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農政・農協ニュース

外部からの参加求めて経営力の強化ねらう
株式会社化した「ぶった農産」社長語る(9/3)

 全国で初めて農業生産法人を株式会社に組織変更した石川県石川郡野々市町、「ぶった農産」の佛田利弘社長(40)は、農水省が3日開いた地域リーダーとの意見交換会で、株式会社化のねらいを「経営力の強化にある」と語った。
 「社員が経営を継承できるから、社員の動機づけに影響するし、また他分野からの出資者が経営に参加できる。これらは経営力強化につながる」という。
 同社は有機質肥料栽培のコメ、野菜、大豆の生産と、それらを原料としたみそ、こうじ、漬物を一貫製造して、直営店での販売と通信販売をしている。
 今年3月1日施行の改正農地法で農業生産法人に株式会社形態が加わったことを受け、同日付けで、それまでの有限会社から株式会社に変えた。
 意見交換会には熊沢農水事務次官ら同省幹部らが出席した。佛田社長は報告の中で「これまで関係業者とは1対1の取引だったが、今後は各取引先をパートナーとする『協働』の可能性も開けた。銀行の評価も高まった」などと株式会社化の利点を挙げた。
 社長は中小企業家同友会にも参加するなど、異業種交流に熱心だ。
 「食に対する生活者の不満を解消するため、顧客に商品開発や流通改善を考えてもらうようにする」と述べ、生活者と生産者の『協働』も強調した。顧客を消費者としてのみ位置づけずに『生活者』としてとらえる考え方だ。
 家族経営については「ビジネスモデルの概念を、その中に持ち込んで家族経営モデルを早くつくる必要がある」とした。
 話題としては、友人知人から「お前の会社の株を持ちたい。もうけていないのなら、配当はいらない。超低金利時代だから預金よりも株主優待で、おいしくて安全な農産物が手に入ればそれでよい」などと持ちかけられたりもするという。
 同社は資本金1000万円で、まだ同族経営だが、すでに新しい出資者を迎え入れる体制は整っているとして、出資制限の緩和を要望した。
 農外資本の経営支配については、生産資材などの会社が融資の形で農業生産法人を事実上、支配している例もあるようだし、別に株式会社でなくても支配されるのだから、それらをどう排除していくかが課題だとした。
 JAとの関係は非常に良く、生産資材などはJAと同社の購入分を一緒に運んでもらったりしているし、今後さらに協力関係を広げていきたいとの考えだ。
 同社は早くから内部情報通信網(LAN)や即時販売情報管理(POS)システムなどを導入した。販売でのインターネット活用や顧客管理とマーケティングでのデータベース活用など情報技術(IT)化をさらに進める計画だ。
 各取引先から情報が入るが、これら情報提供者を経営資源と位置づけ、顧客と同じように重視している。
 なお、同社の経営面積は水稲16ヘクタール、カブ・大豆・大根その他が計2.3ヘクタール。作業請負は育苗5500箱、耕起から稲刈りまで計23ヘクタール、乾燥・調整もする。
 製造・直売では郷土料理のかぶら寿司と大根寿司という特徴商品がある。
 役員は5人、従業員は社員2人、パートは長短期を含め5人、研修生1人。
 佛田社長は農水省農業者大学校を卒業して就農。63年に有限会社を設立。


  


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