくなってきた。

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