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農政・農協ニュース

「新風送るJA」目指し
―JA全中の新体制決まる―
 韓国中央会長の連帯挨拶も (8/9)

 JA全中は9日の臨時総会で平成13年度の事業報告と決算などを承認。任期満了にともなう役員改選で新会長に宮田勇氏(JA北海道中央会会長)を選任した。副会長2人、理事21人、監事3人も選任。正副会長と、理事のうち11人、監事全員が新任となった。新常務には山本章夫氏(全共連経営企画部参事役)、塚田和夫氏(総務企画部長)、向井地純一氏(農林中金・JAバンク企画実践部長)が決まった。役員任期は3年。また総会はWTO農業交渉への米国の新提案をはね返す取り組みを強めることなどを含めた農業政策確立の特別決議を採択した。

JA全中臨時総会で挨拶する原田会長
JA全中臨時総会で挨拶する原田会長

 会長選出は今回から、より透明な方法に改めた。全国6ブロックからの推薦候補が複数となった場合は、代議員選挙によって最多得票者を全中の役員推薦会議が理事会に推薦する形だ。これまでは推薦会議で一人に絞る調整をしていた。
 宮田新会長は11代目になるが、代議員投票制では最初の会長。立候補は3人で、もう一人の花元克巳氏(JA福岡中央会会長)は全中副会長に選任された。 就任あいさつで宮田会長は、危機的状況にある食と農に対し、一方では期待もまた高まっている、として「JAは新しい動きを前進させる三つの新風を送っていこう」と呼びかけた。
 一つは『安全とやすらぎの風』で消費者との結びつきを強め、二つは『改革の風』で組合員とJAグループの結束を固め、三つは『元気な風』を送って地域経済を活性化させようというものだ。
 これに先立ち総会冒頭では原田睦民前会長があいさつの中で「WTO農業交渉は米国の提案で新局面を迎えたが、食料の60%を海外に依存している我が国の特性を踏まえた貿易ルールづくりが必要だ」と強調。 来賓あいさつでは来日した韓国農協中央会のチョンデグン(鄭大根)会長が原田会長の発言を受けた形で「両国の農協は人的交流とともに、多面的機能を持つ農業の特性や、農産物輸入国の立場をWTOに反映させるために協力してきたが、今後の農業交渉でも、さらに緊密な協力関係を築き、国際的な連携活動を強化しなければならない」と力強く語り、盛大な拍手を受けた。
 さらに「農協組合長のみなさん」と代議員に呼びかけ「私たちは、農業と農協の発展のために前進しなければならない宿命的な同志だと思っている。指導者たちの共通認識のもとに補完関係をいっそう強めながら今後のWTO交渉に対応していこう」と訴えた。
 韓国でも専門農協の全国連合会の統合などが進んでいるとの報告もあった。
 議事では前年度の事業報告や決算を了承。役員を改選。このあと「農業政策確立」で特別決議をした。
 内容は「米国提案を断じて容認できない」とし、また農水省の『食と農の再生プラン』の内容は「農業者に不安を与えるもの」と批判した。

◆全中の特別決議

新理事全員が紹介される
新理事全員が紹介される

 9日のJA全中臨時総会は「農業政策確立等に関する特別決議」を採択した。要旨次ぎの通り。
 WTO農業交渉=関税水準の大幅削減やアクセス数量の大幅拡大などを内容とする米国提案に屈することなく、コメのミニマム・アクセス制度の改善と総合的な国境措置の堅持、新しいセーフガードの創設などに向けて各国の理解と支持を得る取り組みを強力に展開する。
 コメ政策の見直し=国の役割と責任の明確化、生産者が計画生産に主体的に取り組むことができる条件整備、生産者全員の負担による過剰米処理対策などの政策提案に取り組む。
 農地制度の見直し・特区の導入=株式会社の農業参入は「農企業創生特区」の導入を含め認めることはできない。拙速な法制度見直しは家族経営で成り立っている日本農業を否定することになりかねない。
 JA改革の促進=JAグループは第22回JA全国大会決議にもとづき、改革に取り組んでいるが、営農指導の強化や消費者に信頼される経済事業の刷新などをさらに加速していく。

◆コメ政策は国の責任明確化が基本条件
  宮田全中会長語る

就任会見で語るJA全中の宮田会長(右は山田専務、左は塚田常務)=東京・虎ノ門パストラル
就任会見で語るJA全中の宮田会長(右は山田専務、左は塚田常務)=東京・虎ノ門パストラル

 JA全中の宮田勇新会長は9日、就任会見で質問に答え、コメ政策では問題を「市場原理に委ね、余ったら生産者の責任で処理するとか、生産調整を選択性にするなどといったことをまともにやれば生産も流通も混乱する。コメは基本食料だから国の責任と義務を明確にすることが政策見直しの前提となるべきだ」と次ぎのように語った。
 株式会社の農業参入については、利潤目的の株式会社が(参入後に)投資効率が悪いとして農業をやめたら(撤退後の)農地は荒地とか産廃などの処理場になってしまうだろう。食料自給率の低い日本では農地は非常に大切だ。
 昨年、農業生産法人の一形態として株式会社が導入された。その後の検証もなしに(農水省が)『特区』構想を打ち出したのは拙速だ。株式会社の農地取得には反対していく。意欲ある方々には大いに農業に参入してほしいが、企業の農地取得には危機感を持つ。
 「安全安心」の課題では全JAに、消費者と地域の代表からなる「食と農の委員会」をつくっていく。
 また生産者が生産過程を記録する記帳制度を広げ、消費者に生産過程がわかりやすいシステムを確立していきたい。
 農協改革では武部勤農相の「改革か解体か」という発言があった。改革ピッチを上げることには異論がないが、農業者をばらばらにする解体という表現はいけない。農相は北海道選出だから以前から意思の疎通を図り、期待もしているが、意見の合わない点は率直に申し上げていく。
 今回の全中会長候補選挙は、広く私の意見を聞いていただく開かれた制度となって非常によかった。この制度でなければ私は選出されなかっただろう。
 日本ハム問題は消費減退に影響しないかと心配だ。企業のモラルはいったいどうなっているのか、あってはならないことが起こって残念のきわみだ。

宮田勇氏
小林二郎氏
花元克己氏
宮田勇
(JA全中会長)
小林二郎
(JA全中副会長)
花元克己
(JA全中副会長)
山本章夫氏
塚田和夫氏
向井地純一氏
山本章夫
(JA全中常務理事)
塚田和夫
(JA全中常務理事)
向井地純一
(JA全中常務理事)


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