農業協同組合新聞 JACOM
   

検証・時の話題

16年度畜産・酪農対策決まる!
畜産環境対策で300億円確保
加工原料乳 限度数量は現行維持の210万トン

 16年度の畜産酪農対策が3月18日に決まった。
 JAグループは畜産物価格や関連対策の決定に向けて11日の全国代表者集会から運動を展開し、ふん尿処理対策予算額の拡充や牛せき柱規制にともなう産地食肉センター支援策、現行を基本とした加工原料乳の限度数量、畜産物価格の決定などを重点的に求めてきた。
 決定した対策では、畜産環境対策で大幅に予算額を増額、限度数量も現行維持とするなどJAグループの要求を反映した内容となった。今回の対策の概要を紹介する。

◆将来展望を持てる新たな政策も課題

 3月11日の「16年度畜産・酪農対策全国代表者集会」の主催者あいさつで宮田勇JA全中会長は、米国でのBSE発生やアジアでの鳥インフルエンザ発生などで、国内での安全・安心な畜産物の提供がより必要になっていると指摘し「生産者が将来を展望することができる中・長期的視点に立った新たな畜産酪農基本対策が重要」と訴え、16年度対策としては「家畜排せつ物処理など畜産環境対策の充実・強化」などをあげ、「努力した生産者が報われる所得と経営安定が確保できる対策の確立を」と強調した。
 集会では情勢報告に続き吉岡亀太郎畜産・酪農対策本部畜産委員長が出席した与党国会議員に代表要請した。
 新たな基本政策の確立と畜産環境対策の充実のほか▽粗飼料生産とふん尿のたい肥還元のための耕畜連携対策の継続・強化、▽BSE対策として新たに規制された牛のせき柱処理コスト対策の確保と食肉センター対策の充実、▽肉用子牛生産者補給金の保証基準価格など、現行を基本にした決定、▽地域肉豚生産安定基金造成事業の継続を求めた。
 酪農対策では▽加工原料乳生産者補給金単価の現行を基本にした決定と限度数量の適切な決定、▽脱脂粉乳の過剰在庫に対応した生乳の総合的な需給安定対策の確立、を求めた。

◆生産意欲の維持に配慮

 対策は自民党畜産・酪農対策小委員会の議論を経て18日、同党農林部会・総合農政調査会合同会議で了承された。また、同日開催された食料・農業・農村政策審議会畜産物価格等部会で議論し、政府案の諮問どおり答申された。
 酪農で焦点となったのは加工原料乳の限度数量。脱脂粉乳の15年度末の在庫は過去最高の10万トンとなっており放置すれば12万トンになるとされている。
 一方で、限度数量の設定は、生産者の意欲をそぐことがないよう留意することも課題だった。
 このため、決定にあたっては2万トンの脱脂粉乳の在庫処理を生産者団体の消費拡大など自主的な取り組みを前提とすることで、現行の210万トンとすることとされた。酪農生産の維持、拡大の基盤確保つながる決定となった。
 また、生産者補給金単価は決められた算定方式により、15年度より22銭引き下げられ、1kg10.52円とされた。

<乳用種で基準価格下げる>
 指定食肉の安定価格は据置で、牛肉の安定上位価格は1kg1010円、安定基準価格は1kg780円。豚肉では同1kg480円、同1kg365円のままとなった。
 また、肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格と合理化目標価格では、乳用種の保証基準価格を2000円引き下げ、1頭12万9000円としたほかは、いずれの畜種も据え置かれた。

◆リース枠大幅に増やす

 関連対策としてJAグループがもっとも重視していたのが畜産環境対策の強化だ。
 11月からの家畜排せつ物処理法の完全施行を控えて施設整備が課題となっている。そのため、JA全中と全農、農水省で昨年3月に「畜産環境整備促進特別プロジェクト」を設置し、整備状況の点検を行ったうえで、整備計画を策定した。それによると、15年度5800戸、16年度7800戸と合わせて1万3600戸の施設整備が必要とされている。
 JAグループではこれを実現するには、ふん尿処理施設整備のための、補助付き(2分の1)リース事業に十分な予算確保が必要だとしていた。
 その結果、15年度のリース枠210億円を16年度は301億円に拡大、その他の対策と合わせて約307億円の畜産環境対策予算を確保した。
 また、BSE対策では、新たにせき柱処理が食肉センターに求められることから、▽産地食肉センターなどの施設整備と経営体質強化、▽牛せき柱の分別と牛骨などの有効活用の促進に約50億円を確保する。

◆地域肉豚事業は継続

 15年度が最終年度となっていた地域肉豚生産安定基金事業は、16年度以降の継続が決まった。
 同事業は、生産者積み立て金による価格差補てん事業をバックアップするためのもので、生産者積み立て金が不足した場合に資金を供給する。その基準となる安定基金発動基準価格はこれまでどおり1kg400円とされ、約64億円が確保された。
 肉用牛経営対策では▽新規参入者に対するリース畜舎整備など肉用牛生産の取り組み支援(新規事業)、▽肥育経営安定対策(マル緊事業)と子牛生産拡大奨励事業の継続で約123億円。
 酪農では、生乳・乳製品の需給安定対策として▽液状乳製品(脱脂濃縮乳)対策とチーズ対策の継続、▽新規事業として夏場の需要期の増産への支援などで157億円のほか、土地利用型酪農推進事業では、交付額や支払い方法などを見直すものの継続し、その他の自給飼料生産対策も合わせて約123億円確保することとされた。
 そのほかの関連対策では▽乳用牛対策(優良後継牛の確保と改良集団への支援の継続、約19億円)、▽負債対策(約20億円)、▽BSE関連対策(死亡牛のBSE検査と適切な処理の推進、肉骨粉の焼却処理、経営再建支援策の継続、約173億円)などが決まった。
関連対策予算は総額で約1200億円の見込み。

加工原料乳生産者補給金単価及び限度数量
指定食肉の安定価格(単位:円/kg)
指定肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格(単位:円/頭)
(2004.3.22)

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