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「食」と「農」 距離の拡大を指摘 消費者への情報提供を
  ―12年度「農業白書」 (2/28)


 食料・農業・農村政策審議会(今村奈良臣会長)の第1回施策部会が2月28日に開かれ、農水省は平成12年度の農業白書(「食料・農業・農村の動向に関する年次報告」)の概要を示した。
 白書は、11年度と同じ「食料の安定供給の確保」、「農業の持続的な発展」、「農村の振興と農業の有する多面的機能の発揮」の3章立てとした。

 わが国の食料消費の現状として、家庭での調理や食事を、中食や外食で代替させるなど消費形態が大きく変化していることを指摘。生鮮食料品を素材のまま家庭で調理する機会が減った結果、消費者の食料に関する知識や農業への関心が低下するなど「食と農の距離が拡大」していると分析している。
 そのため、生産者と消費者との結びつきを強めるよう情報提供や農業体験などの取り組みを強化する必要があるとしている。
 食料自給率については、国民の食生活の多様化などから大きく低下している現状を紹介、また、12年度の世論調査では国民の半数以上が「食料自給率が低い」と認識していることにも触れ、「食料の安定供給を確保していくことは国の重要な責務」と新基本法に沿って国の役割を改めて明記している。
 そのうえで、備蓄や輸入には一定の限界があり「食料の安定供給の確保のためには国内農業生産の増大を図ることが基本」としている。
 また、WTO農業交渉については、「多様な農業の共存」を基本哲学とした日本提案を提出したことを紹介し、今後の交渉では「多面的機能フレンズ諸国との連携を強化するとともに、開発途上国の賛同を得つつねばり強い交渉が必要」としている。
 国内農業の現状については、「価格変動が大きい米等に依存した地域においては農業所得が低下」。一方、品目別の経営安定対策の導入が進展していることから、11年度の自主米価格は1割低下したものの、稲作経営安定対策で「農業者の実質手取り額は10年度と同水準」としている。
 そのうえで、現在、検討が始まった新たな農業経営所得安定対策にも言及し、育成すべき農業経営に対し、「農産物価格の変動に伴う農業収入または所得の変動を緩和するための仕組み等の確立を求める声があるなかで、国民の理解が得られることを基本に、地域の経営類型ごとの実態を十分踏まえつつ検討を行う」としている。
 また、農協組織については、「地域農業の中核となる担い手等のニーズに十分対応したサービスの提供に努めていくことが必要」と指摘している。
 施策部会では、部会長に甲斐諭九州大学教授を互選。白書をめぐる意見では「国民の関心を高めるには、点字や活字ポイントの大きな版も作成すべきだ」などの声があった。

 農水省は、12年度の白書は「21世紀最初、また、新基本法施行の実質初年度の白書でもある」と節目となるとの考えから、巻頭には過去40年程度のわが国の農業、農村の変化や政策の沿革などを記述し、「なぜ、新基本法が制定されたのか」を広く理解してもらえるよう編集するという。また、判型も従来のA5判からA4判に変える。
 3月中に本審議会で審議し、4月上旬に閣議決定される予定だ。



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