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アグリビジネス業界ニュース

銅剤など日本農薬に譲渡
島田工場は12月をメドに閉鎖
― シンジェンタ ―


 シンジェンタの日本における100%子会社(株)トモノアグリカ(デニス・ターディ社長、本社:静岡市)は8月9日、自社製品の一部を今年10月1日付けで日本農薬(株)(大内脩吉社長、本社:東京都中央区)に譲渡、また島田工場を今年12月末までに閉鎖すると発表した。
 今回の決定は、生産拠点の合理化及び中核製品へ注力するというシンジェンタのグローバル戦略の一環として行われたもの。日本農薬(株)に譲渡される製品は主に銅剤製品などで、従来から(株)トモノアグリカの取扱い製品だった。
 銅剤製品の主要な供給元のひとつである日本農薬(株)にとって、これらは自社の製品ポートフォリオを補完する意味がある。また、日本農薬(株)と(株)トモノアグリカは長年にわたり、共にシンジェンタ製品を取り扱ってきた経験があり、こうした総合的な背景から製品の譲渡先として決定に至った。
 さらに(株)トモノアグリカは、島田工場で現在予定している全ての生産を完了した時点で、年内に活動を終了するが、事実上の閉鎖は2003年になる模様。同社社員には、再就職の斡旋、あるいは特別退職スキームの適用が行われる模様。
 【解説】
 シンジェンタは、不採算製品の整理を実施している。これを受けシンジェンタ ジャパン(株)でも、(株)トモノアグリカの約70製品(約43億円相当)をフェーズアウトあるいは売却し、製品ポートフォリオの絞り込みを進めており、今回の動きもこの戦略に沿ったもの。
 (株)トモノアグリカの売上高は約20億円(2002年末推定)。主力製品は、殺ダニ剤として使用されるマシン油や果樹野菜用殺菌剤に使用される銅剤などで、古くから普及展開されているロングラン製品。一部報道に、「マシン油も日本農薬(株)への譲渡が有力」とあるが、同社は「特製スケルシンを有しており、その可能性は低い」(業界通)との声もあり、秒読みで関係各社との細部にわたる調整が行われているものとみられる。
 (株)トモノアグリカは、1912年(大正元年)に設立された伴野商店にはじまり、今年は創立90周年にあたる。みかん、お茶の大産地・静岡での地域に密着した技術・普及力は業界でも屈指のものだ。現在の社員数は約60名で、一部は日本農薬(株)へ移管する。また一部をシンジェンタ ジャパン(株)が受け入れるが、「将来、地域に密着したトモノの精神が生かされることになるのか疑問。あの優秀なトモノの社員は、培ってきた精神を貫き通し幸福になれるのか」、との業界の声もある。ここに、市場拡大のために日本企業を傘下に収めてきた外資系企業の責任が改めて問われることになるのではないだろうか。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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