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農政・農協ニュース

出荷遅れで打撃拡大 BSE対策に注文続出
全青協と女性協が農水省と「畜産の集い」 (11/14)

 酪農家は「乳代の半分以上が飼料代となるため、生活費は乳牛の生んだ子牛の販売代金に頼っているが、それが3分の1ほどに落ち込んだ」と訴え、野菜農家は「シーズンになったのに焼肉や鍋物につける野菜の価格も下がっている」などと牛海綿状脳症(BSE)の打撃が肉牛だけでなく、地域農業全体に広がっている状況が11月14日の「明日の畜産農業を考える集い」で切々と語られた。JA全青協とJA全国女性協が東京都内で開き、生産者や遠藤武彦副大臣ら農水省担当者ら130人が集まった。

 畜産農家からは「肥育牛の出荷頭数が例年の半分に減った。出荷が2、3カ月遅れた牛にはシコリやシミなどが出て品質が落ち、その分さらに価格が下がる。それに死亡率も高くなる。これでは農家の懐にカネが入らない。借金ばかりたまっては年が越せない」、「子牛の価格も5〜7万円下がった。子牛生産拡大奨励事業の特例措置による1、2万円の奨励金では少な過ぎる。繁殖農家には高齢者が多いため、すでに離農が出ている。その経営を若手が引き受けるにも限界がある。早く価格が回復しないと地域の畜産業は壊滅だ」(十河啓二宮崎県農青協副委員長)などの報告があった。
 また「出荷繰り延べには経費がたくさんかかる。畜舎がいっぱいになったのでこれからは雪の中で放牧しなくてはならない。牛の健康が心配だ」(山下博志北海道農青協副会長)、「こうなったのも肉骨粉の輸入を認めていた国の怠慢だ。国の責任で十分な対策を措置するのは当然」。
 果樹農家は「循環型農業を進めようと、肥料を魚粉から肉骨粉に切り換えたが、その矢先にBSE騒ぎが起きた。このままでは循環型の農業が成り立たない」などと指摘した。
 学校給食の牛肉使用自粛では「2カ月間のメニューが決まっているので、安全宣言が出ても、すぐには元へ戻せない、と町長にいわれた」との報告があり、農水省の担当者は「自粛の時は急拠、実施しながら、解除はすぐにできないというのはなぜだろう?」と首をひねりながら「文化科学省に働きかける」と答えた。また「学校給食の献立が元に戻れば、母親たちも安心して小売店で牛肉を買うようになるから学給の影響は非常に大きい」とした。

 畜産農家への緊急融資では▽BSE関連つなぎ資金は無担保無保証となっているが、現実にはJAの窓口で担保も保証も要求される▽負債があるとJAは貸してくれない、など不良債権を圧縮したいJAの姿勢や、また▽対応が遅い、という問題が出た。
 農水省側は▽農業信用基金協会が無担保無保証で債務保証をできる措置をとっている▽農協の実態は調べてみる▽国の対策に上乗せの利子補給をする県が16県ほどあり、県議会の議決を経るために対応の遅い県もある、と説明した。
 このほか生産者からは▽返済期間が1年のつなぎ融資では返せない。5年ほどにしてほしい▽子牛出荷を繰り延べる生産者に助成金を出す対策は、今月で打ち切られるが、もっと延期できないか▽子牛の奨励金も一カ月ごとに支払ってほしい▽交雑種の育成牛は素牛代を割って出荷している。補償基準価格の見直しが必要だ、などの要望が出た。また「出荷の際に子牛に食べさせた飼料などの履歴書を求められ、手間が大変になっている」などの実情を出し▽検査体制を拡充し、と畜処理と、老廃牛、死亡牛の処理を早くすること▽隔離された検査前の牛肉はすべて廃棄すること▽輸入品の検査も国産と同じように厳しくすること、なども求めた。
 さらに「国産品は安全」と胸を張っていたのに今は「輸入品だから安全」という宣伝がまかり通り、生産者の情けない思いが募るばかりといった心情も切々と語られた。一方、マスコミなどの行き過ぎた報道や解説に対する批判も出た。
 農水省は▽緊急対策などの改善を検討する▽助成金の支払いを早くする▽検査体制は拡充中▽肉骨粉はすべて焼却する▽隔離分は一切出回らないようにする、などと回答し、BSE関連対策の概要を説明した。
 なお遠藤副大臣は最初のあいさつで「ここで出た意見は聞き捨てにしないで、対応すべきものには対応していく」と述べた。




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