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EU委員会のモダリティ案に農業団体が反発
―JA全中発行の「国際農業・食料レター」― (1/9)

 EU委員会は、昨年12月16日にEU加盟15か国に対して、WTO農業交渉で今年3月末までに確立しようとしているモダリティについての新たな提案を示した。
 EU委員会のモダリティ案は、市場アクセス、輸出競争、国内支持について具体的な数値を盛り込んだもの。加盟国間で同案を了承するかどうかの議論が行われる予定だが、EUの農業団体はこの案に反発しており、この案どおり了承されるかどうか不明だとJA全中発行の「国際農業・食料レター」(No91)は伝えている。
 EU委員会のモダリティ案は、関税についてウルグアイ・ラウンド方式による「平均36%、最低15%の引き下げ」や、先進国は途上国からの「全輸入の50%以上に無税を供与」としているほか、輸出補助金の「数量ベースでの大幅削減」「金額ベースで平均45%の削減」、国内支持は「総合AMSにより約束水準から55%削減」などを提案した。
 同案に対しEU農業団体連合会(COPA)とEU農協連合会(COGECA)は両会長名で即座に反対する声明を発表した。内容は、「ウルグアイ・ラウンド最終合意の内容よりも大幅に譲歩している」、「途上国にさらに恩恵を与える提案だが、すでにEUは後発開発途上国から農産物輸入に対し無税アクセスを与えることを決定している。他の先進国はこのような提案を行っていない」などと批判しており、欧州理事会に対して「この案に対して変更を加えるよう求める」としている。
 EUは今月開催されるWTO農業交渉特別会合への提出に向けてこの案を検討するが、支持が得られるかどうか、同レターは「流動的な面もあり今後の動向を注視する必要がある」と指摘している。
●EU委員会のモダリティ原案の概要
【市場アクセス】
・UR方式による平均36%、最低15%の関税引き下げ
・先進国は途上国からの全輸入の50%以上に無税を適用
・途上国の関心品目についてタリフ・エスカレーションの大幅削減
【輸出競争】
・輸出補助金について、数量ベースで大幅削減、金額ベースで平均45%削減
・輸出信用の輸出補助金的要素にかかわる厳格な規律の適用
【国内支持】
・削減対象の国内支持は総合AMSにより約束水準から55%削減
・先進国に対するデミニマスを撤廃
・動物愛護のための支持を「緑の政策」に位置づける
【実施期間】
・2006年を起点。先進国は6年間、途上国は10年間


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