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農政・農協ニュース

難航は必至
WTO閣僚宣言の草案協議(10/9


 世界貿易機関(WTO)新ラウンド立ち上げの柱となる農業交渉の枠組みについてWTO一般理事会議長は9日、日本などが主張してきた食料安全保障や貿易以外の関心事項を「考慮する」とした枠組み草案を加盟国に配った。WTOは11月9日からカタールで加盟国の閣僚会議を開き、閣僚宣言をまとめて次期交渉の立ち上げをめざすが、草案は宣言の農業部分のたたき台となる。しかし米国などの農産物輸出国は、すでに草案の趣旨と対立する主張をくり返しており、加盟国の詰めの協議は難航が予想される。

 一般理事会のハービンソン議長は、これよりさき9月26日にメモ形式で第一次草案を加盟国に示した。今回は、それに追加する形で具体的な提示となった。第一次草案も、農業の多面的機能などを含めた非貿易的関心事項に言及していたが、追加案では「非貿易的関心事項が農業協定で規定されている通り交渉で考慮されることを確認する」などと明確になった。
 また「包括的な交渉を約束する」と明記し、食料安全保障にも言及した。これらは農業協定20条にもとづいた日本提案に沿う内容となっている。

 ところがオーストラリアなど輸出補助金のない農産物輸出国の集まりであるケアンズグループは「20条の枠組みを超えた野心的な記述が(閣僚宣言には)必要だ」と現行協定そのものに否定的な主張だ。
 具体的事項では▽農業と他産業の差別撤廃(農工一体論)▽すべての輸出補助撤廃▽非貿易的関心事項は考慮事項に過ぎない、などと主張している。
 米国も「野心的」な交渉結果が得られるような政治的な意思表明が閣僚宣言に求められるとケアンズグループと似た主張だ。
 このため議長草案の通りに、すんなりまとまる可能性は少ない。「情勢は流動的だ」(JA全中のWTO対策室)。また米国とケアンズは、農業交渉の期限を示すように求めているが、草案は、新ラウンド全体の期限で合意ができていないことから、明示を避けており、この点でも難航が予想される。
 一方、欧州連合(EU)は農工一体論は容認でないとし、貿易事項と非貿易事項のバランスの維持などを主張。また包括交渉でも日本と一致している。しかし、すべての輸出補助の撤廃が盛り込まれた点では草案に反発するとみられる。
 草案通りにまとまれば、日本提案を主張していく足がかりができることになるが、各国の主張が対立したままでは、結局、閣僚会議が政治決断を下すまで最終決着がつかないという可能性もある。

 なお、JA全中は10月4日の理事会で、閣僚宣言案について「農業協定20条の実質を変えることなく非貿易的関心事項が十分に考慮され、かつ農業交渉の結果を先取りしないで、わが国提案の実現に結びつく交渉展開が図れる内容となることを求める」という取り組みの基本を確認した。





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