農業協同組合新聞 JACOM
 
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検証・時の話題

検証・焦点 卸売市場を考える-10
実需者・消費者起点の改革で活性化を

国際シンポジウム「日・韓・台の比較から
卸売市場流通の将来を考える」から


満員の会場から活発な意見も ――パネルディスカッションから

 日本の卸売市場システムから常に多くを学んでいる韓国と台湾から、逆にその優れた点を日本が学び取り、今後の卸売市場のあり方を考える参考にするための国際シンポジウム「日・韓・台の比較から卸売市場流通の将来を考える」(主催:全国中央市場青果卸売協会・卸売市場研究会・農協協会)が9月25日、東京・日本橋公会堂で開催され、卸売市場関係者、生産団体関係者ら120名が参加。満員の会場も加わり活発な意見交換が行われた。
 シンポジウムでの韓国・台湾の報告から、今後の日本における卸売市場のあり方を考えるうえで参考にすべき点を藤島廣二東京農大教授にまとめていただくとともに、当日のパネルディスカッションにおける問題提起・意見の概要を紹介する。

◆日・韓・台から基調報告

シンポジウム会場

 シンポジウムは、まず、梶井功・東京農工大名誉教授がこのシンポジウムの意義について講演した後、原田康・前(社)農協流通研究所理事長の司会で、王良源・台湾・東海大助教授が台湾の(卸売市場を考える(9)参照)、王成宇・韓国・天安外国大教授・韓国市場流通研究院長が韓国の、卸売市場の特徴と問題点(卸売市場を考える(8)参照)を報告。藤島廣二・東京農大教授が日・韓・台の卸売市場の比較と日本の卸売市場流通の近年の動向と今後の展開方向を報告(近日掲載予定)。その後、パネルディスカッションを行った。

◆消費者の求めるSQPに応えること

梶井功・東京農工大名誉教授
梶井功
東京農工大名誉教授

 パネルディスカッションでは、(株)東急ストアあざみ野店の神木良和店長が「卸売市場には、全国から一番いい商品が集まってくる」ので「スーパーの仕入れで市場が6割を切ることはない」としたうえで市場に望むのは、消費者の求める「SQP」(安全性・品質<鮮度>・価格)に応えることと、生産者にとって「売り先の分かる流通」をすることによって「自分の市場から買ったらこんなにいいことがあるよとアピール」できるようになることだと、小売業の立場から問題提起した。

◆集荷中心から販売第一に

原田康・前(社)農協流通研究所理事長
原田康・前(社)農協流通研究所理事長

 次いで、仲卸の立場から(株)石竹板橋の須田政宏専務が、ハード面では市場は「チルド対策」、衛生教育が遅れていることから、「設備・技能・衛生管理の徹底」が必要だということと、駐車場など含めた活性化につながるスペース対策が必要と指摘。さらにソフト面から市場を活性化するためには、集荷対策を主体とする方向から、販売を第一に考え、実需者・消費者主導型の方向に変えること。消費拡大対策として青果物の良さを徹底的にPRすることの重要性を強調した。

◆外食・量販店の用途別ニーズに対応すること

王良源・台湾・東海大助教授
王良源
台湾・東海大助教授

 針替茂人・東京シティ青果(株)副社長は、卸売会社の立場から、現在の市場利用は外食・中食が55%、小売が45%。小売の7割は量販店や生協が占めている。そうしたなかで、市場は量的なバランスはとれているが、外食や量販店は用途別ニーズが強くなっており、それへの対応が国内産地も含めて遅れており、それが卸売市場批判の最大の要因になっている。産地も含めて、そこをどうクリアし、実需者・消費者起点にするかに同社では取り組んでいると語った。

◆物流改善と鮮度・衛生管理の徹底を

王成宇・韓国・天安外国大教授
王成宇
韓国・天安外国大教授

 市場流通、市場外流通の両方の経験をもつ森口俊・(株)全農青果サービス社長は、神木氏は「6割は市場から」というが、次の2点が改善されない限り市場は見捨てられると問題提起した。1つは物流問題で、トラックやパレットなど個別問題として解決をはかるのではなく、物流をシステムとしてとらえ、「集荷・販売・商談・受け渡しなどすべての情報と連動してこそ物流のコストダウンができる。その視点が市場には欠けている」。さらに「市場内の動線が輻輳し非効率的になっている」点も改善が必要だと指摘した。
 もう1点は、産地も小売も鮮度管理に腐心しているのに「市場には鮮度保持という感覚がほとんどない」こと。「直接、口に入る食材を扱っているのに、衛生教育がなされていない」と、鮮度管理・衛生管理の徹底が必要と指摘した。

◆予約相対、産地ブランド育成に力を入れる

藤島廣二東京農大教授
藤島廣二東京農大教授

 欧州の多くの市場を視察している矢部正行・(社)農協流通研究所常務は、その経験から、今後の卸売市場のあり方として、(1)予約相対のパイプを太くすること、(2)地域の特性を活かした産地ブランドを育てること、(3)生鮮サプライチェーンなど卸売流通における物流のシステム化の構築を進めていくことが必要だと問題提起した。

 会場からは、鮮度管理や市場の低温化、あるいはトレーサビリティについてコストは誰が負担するのか。価格に反映したときに消費者はどう受け止めるのかなど、コールドチェーンの必要性、物流コスト削減との折り合いをどうつけていくのかなどの意見・質問がだされ、パネリストとの意見交換が活発になされた。
 最後に藤島教授が「高齢化社会によって業務用需要・加工用需要が増え、生鮮需要がいま以上に減っていく。そのなかで市場がどういう対策をとっていくのかがこれからの課題だ」と指摘して、シンポジウムは閉会した。
シンポジウム・パネリスト

(2003.10.16)


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