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農政・農協ニュース

フードシステム確立や生産履歴の規格化など
農水省が「食と農の再生プラン」 (4/11)

 牛海綿状脳症(BSE)や食品の虚偽表示などをめぐり様々な農政課題が表面化してきたとして農水省は11日、農林水産政策の抜本的改革に向けた設計図として「『食』と『農』の再生プラン」を発表した。BSE問題調査検討委員会報告が同省の「重大な失政」を指摘したことを受け、政策を大胆に見直す。プランのテーマは(1)食の安全と安心の確保、(2)農業の構造改革の加速化、(3)都市と農山漁村の共生・対流の3つ。
 施策では(1)フードシステムの確立、(2)意欲ある農業経営体が躍進する環境条件をつくる、(3)人と自然が共生する美の国づくりを進める−−ことを掲げた。
 消費者第1のフードシステム確立では欧州連合(EU)なみに予防原則を打ち出し、この原則を含む「リスク分析の考え方を踏まえて」法制度を抜本的に見直し、新たな食品安全行政組織を構築するとした。

 また食品が「いつ、どこで、どのように作られて流通したか」を消費者がいつでも把握できるトレーサビリティ・システムを平成15年度に導入すると明確にし、生産工程履歴のJAS規格化など法制化も検討する。
 そして、農場と食卓をつなぐ食品産業の機能を強化し消費者ニーズに即したフードシステムを実現を図る。
 さらに食品表示の信頼回復に向け日本農林規格(JAS)法を改正する。現状は関係法律が複数あって消費者にわかりづらく、二重行政だとの指摘もあるため制度の再構築を検討する。
 また現在、国の機関に65カ所ある「食品表示110番」を都道府県にも設置するとともに、消費者の協力を得て「食品表示ウォッチャー」による監視を強化するため、国と都道府県合わせて700人を委嘱する。加えて、悪質な違反者に対しては業者名の公表やペナルティを強化する。

 一方、農産物の高コスト構造の是正も掲げ、野菜のセーフガード監視品目を中心にコスト削減のための革新的な生産技術の導入を目ざす。また直接取引の推進など流通の多元化や、取引の電子化などを通じ、出荷から小売まで効率的な流通システムを確立する。
 農業の構造改革の加速化では「農業経営の株式会社化などによる多面的戦略を展開するための措置を講じる」とした。
 また農業法人の自己資本充実を促進するため出資の円滑化措置を講じる。さらに農業法人などに対し、売れる商品企画や販売戦略など高度なノウハウを提供する取り組みを支援する。集落営農への支援▽農地法の見直し▽農協系統組織の改革促進なども掲げた。
 コメ政策の大転換も挙げた。生産調整や流通の見直し検討を深め、経営所得安定対策などを総合的に検討し、水田農業の構造改革を加速する。経営所得安定対策のあり方はコメ政策の見直しと一体で議論する。

 共生・対流では都市と農山漁村の双方向で行き交うライフスタイルを提案。モデル的な「むらづくり」を進める。
 資源利用では食品廃棄物と家畜排せつ物、未利用木材や廃材について、たい肥や飼料、化石燃料の代替エルルギーへの利用を促進。技術開発をする。
 「美しい景観」は維持するだけでなく創造もする。住民をはじめ土地改良区、NPOなどの参加を得て田園環境を創造し、棚田、里地、里山、海辺の保全を通じて美しい日本の原風景を再生する。
 同再生プランは、広く意見を聞いた上で8月の概算要求までに具体化し、来年度から順次実施する。また省内に設ける各対策本部で工程管理し、各府庁と連携して進める。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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