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農政・農協ニュース

食品安全でリスク管理など語り合う
学校教育の問題も――農相と消費者代表 (2/17)

武部勤農相
 「農水省は生産者第一できたが、今後は消費者優先へと軸足を移す。そのために今、大手術をしている。私は途中でメスを投げ出すわけにはいかない」と自分を医師に例えて武部勤農相は2月17日、更迭の声に対して大見得を切った。自ら希望して開いた消費者と「語り合う会」の席上だ。牛海綿状脳症(BSE)の発生後、農相と消費者代表の直接対話は初めて。テーマは「食と農」。同省の講堂に消費者側15人、傍聴者約80人が集まった。

 「軸足」については、おいそれとは「移せないだろう。私たちも(約束の実行を)厳しく点検していく」と主婦連の和田正江会長がクギをさし「BSEでも雪印食品の場合も行政の対策は小出しであり、後手々々に回った」と批判した。
 また、(社)全国消費生活相談員協会の藤井教子理事長は危機管理体制が弱かった行政の怠慢をついた。現状では「食の安全に対する消費者の信頼確保は難しい」とする発言が多かった。
 農相は「BSEに対する危機管理マニュアルは早い段階で作るべきだった。厚労省ともども責任を感じている」とし、「感染経路を迷宮入りさせないため究明に努めている」と報告した。また事故発生後だけでなく、それを未然に防ぐリスク管理が必要だとの認識では話が一致。農相は食料面でも国民に情報を知らせる例えば『地震予知連絡会』のような伝達手段も「考えている」と明らかにした。

 食品表示では日生協の阿南久理事が「食品衛生法に『食』の理念があるのか。単なる取締法ではないか」と突き、他にも「JAS法は生産者サイドの法律だ。知らない消費者が多い」など『食』に対する政府の基本認識や情報発信の弱さを指摘する声が相次いだ。
会場写真
 また▽表示にかかわる法律が多すぎる。基本的にはその一元化を、食品安全行政の一元化とともに考えてほしい▽現状は不正表示ができるシステムになっている▽不正表示をした企業名はすぐに公表すべきだ、などの意見が出た。
 さらに専門ジャーナリストの砂田登志子さんは「学校では交通安全教育をしているが、食品安全教育はしていない。またスポーツ新聞はたくさんあるが、食品安全の新聞はほとんど見当たらない」などと学校教育の問題を提起した。
 山梨県の主婦米山けい子さんも「子供の時から意識を高めるべき。また農水省は食料問題の資料を数多く出しているが、地方の図書館は置いていない」と情報の届け方の改善を求めた。

 『農』の問題では、農家の経営規模が小さいから農産物価格を安くするのは難しいという農相の説明に対し、全国消費者団体連絡会の神田敏子さんは、小規模農家でも低価格を「追求できる道があるはず」とし、「小さな農家でも例えば地産地消などで成り立っていけるようにしてほしい」と要望した。
 また自給率向上の観点から備蓄米をアフガン援助へ回せなどの意見も出た。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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