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農政・農協ニュース

地域農業の担い手を育成・支援
『農業融資の手引き』で浸透−−農林中金 (12/21)

 地域農業の担い手を育成・支援するJA信用事業の本来の使命を果たすために農林中央金庫は、このほど『農業融資の手引〜融資・審査・管理の充実強化に向けて』を発行し、JA役職員や実務者への浸透を図っている。
 昨年10月の第22回JA全国大会決議では、系統信用事業改革のための重点課題の1つに「組合員のニーズに的確に応えるための円滑な農業金融サービスの提供」が挙げられた。
 その具体策として「農業に対する融資機能を強化するため農業融資についての基本方針の策定をすすめ、その審査体制の整備を図る」ことが決まった。
 また、金融業務にかかるルールの標準化、厳格化が地域金融機関にも適用されるなかで、JAグループとしては、12月に策定された自主ルール(JAバンク基本方針)でこれらに対応しうる融資体制の整備に着手してきた。
 『農業融資の手引』はこうした情勢を踏まえて、JAグループの本来的金融業務の役割を一層発揮するために作成されたものである。
 手引きでは、「融資の4つの基本方針」と「5つの基本原則」をふまえた「取組み方針」の骨格4点を示している。
 (1)管内農業者の営農情報を幅広く収集し、前向きに資金需要を掘り起こし的確な融資対応により、担い手農業者との取引関係の強化を図ること。
 (2)借入者にとって利用しやすい農業資金メニューを提供し、制度資金をを含めた各種資金の有効な活用を図ること。
 (3)営農、購買、販売などの他部門との日常的連携維持に努め、融資及び経営指導に際しては、各部門の情報・機能の活用を図る。
 とりわけ経営不振農業者に対しては、営農部門との連携により、不振に至った原因を把握し、経営改善に向けた適切な指導を行う。
 (4)融資の審査に際しては、「融資の基本原則」(安全性・流動性・収益性・成長性・公共性)のうちとくに「安全性の原則」をふまえ、融資先の信用力の的確な評価、資金使途・返済財源の適切な把握を基本とする。

 また融資審査は、農業経営の特性をふまえ、財務内容のみならず経営能力・生産技術力等にも着目した幅広い評価をし、資金種類や営農形態をふまえた審査・管理を行う。
 こうした「取組み方針」をさらに5つの側面からより具体的にみてゆくと次のようになる。
 まず第1には、「的確な融資」を行うためには、「どんな家族形態の組合員」が、「どのくらいの経営規模で、どんな品目を作っているのか」「その経営状態は?」をはじめ、「購買・販売の利用状況は?」「貯金、借入金はどのくらいあるのか?」などの融資審査の基本となる組合員(融資先)情報を常時把握し、管理することが前提となる。
 とくに、専業・大規模農業者、農業法人などの中核的農業者の情報の把握と管理は資金需要も大きいことから重要となる。
 第2には、融資審査の基本となる融資先の信用力(返済能力)をどのように評価し、融資の可否を決定するのか、という点である。そのポイントは、「ヒト」(経営者・労働力)、「モノ」(技術力・販売力)、そして「カネ」(財務・収支状況)にある。これら3方面から総合的、多面的に評価し、対処(融資)方針を決定することである。
 手引き書では信用力評価と対処方針は原則として年1回の見直しが必要としている。見直しの結果、融資先が業績不振に至った場合にはその原因を分析し、状況に応じて経営改善に向けた指導の強化を図る。
 第3には、融資資金の種類に応じたチェックポイントの問題がある。
 案件審査の基本は、「資金使途は何か」「返済財源は?」「どのように返済するのか?」の3点の見極めがカギ。経常運転資金(営農資金)、長期運転資金、設備資金、とそれぞれに応じたチェックポイントの項目と内容に留意することが重要となる。
 第4は、「事後管理の徹底」と「経営改善指導」の問題である。
 事後管理とは、常に変化する融資先の情報を日常的に把握・蓄積し、変化が起きた場合には新たなアクションを起こすこと。事後管理を徹底することにより、貸出金の円滑な回収が図られ、新たな資金需要等のニーズを発掘することができる。
 経営不振先となった農業者への経営改善指導は、自己努力を前提とした実現可能な「再建計画」を策定・履行させることが第一歩となる。またそれには営農部門や関係団体との連携に基づく支援協力体制の確立がが不可欠となる。
 本手引による融資・審査・管理を本格的に実践的するためには、「体制」「機構」「権限」とそれぞれの面からの整備が必要となる。これらはJA融資業務の共通課題ゆえ「JAバンク基本方針」に基づいて行う。
 しかしながら、この面で多くのJAは、審査体制の整備がいまだ途上にあり、限られた人員体制で融資及び審査をこなさなければならない状況にある。
 そこで農業融資に重点的に対応する店舗の選定が課題となる。この場合、一般店舗でも基幹店舗への融資の取り次ぎが行える仕組み作りも必要となる。
 また、的確な融資審査及び内部牽制機能の強化のためには、本来は独立した審査部署が設置されるべきだが、JAの現状からして最低限、本所所管部に審査責任者(管理職)を配置することが必要としている。
 農業融資は、JAの融資全体からみれば小さな量ではあるが、それはJAの金融業務の基礎をなすものであり、いわばJAグループの存在理由そのものであるといえる。


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