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JA全中が経営所得安定対策で検討資料をまとめる(4/5)

 農水省が検討している新たな農業経営所得安定対策について、JA全中は、現行の品目別対策を強化する内容にすべきだという「基本的考え方」を5日の理事会でまとめた。穀物や青果や畜産など品目ごとに経営安定対策や価格安定制度があるが、それにもかかわらず値下がりがひどく、担い手たちの意欲が低下している現実を踏まえた。全中は「考え方」を検討資料案として全国各ブロック別に研究会などを開き、6月中旬に課題と意見を集約し、これをもとに組織討議を進めて、9月ごろまでに農水省に政策提言をする予定。
 農産物の値下がりなどで農業所得は低く、品目ごとの対策では経営安定が見込めない、として自民党は昨年、欧米各国の所得政策もにらんで経営所得安定対策の導入を打ち出した。
 これを受けて農水省は夏ごろに「経営政策大綱」として方向を示し、JAグループも政策提言をする。
 全中の「考え方」は、値下がりの打撃を緩和するなどのため現行の品目対策を見直す必要があるとした。
 そして、これを補完し、強化するか、または、その役割と機能に代わるものとして、所得安定対策の仕組みを検討すべきであると提起した。
 新たな対策は、意欲ある担い手に助成金を出して、他産業従事者との所得格差を補てんする。自民党農業基本政策小委員会の議論などでは当初その対象を「規模拡大、生産性向上などの経営改善努力を行う」「意欲ある担い手」とし、ざっと40万戸を想定した。
 しかし全中の「考え方」は「多様な」担い手の所得安定を強調し、対象の裾野をもっと「多様」に広げることを課題に挙げた。
 認定農業者は約14万4000人だが、農業所得が50%以上ある主業農家(65歳未満の専従者がいる経営)は50万戸ある。「この数字も対象を考える際の一つの切り口となるだろう」(今尾和実JA全中常務)。
 品目対策のうち稲作経営安定対策の場合は、契約生産者が127万7000人(12年産米)もいる。「こうした実情を踏まえれば、対象を絞り込むのは非常に困難」(同)とされる。  さらに、稲作の単一経営では主業農家がわずか7.3%だ。副業農家が約6割もあり、準主業農家が約3割だ。これに比べ酪農では9割近くが主業で、養豚では8割以上、施設園芸では7割以上がとなって専業化が進んでいる。
 このため品目対策をベースにした経営所得安定対策の検討では、その焦点が稲作となる。
 一方、具体的な対策の仕組みでは、価格変動の影響を緩和する仕組みとして、収入に着目するか、所得に着目するか、保険的制度か直接支払いかなど、より効果的な仕組みを構築する観点からの検討が必要であるとした。
 収入を対象にした場合、コスト削減などの生産性向上分を経営内に留保できる仕組みとなるが、現行品目対策との機能面での整理が課題となるという。
 所得が対象の場合、費用の客観的な指標のとらえ方の手法や、個々の経営努力の格差をどう評価するかが課題とした。
 またWTO農業交渉に向けては「緑」または「青」の政策となるようにすることが必要であるとした。


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