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諫早湾の水門開放、来春以降に   農水省(4/17)

 農水省の有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会は、4月17日、第4回の会合を開き今後の本格調査について議論した。
 焦点となっているのは、原因究明のため諫早湾干拓地の排水門を開放して調査するかどうかだが、この日の議論で「現状把握のためには、排水門を閉めた現状のままで少なくとも四季を通じた1年間の調査が必要」(清水誠委員長)と提言した。谷津農相は、この日のあいさつで「委員会のとりまとめを最大限尊重し、原因究明とノリ不作対策に努力する」と語り、農水省としても、1年間は排水門を閉めたままで調査を行う方針だ。
 現状のままでの調査が終了した後に水門開放調査を行うかどうかについては、「一年後に必ずしも開けることにはならない。そのときの状況による」(清水委員長)とした。ただし、木下農村振興局長は、委員会のなかで発言を求め「閉門調査終了後、すみやかに開門調査できるよう検討する」と述べた。

 また、農水省は、委員会に排水門を開門方法についての検討結果を報告した。これは前回の委員会で開門調査にあたっては、防災面などへの影響評価と対策を十分に施すべきとの提言を受けて行ったもの。農水省は、できるだけ早期に調査に着手するためには、諫早地域の洪水期、かんがい期となる6月中旬から10月上旬をのぞく、「短期間」での開門調査を提案した。一方、できるだけ大量の海水を出入りさせる中期調査は、既設の堤防や樋門の修繕、背後地の排水ポンプの設置、農業用水の塩害対策など、対策実施に数年の期間と相当の予算を必要とすることから困難だと主張した。  この案に対しては委員からは「この提案は両極端の案。前回は短期間の開門では効果がなしと提言したはず」などの意見が相次ぎ、開門調査の方法案については委員会が農水省に突き返した格好に。「1年間の閉門調査は、開門調査の方法についても検討する時間ができるということ。調査方法の検討経過も示すべき」と清水委員長は強調し、今後の委員会には検討経過も報告するよう提言した。

◆議論が「ねじまがったまま」の委員会

 「こんな意見を言っている場合ではない。水門を閉め切ったままでは、また被害が出る。この委員会の性格は何なのか。何も決められないと言って委員長は逃げる。清水委員長は辞めてほしい」。「そういうなら辞めてもいいですよ」。
 第三者委員会は、一年間の閉門調査を提言したが、委員会ではこの方針に漁業者代表委員は猛反発、清水委員長との間でこんな感情的なやりとりの場面もあった。冒頭の発言は井手正徳熊本県漁連会長。「調整池から毎日、20〜30万t出る排水がノリ不作の原因であることは明らか。委員会が今期のノリ不作に対して対策を提言するなら、水門を開けろ、という主張になるはずではないか」と主張した。
 これに対し清水委員長は、環境悪化の原因を究明しその対策を提言することが委員会の任務だと繰り返し強調、すでに第1回の委員会で示されたグラフを再度提示し「昨年は不作になったが、諫早湾閉め切り以降も3年間はノリは穫れていた。十分な診断をしなければ治療はできない」と科学的な議論を期待した。
 このやりとり後、ある委員は「議論がねじまがったままの委員会」と発言したが、まさに同委員会が最初から抱えていた問題があらためて噴出したといえる。委員会は、ノリ不作の原因を明らかにし、有明海の再生を図るための方策を提言をするために設置されたものだ。ところが、漁業者は、最初から不作の原因は諫早湾干拓工事にありとする立場で、委員会では、排水門を開放すべきとの主張が実現すると考えていた。したがって今回の委員会の提言は「後退だ」となる。

 しかしながら、井手会長が発言する「調整池の排水が赤潮発生をもたらしそれがノリ不作の原因となった」というデータは委員会には示されていない。それこそ今後の調査に待つほかはない。漁業者は、この委員会は、水門開放を決めてくれる場ではなかったのかという思いが強いが、それは谷津農相が第1回の委員会前に「一人でも(開放すべきという)意見があれば開けざるを得ない」との趣旨の発言が原因だ。しかも、第三者委員会といいながら、委員には当時者である熊本、福岡、佐賀の漁業関係者が入ったのだから開放すべきという主張が出ることは分かっていたはず。そもそも「これで第三者委員会といえるのか」という批判もある。3県の漁業者だけでなく、諫早湾周辺の住民にも不安と混乱を招いている政治の責任を冷静にみなければならない。



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