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若い女性の朝食市場最前線−
  朝ごはん買って会社に行き、朝ごはん買って家に帰る
    
(「朝ごはん実行委員会ニュースレター」NO3、
      セゾン総合研究所・斎藤薫主任研究員のレポートから・要旨)
(11/13)


 若い女性の朝ごはん事情に新しい動きが見え始めた。OLの間で広がるテイクアウトモーニングや、仕事帰りに調達する翌日の朝食用のマーケットの動きだ。ニュースタイルのおにぎりショップや駅構内のコンビニが新たな朝食ステーションになりつつあるなど新たなチャネルも登場、モバイル食品や「grab−and−go」(掴んで持って行く)スタイルの食品が充実しつつある中で、お米を食べる新しい朝食スタイルが動きだしている。

★古くて新しいモバイル食のすぐれもの「おにぎり」(ニュースタイルおにぎりショップ)

 お米を使った携帯食の代表にコンビニのおにぎりがある。仕事しながら、髪を整えながら片手で食べられる「モバイル食品」は、忙しい現代人には欠かせない食品になりつつある。こうしたハンドリングの良さに加えて、お腹にたまるという実質的価値を求める若者によっておにぎりが見直される中、最近、OLの間で新しいタイプのおにぎり専門店が人気を集めている。
 東京の日比谷・新橋間のビジネス街にある「おにぎり権兵衛」は、山形庄内産有機米、有明海産海苔、天日干し天然塩、アルカリイオン水、具は産地や専門店から直送と、徹底的に材料を吟味し、手づくりにこだわった専門店。1個120〜150円とコンビニに比べやや高めだが、5月のオープン以来順調に売り上げを伸ばしている。
 朝は出勤前におにぎりを買って会社に向かうOLを中心に8時過ぎからにぎわい始め、9時直前にピークを迎える。古代米など個性的な商品も扱い、既製のおにぎりでは満足できないこだわり派の女性を中心にファンを増やしている。

 一方、「ライスブレイク」新橋店は、おしゃれな雰囲気と新感覚の楽しさを提供する新しいタイプのおにぎり専門店。一見、ケーキ屋さんかブティックのような雰囲気で、朝は女性利用者が6割を占める。
 品揃えは、梅・鮭など伝統的な具はもちろん、旬の松茸や菊の花からボンゴやバジルなどパスタの具までおにぎりにするユニークさ。銀座店は現在、ランチ対応だけだが、今後、朝の時間帯での販売も十分考えられそうだ。

★ターミナル駅は若い女性の朝食ステーション

 都会のOLの朝ごはん事情を変えつつある要因の一つに「駅の変化」がある。構内のコンビニは、その集客力と利便性で急速に店舗数を拡大しているが、女性客という新たな客層も開拓した。従来型キオスクとコンビニの違いは、自分のペースで商品を選べる点、さらにストッキングなど売店では買いにくいような商品も求めやすい点。こうして出勤途中、駅のコンビニに立ち寄ったOLはストッキングのついでにおやつを買い、翌日は朝食用の食品というように習慣化していくようだ。
 例えば、東京・市ヶ谷駅の「JC」では、8時台から9時を過ぎてもレジ待ちの行列が絶えず、幅広い客層の中でおにぎり・パン・飲み物を手にした出勤前のOLの姿が多く見られる。

 東武百貨店池袋店では9月末から夜9時まで営業時間を延長、同時に夜7時からの「翌朝おまかせメニュー」の売場を始めた。現在はパン関連メニューだけだが、ターミナル型百貨店が朝食マーケットに参入したという点で、今後の動向が注目される。これまでも、仕事帰りに買う朝ごはん向け商品へのニーズは、シングル女性や有職主婦を中心にあった。実質的にそれに応えてきたのはコンビニだが、ダイエー碑文谷店なども、そんなニーズに応え、10月の新米期に朝食レシピを用意するなど、提案型の売場作りを行った。
 今後、立地的に有利なターミナルの店舗や時間延長・夜間営業を進める百貨店・量販店・専門店などが、こうした翌朝朝食マーケットを創出し、魅力的な商品やサービスを提供していけば、「朝ごはんを買って家に帰ろう」というスタイルが広がる可能性も大きい。

 こうした変化もさることながら、現在、朝ごはん商品の品揃えを強化しているコンビニの動向も要チェック。am/pmでは、来店客に配る小冊子を通じて朝ごはんの大切さやお米の効用をよびかけ、おかゆ、松茸御飯、五穀弁当など関連商品の充実を図ってきた。半蔵門店などオフィス街の店舗を中心にOLに支持され、朝食用に温めてもらって会社に持参する姿も多く見られる。これからの寒い季節、こうした温かい商品はさらに人気を集めそうである。  

★「grab−and−go!」掴んで持ってオフィスへダッシュ

 「サラダバッグ」は、惣菜業界大手ロック・フィールドの新業態だが、駅構内にある市ヶ谷店は朝の時間帯も女性を中心ににぎわっている。オフィスワーカー、特に女性の健康を支援するという店のコンセプトが十分に伝わってくるヘルシーかつ個性的な品揃えがOLや若いビジネスマンには魅力的に映るようだ。
 店内には野菜を中心に、食欲のない朝、忙しい朝を意識した商品が並んでおり、10時30分まで限定の「黒ゴマと雑穀お粥スープ」などが人気。さらに野菜と具材をクレープで巻いたラップサンドの中には「キンピラごはん・ラップ」もあり、お米がベジタブルな素材として提供されている。
 カウンターに座ってスープセットを食べる人、立ったまま野菜ジュースを飲む人、ラップサンドと飲み物を持ち帰る人など、そこには思い思いのスタイルの朝食シーンが見られる。始業時刻の9時に近づくほど、まさにアメリカでいうところの「grab−and−go」(掴んで持って行く)のノリで職場にダッシュしていく姿が増える。  

★おしゃれなカフェから定食屋まで
  若い女性でにぎわう店に「おいしいごはん」あり

 北青山のカフェ「ロータス」、東京のカフェの中でも多くの若者に支持される店として有名だが、シンプルでおしゃれな空間で、コーヒーやデザートとともに提供されているのは、塩昆布のチャーハンやサバの味噌煮など和のメニューである。いずれも彩りの美しい野菜を豊富に使い、おしゃれ感とヘルシーさを演出している。
 また、24時間、若い男女でにぎわっているのは、明るい雰囲気で人気の「大戸屋」。流行のファッションをまとった若い女の子たちが定食屋で焼き魚、ひじきごはん、肉じゃがなど昔ながらのおふくろの味を食べる姿は、すっかり日常の風景として定着した感がある。今や健康志向は世界的なトレンドであり、その流れのひとつに和食(ごはん食)の見直しがある。流行の先端でありながら、懐かしく安心する要素も併せ持つメニューとして若い女性に浸透する和食人気は、これからも続くことが予想される。



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