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農政・農協ニュース

株式会社の農業参入法制度見直しを急ぐ農水省
JAグループ”拙速な見直し“は認めず (7/11)

 農水省は「食と農の再生プラン」の中で株式会社の農業参入を打ち出し、6月には有識者から助言を求める懇談会を設置するなど法制度見直しを急いでいる。このためJAグループは改めて同問題を重点に再生プランの内容を7月下旬から都道府県ごとにJA組合長会議などで検討する。
 これをまとめて8月28日には意思結集の全国代表者集会を開いて政策提案することを7月11日のJA全中理事会で決めた。
 全中は「昨年の改正農地法で、農業生産法人の一形態として株式会社を導入したばかりであり、十分な検証・検討もないままの拙速な法制度見直しは認められない」との基本的考え方で再生プラン検討の参考資料をまとめた。
 農水省が5月末の経済財政諮問会議に出した再生プランの推進策や、それをめぐる武部勤農相の発言の中には、農協系統組織は「改革か解体か、真価が問われている」との指摘とともに株式会社の農業参入が盛り込まれている。
 そうした発言は、JAグループの組合員と農村社会に「いたずらに不安を与え国民・消費者にも誤解を生じさせる」と参考資料の中で批判している。
 昨春の法改正は株式の譲渡制限などをつけて株式会社参入に道を開き、現在までに株式会社形態をとる農業生産法人は25法人になった。
 これを促進するため農水省は再生プランで「法人化で拓く構造改革」を掲げ「農業経営の株式会社化による多面的展開」へ「出資の円滑化の措置を講じる」と規制緩和を打ち出した。
 これに対し全中の参考資料は懸念される点として▽株式会社が外部から参入した場合の地域の合意や理解▽所有と経営の分離を特徴とする株式会社制度が家族農業主体の地域になじむかどうかの是非▽株式の所有者が果たすべき農地の維持・管理責任▽大会社が将来の農地転用を目ざさないか▽コメの生産調整に参加するかどうかなどを挙げた。 また別に株式会社でなくても、すでに地域農業の受け皿となる多様な担い手が育ちつつあるとして、平成7年から6年間に農業生産法人が約50%も増えて6213(株式会社形態を含む)、JA出資の農業生産法人も65となったことなども指摘した。
 一方、考慮すべき点では▽株式会社形態を選ぶ農業生産法人の出現▽外部から株式会社が参入する以前に地域農業が崩壊しかねない現実などを提起した。
 このほか全中は再生プラン検討課題を5点挙げ「構造改革特区」問題の検討も呼びかけた。
 これは「農地法の規制緩和による地域に根ざした株式会社などの地場企業の農業参入を可能とする特区」をつくろうとする構想で、再生プランの推進策と工程表に盛り込まれている。
 特区という手法で規制緩和を全国に波及させていく「社会実験」といえる。
 すでに都道府県から意見を聞かれた15中央会の多くが「農業生産法人の要件や農地規制を安易に緩和することは断じて容認できない」などと回答した.。
 しかし担い手に農地を集積させるには規制緩和も必要といった意見もあり、JAグループは改めて意見集約を図る。
 これら再生プラン検討はコメ政策改革の組織討議と併せて実施することも考え各県ごとにJA代表者集会などを開く。全中は農業会議など関係団体との共同開催を図ることも提起した。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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