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農政・農協ニュース

無登録農薬の輸入、使用の禁止
――農薬取締法改正で農水省の方向性まとまる (10/18)

 農水省は、このほど「農薬取締法」の改正案についての方向性をまとめた。
 今年7月30日以降、登録のない農薬(以下、無登録農薬)であるダイホルタンとプリクトランを輸入、販売していた業者が山形県警に逮捕され、全国でこれら無登録農薬が販売されていることが判明した。こうした事態に農水省は、8月13日、各都道府県に農薬取締法にもとづく立入検査の実施を指導し、全国で農薬販売業者に対する立入検査を実施。その結果、43都道府県で172の販売業者が約2800戸の農家に、10種類の無登録農薬を販売していたことが判明(10月10日現在)。これら無登録農薬を使用した農産物は出荷自粛、焼却処分などの措置がとられたが、消費者の国内農産物に対する信頼を著しく損なうと同時に、無登録農薬を使用していない生産者を含む産地そのものへの信頼をも傷つけた。
 こうした事態に農水省は、現行法では規制できない無登録農薬の輸入、使用を法的に禁止し、さらに違法な販売などが行われないように罰則を強化する改正案を検討。その基本的な方向性をまとめ、現在、今臨時国会中の上程をめざして、関係省庁と鋭意協議している。
 農水省が考えている改正案のポイントは以下の3点だ(図参照)。

【農薬登録制度の見直し】
 農薬の安全性などを確保するための登録を、現行法の販売段階から、「製造、輸入段階」で求めることにし、水際での監視の徹底をはかる。農薬の輸入については経済産業省の所轄で、実務的には外務省関税局となるため、具体策についてはこれら省庁と協議していくことになる。

【無登録農薬の使用禁止】
 無登録農薬を農産物などの病害虫の防除に使うことを禁止する。現行法では、無登録農薬の、使用については「販売を禁止すれば使われることはない」(澤田清農水省農薬対策室長)はずという「生産者性善説」に立ってきたため取り締まることができなかったが、今後は無登録農薬を使用すれば、使用者(生産者)も農薬取締法違反を適用されることになる。これによって「非農耕地用」と銘打たれていても「農耕地で防除のために使用されるものはすべて農薬」(澤田室長)であり、その農薬が登録されていない場合は、法律違反として使用者に罰則が適用されることになる。

【罰則の強化】
 同じ生産資材である飼料などに比べ、農薬関係の法律違反の罰則が低いこと、罰則があっても無登録農薬の違法販売が行われていたことから、農薬取締法の罰則(現行法は、1年以下の懲役または5万円以下の罰金)を飼料安全法と同等のレベル(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)まで引き上げる。

農薬取締法改正案のポイント

 今回の無登録農薬問題では、輸入、使用者への規制が現行法ではないためにこうした問題が起きたという指摘もある。農水省が示した方向で法改正が行われれば、そうした問題には一定の歯止めがかけられるだろうと期待できる。しかし、生産者サイド、とくに園芸産地から問題提起されている「マイナー作物」の問題はいぜん残ることになる。国内農業を伸展させるためにも、この問題への早急な対応も待たれる。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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