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検証・時の話題

JAグループ 10月中に政策提案決定
計画生産を基本に構造改革を

◆JAグループの米改革具体案

 JAグループは10月初めに米政策改革に向けた具体策を決定した。今後、組織討議を行い今月中には政策提案としてまとめ、政府の生産調整研究会や与党での改革議論に反映させていく。
 具体策の柱は、(1)計画生産を基本にすること、(2)地域の特色を生かした転作への助成、(3)生産面積による管理を基本に過剰米対策を含めた生産調整の仕組みをつくり上げること、(4)生産者全員の拠出による過剰米対策など公平性を確保すること、(5)県間流通銘柄の主体的な需給調整、販売を起点にしたJAグループの米事業の改革、などである。
 生産現場をふまえた改革とするためにはJAグループの考えが十分に反映される必要があるが、一方でJAグループの自らの改革も求められる。具体策のポイントをまとめてみた。

◆生産面積は国が配分
  取り組みは実施者集団で

 米政策の改革にあたってJAグループが求めてきたのは国の役割と責任の明確化だ。今回の提案ではJAグループの米事業改革など自らの取り組み課題を打ち出し、そのうえで国の役割、責任を求めている。
 生産調整については、今年1月からの政府の生産調整研究会の議論では選択制や廃止という意見までが出た。しかし、JAグループの基本的な考え方は、水田農業の構造改革を実現するにはあくまで「適切な計画生産の実施」が必要だというものである。
 計画生産により全体需給を確保し価格の安定を図る。かりに計画的な生産がなされなければ価格は下落し、担い手の育成や農地の確保など水田農業の構造改革はかえって進まないとの考え方に立つ。
 そのうえで、計画生産は、これまでの生産調整とは異なり、生産面積配分(ポジ配分)に基づいて行うが、全体の需給計画と県別生産面積(数量)は、第三者機関で需要動向などをふまえ検討はするものの、国が責任をもって策定し配分と調整をすることと主張している。
 そして、その計画生産の実施には、JAが中心となって集落などを単位とした「生産調整実施者集団」を組織し取り組むことを提案した。
 実施者集団は集落など農地の面的なまとまりをもとに形成するもので、現行の生産調整推進上の地区は見直す。
 現在では、生産者調整未実施がこの「地区」に一部でもあれば、未達成となる。JAグループの提案では、未実施者の実施者集団への取り込み推進を大前提とし、それでも生産調整に取り組まない生産者がいる場合は、その生産面積を除外した限度枠を実施者集団に配分し集団で達成する。この方式によって現行方式での強制感を排除することができるとしている。

◆過剰米処理も達成要件に
  メリット対策で参加を促す

 一方、生産調整への参加を促すために、メリット対策は実施者集団に対して助成金を一括して交付する仕組みを提案した。未実施者にはメリットを提示して参加を働きかける。参加しなければメリットが受けられない仕組みを想定している。
 ただ、提案では飯米農家には生産面積限度枠の配分は行わず、その分の生産調整を集団で実施するなど、地域ごとに判断することを提唱した。
 また、生産調整の達成要件は、過剰米処理をも含めた以下の3つとした。(1)生産面積限度枠での稲の作付け、(2)限度枠に応じた過剰米対策への資金拠出、(3)豊作となった場合の過剰米の処理、である。この3つの要件を達成した場合に、水田農業地域取り組み助成などメリット対策が受けられることになる。(図1)

図1 生産調整達成の3つの要件

◆経営安定対策とメリット対策のリンクを

 生産調整の実施者へのメリット対策の内容は、(1)水田農業地域取り組み助成、(2)豊作分の過剰米対策への支援、(3)当面の経営安定対策、(4)県間流通銘柄対策、である。
 このうち当面の経営安定対策は、その対象を代表販売や収支などを一本化した集落営農や面的なまとまりをもった担い手生産者など地域で「新たな担い手」と位置づけられたものとしている。
 その対象者に対して収入の減少があった場合に一定割合の補てん金を交付する仕組みを導入すべきだとしている。
 生産調整研究会でも、担い手育成のために経営所得安定対策の構築の必要性は指摘されているが、生産者調整への参加とは切り離すべきだとの意見もある。JAグループとしては、同対策が生産調整のメリット対策として位置づけられなければ、計画生産や構造改革が進まないとの立場で提言している。今後の論議の焦点のひとつだ。
 また、水田農業地域取り組み助成は、地域の特性に合わせて、地域で助成メニューを選択できるようにすべきだと提案している。
 麦・大豆・飼料作物の本作化や地域の戦略的な作物の生産振興、景観形成作物、学童農園などの取り組みを、地域で策定し、「転作面積に基づく交付」を行うというものである。転作面積は、実質水田面積から生産面積の限度枠を引いた面積として毎年確定する。(図2)

図2

◆MA米の需要を取り返す
過剰米対策の確立を

 豊作により生産数量ガイドラインを超えた過剰米は処理することを生産調整の達成要件としたが、その過剰米対策は、生産者の拠出と国の助成で「過剰米対策基金」を創設し、過剰米が発生した場合には、生産者への別途仮渡金の原資として、基金からJAに融資を行うなどの仕組みをつくるべきだとしている。
 融資に対しては、過剰米の現物を新たに設置する「加工用等備蓄機構」に返済する。(図3)
 備蓄機構は、加工原料用需要約50万トンへの安定的な供給をめざすもので、同需要の26%を占める政府のミニマム・アクセス米の代替供給などとして実需者に販売する。いわば現在のMA米需要を国産米で奪い返すという狙いもある。また、需給状況によって主食用に販売できた場合には追加精算することにしている。
 また、JAグループとして県間流通銘柄の主体的な需給調整に取り組み、それに対するメリット対策を現行の稲作経営安定対策を見直すことで措置することも提案している。
 具体的には県間流通銘柄のある県が協議会に参加し、流通計画を策定する。その際、その銘柄の共計からの拠出と政府助成による基金を創設し、販売調整対策にともなう金利・倉敷への助成や、価格低下に対する影響緩和策を実施するというものである。

図3 過剰米対策のイメージ

◆JAグループの米事業
「JA米」で競争力強化

 今回の提案は、米の生産調整方式などの改革に向けたものだが、基本は「売れる米づくり」への転換と水田農業の構造改革をにらんだものだ。
 そのため生産面積のガイドライン策定に際しても、需要増減の見込みや実需者による産地評価、前年産の在庫量などをもとに県別に示すことを提起している。
 在庫があれば翌年の生産量は減少することもあり得るが、逆に作付け品種の見直しや新たな栽培法への取り組みなどで新たな稲作生産へと転換することも考えられる。たとえば、外食産業など業務用需要の増加に対応した生産も求められるだろう。
 計画生産の実施は、全体需給の確保と同時に、量だけでなく質も視野に入れた生産計画が必要になるといえる。
 今回の提案では、トレーサビリティの確保された米などをJA米としてJAグループが扱い消費者の安心・安全の要求に応えることで、地域農業の発展と競争力の強化を図るといった米事業改革案も示している。
 水田農業の将来像を描き米の計画生産に取り組むにはJAの役割が大きい。米政策の改革は国の役割と責任を明確にすると同時に生産者、JAへの十分な支援が確保されるよう議論されなければならない。




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