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農政・農協ニュース

市町村の連携で地域を守ろう
首長が手弁当で集まり知恵出し合う
JAとの連携も今後の課題−第7回全国首長連携交流会 (5/10〜12)

 5月10〜12日、新潟県長岡市などで「第7回全国首長連携交流会」が開かれた。テーマは「首長連携で明日の日本をつくる」で全国から集まった首長は100名以上。地方分権の時代を迎えて地域づくりの「現場」を担う意欲ある市長、町長などが財政、市町村合併、教育、福祉、農村振興策などで意見交換した。主催したのはNPOの地域交流センター(田中栄治代表理事)。趣旨に賛同した首長らは参加費を支払って自主的に参加、それだけに本音の議論があった。JAの地域づくり、福祉活動などへの評価も聞かれ、JAにとっても今後、足もとの行政との連携が大切になりそうだ。

全国首長連携交流会

 交流会には霞ヶ関の中央省庁の官僚などもアドバイザー役として参加、首長たちに市町村を取り巻く状況、教育制度改革など最近の国の施策がめざすものなどを説明した。
 現在の日本は確かに経済は低迷しているが、それでもGDPは依然として世界第2位。それを関東、東北、九州など地域経済単位でみると、たとえば、関東は186兆1100億円で第4位、四国でも13兆6600億円でギリシャ、フィンランドに次いで第41位と各地方の経済力は「ほとんどが世界50位のなかに入る」と国土交通省の佐藤信秋審議官が指摘。「地方には経済力のポテンシャルはある。それを発揮するには地域連携が鍵になる」と集まった首長に強調した。
 ただし、今後、わが国の人口が地方だけでなく3大都市圏でも減少が見込まれるなか、かつてのような経済発展は望めず、今後は「安定の時代。自然の破壊、建設による経済成長から、自然の保全、活用の時代になる」と元経済企画庁事務次官の糠谷真平国民生活センター理事長は指摘した。
 こうしたなかでわが国では地方分権が進められているが、たとえば教育もその一環。
 寺脇研文科省審議官は、今年度からスタートした学校週5日制について「せめて週に2日は子どもたちが家庭、地域で過ごせるようにするのが趣旨」と語った。また、それにともなうカリキュラムの削減が学力低下を招くとの批判があるが「たしかに農業など体験学習を増やすべきとの考えはある。ただ、教科学習については、国が定めるレベルとしては従来より削減したということ。狙いは地域の自主性に委ねる部分を増やしたと理解してほしい」と地域の教育も国主導ではなく首長のリーダーシップが鍵になる時代になったと強調した。
 その際、市町村独自の施策や財政をも問われることになるが「どんな施策も納税者、住民に説明できるかどうかがポイント。情報公開が大切で、それが結局、歳出カットにもつながる」と財務省の村尾信尚国債課長は指摘した。

全国首長連携交流会

 分科会は、行政改革、教育、医療・福祉、地域づくりなどをテーマとして開かれた。
 このうち地域づくりは「新しいまちづくりの芽を考える」がテーマ。その芽のひとつとして紹介されたのが、農水省の「村づくり維新」。吉村馨農村政策課長は、農村振興は従来、過疎化対策、農業振興策などを中心に考えられてきたが、同政策は都市住民の農業、農村への関心の高まりという新たな兆しを受けて「農山漁村で暮らすライフスタイル」を国民的な課題として提唱した農村振興策であることを説明。都市・農村の共生、対流をめざす施策を進めていくことを紹介した。
 そのほか、厚労省からは地域づくりの芽として、市町村が「介護予防事業」に取り組むことも重要ではないかとの指摘もあった。
 こうした報告を受けて首長らから自らの地域での実践を紹介された。
 福島県会津坂下町の竹内是俊町長は、農産物価格の下落で町の基幹産業の農業が苦境に陥っていることを指摘しながらも、今後の農業、農村の活性化は「グリーンツーリズムなどによる都市との交流で“交流人口”の増大を図っていくことが大事」と語り、農産物直売所も単なる地元農産物の販売所とするのではなく「自分の町へのリピーターが増えるような情報発信基地として計画している」と話した。
 また、京都府綾部市の四方八洲男市長も、市外の参加者による農村情報を都市に伝えるネットワークを作っていることを報告、「工業の時代はわずか100年。人間の歴史をみれば圧倒的に農業、農村の時代」と農村の価値を都心にアピールする一方、今後は農村住宅などの建設によって長期滞在者などが増えることを期待していると話した。
 こうした議論のなかで教育の場での農業体験やグリーンツーリズムなど、考えられる交流をさまざまな地域と「実験的な精神」で取り組むことが新しい芽を生むことなどが課題とされた。

 首長たちからは、国会議員や国の行政マンと異なり「自分は地域づくりの現場の人間」という問題意識が感じられた。
 参加したJA全中の桜井勇地域振興部長は「自分たちの地域は自分たちでつくると考える首長が増えていることにJA関係者ももっと関心をもつべきではないか」と指摘。今後、そうした市町村では徹底した情報公開で住民に協力を求めるという姿勢が強まるとみる。それが地域の生き残り策だという意識がある。
 「首長たちからは、JAの女性たちによる助け合いの会の活動や地産地消の取り組みが福祉、健康増進策にもつながっているとの報告もあった。JAグループは地域との共生を掲げているが、市町村との連携も視野に入れることが求められているのではないか」と桜井部長は話している。


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