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農政.農協ニュース

農薬使用基準、特定農薬指定で答申
――農業資材審議会 (1/30)

 農林水産大臣の諮問機関である農業資材審議会(瀬尾康久会長)は、1月30日に農薬分科会(本山直樹分科会長)を開き、農水大臣および環境大臣から諮問された「改正農薬取締法第2条第1項に規定する特定農薬の指定」、「同法第12条第1項の規定による農薬使用基準」について、両大臣に答申した。また、環境大臣から諮問のあった「水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準の変更」についても環境大臣に答申した。
 
◆重曹・食酢・使用地域の天敵を特定農薬に指定
 
 「アイガモも牛乳も農薬か?」と話題になった「特定農薬」は、改正農薬取締法(以下、新農取法)第2条で「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」で、農薬登録が必要でないもののことだ。
 農水省では、昨年11月〜12月に、現在、現場で「特定農薬」に指定される可能性のあるものとしてどのようなものが使用されているかという情報をインターネットなどを通じて募集した。その結果、全国から延べ約2900件の情報が寄せられ、重複を整理すると約740種類におよんだ。このうち熱湯、雑草抑制ネット、粘着シート、防虫網など物理的な防除で薬剤ではないもの、アイガモ、アヒル、牛、コイなど雑食性で天敵ではないものなど「農薬に明らかに該当しないもの」を除外した679種について、農薬分科会特定農薬検討会で検討。「今回、特定農薬に指定することが妥当と考えられる薬剤等」としては、1.重曹、2.食酢、3.使用される場所の周辺で採取された天敵の3つが指定された。
 「農薬には該当しない」とされたものを除くその他のものについては、「農薬効果が不明」「モノによっては安全性の確認が必要」で「判定保留」となった。30日の農薬分科会では、「主観的データで(効果などについて)信頼できなかった」「植物抽出と謳いながら化学合成物が入っているものもあるので、キチンと評価すべき」という意見が委員からだされた。「食品も農薬かという意見があるが、食品から抽出したり、発酵して使用するものが多く、抽出されたものは化学成分であり」安全性などについて評価する必要があると農水省農薬対策室の談。
 重曹は「食品であり、炭酸水素ナトリウムを主成分とする薬剤は農薬登録により効果確認済み」であること。食酢も「食品であり、食酢の活性成分である酢酸は過去に農薬登録により効果確認済み」であることが、指定された理由となっている。天敵については、使用される場所の周辺で採取されたものなら生態系を乱すことがないが、他の地域で採取したものを利用すると、使用地域の生態系を乱すおそれがあるために「地域を大事にした」からだという。
 今後の特定農薬制度の運用について「答申」は、
1.今回、特定農薬の調査によって短期間に得られた情報は、限られたものであり、各資材の安全性はもとより、効果についても客観的な情報が不足している。
2.このため、今回、多くの資材は農薬とすることを保留することとされたが、今後、効果や安全性について、データ収集等により、順次評価していく必要性がある。
3.農業生産に使用されている農薬的資材を調査し、効果と安全性の評価・確認を行うことにより、食の安全を確保する上で有効な仕組みとする。
としている。農薬対策室では、特定農薬の効果や安全性の評価・確認について、登録農薬ではないので「登録とは違う簡単な方法で行う」考えだ。
 さらに今回「判定保留」とされたものについて、
4.なお、農薬とすることが保留されたものは、薬効を謳って販売されるものは、従来どおり取り締まりの対象とするが、使用者が農薬的に使えると信じて使う場合はこの限りではない。
としている。農薬としての効果を謳って販売すれば新農取法の取締対象だが、生産者が自己責任で使用する場合は取締対象とはしないということだが、そのことによって問題が生じた場合の責任は、使用した人にあるということになる。
 そして、
5.特定農薬に指定される可能性がなく、安全上問題が指摘される資材があれば、農薬としての使用の実態を踏まえ、使用を取り締まるべきである。
と述べている。

◆使用内容の帳簿記載が努力目標に

 新農取法第12条第1項の「農薬を使用する者が遵守すべき規準」については、(1)食用作物や飼料用作物に農薬を使用する場合
 農薬登録に定められた
1.適用作物
2.単位面積当たりの使用量の最高限度又は希釈倍数の最低限度
3.使用時期
4.使用総回数
について、遵守を義務とする。
(2)食用作物に適用のない農薬を食用作物に使用してはならないこととする。とし、これに反した場合は、新農取法の罰則が科せられることになる。
 倉庫・コンテナなどのくん蒸、航空機を利用して農薬を使用する者、ゴルフ場で農薬を使用する者は、使用計画書を農水大臣に提出することが義務づけられ、これに違反した場合も罰則が科せられる。
 また、「社会的には必要ではあっても、技術的な理由などで現在できるレベルではないもの」については「遵守の努力を要請する基準」として「答申」された。その主なものは「容器に表示された最終有効年月を超えて農薬を使用しないよう努める」こと。農薬を使用した年月日、使用した場所、使用した農作物名、使用した農薬の種類又は名称、使用した農薬の単位面積当たり使用量又は希釈倍数を農薬使用者は「帳簿に記載することに努める」などがあげられている。

◆マイナー作物の経過措置は約2年

 マイナー作物の経過措置については、「都道府県知事が、農林水産大臣に対し、経過措置(農薬とその適用作物)を申請し、農林水産大臣の承認を受ける」が、その承認は「その農薬を使用できなければ農業生産の安定に著しく支障を来す場合」であり、「別紙の区分に基づき、申請作物が属する区分に含まれる他の作物で既に使用が認められている農薬であること(登録保留基準があること)」「使用が認められている作物の使用時期、使用濃度の範囲内であること」という条件を満たしている必要があるとされている。
 承認は都道府県単位であるため、同じ作物であっても他県で承認された農薬であっても、自分の県で承認がとれていなければ使えないということになる。
 そして「その農薬が使用された農作物について、必要に応じて農薬の残留度合い等を検査し、都道府県知事は、この確認を行うとともに、出荷先も把握しておく」とされている。
 なお、この経過措置の期間内に、都道府県等は、登録適用拡大に必要な残留データ等の作成の協力に努める」ことになっているが、、経過措置期間後は、前にふれた遵守義務の原則に沿った実施を行わなければならないが、経過措置の期間は農水省では「おおむね2年くらい」と考えている。
 
◆登録保留基準も変更――水田用殺虫剤に影響か
  
 同審議会では、農薬登録の際の水産動植物に対しても急性毒性を評価する登録保留基準の変更についても環境大臣に答申した。
 その主な内容は、生態系への化学物質の影響をチェックするために、現行のコイを使っての毒性試験を行っているが、魚類(メダカまたはコイ)、甲殻類(オオミジンコ)、藻類(緑藻)による急性毒性試験を行うというもので、対象範囲も水田農薬から畑地、果樹をふくめたすべての農薬に拡大される。
 この基準が実施されると保留になる農薬は、農薬工業会が16社について調査したところによると、水田用殺虫剤29剤のうち15剤(52%)、畑地用殺虫剤56剤中4剤(7%)、水田用、畑地用殺菌剤、除草剤では該当なしと、水田用殺虫剤で影響がでることが予測される。
 この基準は、2005年4月1日から適用される。

 



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