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農政.農協ニュース

住宅ローン増強へ 全国キャンペーン
JAバンクが新年度方針 (1/13)

 5年後の住宅金融公庫廃止などをにらんでJAバンクは住宅ローン増強に乗り出す。農林中金が1月13日決めた「平成15年度JAバンク重点実践事項」は同ローン残高を前年比で8%伸ばす目標を打ち出した。その後も毎年度8〜10%ずつ伸ばし18年度末には残高を6兆円にする方針だ。現在は約4兆円。公庫融資の新規実行額は毎年度約10億円にのぼる。公庫の段階的廃止で、その借り換え需要が大きな市場になると見て各民間金融機関はすでに「公庫対抗商品」などと名付けて新商品開発に力を入れている。
 農林中金としては、返済期間30〜35年間といった公庫融資に対抗できる超長期固定金利型の商品開発などに取り組む。全国のJAもこれまで個別に開発し推進してきた住宅ローンの商品性を改めて見直す。
 また住宅ローンとリフォームローンの全国統一キャンペーンや、各JAのローン相談会で資金需要の掘り起こしを徹底する。住宅関連業者との連携強化や需要見込み先のリストアップなどの業務も強化する。
 キャンペーンは4月から2カ月間と、10月から4カ月間の2回に分けて強力に展開する計画だ。
 住宅ローン相談会は31県の144JA(昨年8月現在)が利用者の便宜を図って休日に開いているが、これではまだ全JAの2割にも達していないため、利用者「1万人キャンペーン」を実施するなど開催や定着をもっと増やす。
 一方、ローンのモデルJAは40(同)あるが、農林中金と信連は、これと一体となった共同活動を展開。その中でローン増強のノウハウを蓄積し、それを他のJAに広げていく。
 農林中金はすでに推進マニュアルなどの資材を発行しているが、さらに4月には「家づくり・リフォーム入門」(漫画版)を出す。
 こうした取り組みの前提として「重点実践事項」は各JAが全国平均8%伸長という指標の達成に見合った具体的で戦略的な目標を立てることを提起した。
 長い不況の中でJAバンクはJAの収益力強化を喫緊の課題として「ちいき・いきいき・ローン作戦」という名称の活動で、収益に直結する個人ローンの増強を図ってきた。
 中でも住宅ローンはリスクが小さく、長期にわたって安定的な収益基盤となるため新年度からは、これを最重点商品とした。またJA口座の家計メイン化や共済事業など他の事業の利用にもつながるとしており、住宅資金の需要はまだまだ伸びると農林中金は期待している。
 住宅に加えて各種の個人ローンも戦略的に推進。中でも「お金は急に借りられる」とうたった新型のカードローン「JAらくらくキャッシュ」を全国キャンペーンする。これはJAカードローンより簡単な手続きで50万円まで、銀行のATM(現金自動預け払い機)でも引き出せる。
 さらにマイカーローン利用者のリピーター取引なども推進し、農林中金と信連は個人ローンの商品性見直しなどに取り組む。
 
◆担い手支援の農業融資相談員を全JAに
  JAバンク重点実践事項

 
 農林中金は1月13日の経営管理委員会で、公金を除く個人のJA貯金残高を前年比で2.5%伸ばすことを掲げた15年度の「JAバンク重点実践事項」を決めた。金融システム不安の中で個人預貯金の伸びは顧客から信頼されている証しとして、同金庫の方針では珍しく数字目標を打ち出した。
 同貯金の伸び率は昨年4月のペイオフ一部解禁以前は毎年ほぼ2.5%。以後は2%前後の推移だが、マイナスとなった金融機関がある中では健闘している。「勝ち組」と認知され続けるためには全県でプラスの伸び率を確保した上での全体目標達成が必要とした。
 実践事項は金融情勢として、今後の主戦場ともいうべきリテール(小口金融)分野へは異業種からの参入も目立つ中で預貯金者の選別意識は格段に高まっているとした。
 課題としては、JAバンクの信頼性は確保されているものの、一方ではJAと信連の全体収支が低下傾向にあり、収益力の回復と向上が急務であると強調。そして新年度を経営健全化と事業量確保と収益確保を目指す「正念場」とした。
 貸出では住宅ローンを中心とする個人ローン増強とともに、担い手の育成と支援を基本とする農業融資の推進を最重点に挙げた。
 体制としては、すべてのJAに「農業融資相談員」(仮称)を置くことを打ち出した。審査やリスクの管理をしっかりやりながら担い手をサポートしていく。すでに相談員を置いたところもある。
 農業法人への融資も積極化する。管内に優良な農業法人があるJAは、新たに発足する農業法人投資育成会社(アグリビジネス投資育成会社)の投資活動と適切な連携を図るなど法人融資を推進する。
 また、農林中金と信連は兼業農家から法人まで多様化する資金需要を踏まえた貸出条件見直しなど、系統要綱資金をはじめとした農業関係資金の充実を図る。さらに、JAの農業融資担当者を育成する研修を充実する。
 系統は13年度から「ちいき・いきいき・ローン作戦」とともに「預かり資産No.1作戦」を進めてきたが、これの継続も最重点だ。
 貯金に加え国債、投信、外貨預金、確定拠出年金といった市場性金融商品を合計した個人預かり資産の安定的な獲得で顧客基盤と事業基盤を拡大していく。
 全JAが、どのようなサービスと商品セールスをするかを明確にし、預かり資産増強の全国特別運動を春と夏と年末に展開する。
 このほか農林中金と信連は、新たなビジネスモデルの構築に役立つ仕組みづくりも重点的に検討する。
 JAのローン推進力を効率的に強化するための「ローンセンター」設置や自動審査システムの活用、系統サービサーの有効活用などインフラ整備を検討する。ローンセンター設置は各信連で検討が進んでいる。



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