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農政.農協ニュース

WTOモダリティ1次案
輸出国に偏重 (2/14)

 WTO(世界貿易機関)農業委員会のハービンソン議長は、2月12日、農業交渉の約束基準であるモダリティ1次案を示した。同案は、大幅な関税削減やミニマム・アクセス米の拡大につながる内容。大島農相は13日の記者会見で1次案について「一部の輸出国の主張に偏重した内容。全体として削減の数字が極めて大きく野心的すぎる内容だ。このまま受諾すれば日本の農業は壊滅的になる」として、「強く修正を求めていく」ことを強調した。
 同案では、関税の削減率について5年間で(1)現行関税が90%以上の農産物は平均60%、最低45%、(2)90%以下15%以上のものは、平均50%、最低35%、(3)15%以下のものは平均40%、最低25%、とすることを提案している。
 米は現在、従量税で1キロ341円(従価税で490%)。この案に従えば、最低削減率を選んだとしても187.55円になる。60%の削減率なら136.4円だ。
 JA全中の試算では、削減率45%の場合、米国産米(うるち精米短粒種)は関税を上乗せしても1キロ296.55円、60%の場合は245.4円となる。また、中国産米(同)では同283.55円と232.4円となる。
 一方、国産米価格は平均で1キロ299円(243円〜490円、15年1月の自主米入札結果)。国産米の平均価格より外国産米の価格が安いばかりか、全国平均の生産費298円(1キロ)をも下回る水準で、日本の米は壊滅的な状態になるといえる大幅な関税削減案だ。
 また、この全中試算の米国、中国産の価格は昨年12月のSBS価格(米国産1キロ109円、中国産同96円)をもとにしたもの。過去のSBS価格では1キロ100円を割っていることもあり、相場によっては関税を上乗せしてもさらに外国産米価格が下がる状況もあるといえる。
 同案の関税削減方式は、平均削減率と最低削減率を示しており、一見、日本やEUが主張しているウルグアイ・ラウンド方式だが、実際には米国やケアンズ諸国が主張している関税の平準化(ハーモナイゼーション)の考え方に立っている。
 というのも、現行関税率の高さで農産物を3つのグループに分けたことから、結局は、高関税品目の大幅削減につながるからだ。
 90%以上の関税を課している品目は、日本は米以外にも小麦(210%)、大麦(190%)、脱脂粉乳(200%)、バター(330%)、でん粉(290%)、落花生(500%)などがある。1次案に従えば、これらの品目群のなかで平均60%の削減率を達成しなければならない。かりに米で最低の削減率を選べば、他の品目の削減率を大きくせざるを得ない。
 高関税にしているのは、食料安保や農業の多面的機能をふまえ日本にとって重要品目だからであり、この方式になれば「重要品目で喧嘩することになる」(JA全中)。
 その意味では、削減率という数字をめぐる議論を今後するのではなく、同案が基本的に農業の多面的機能などへの配慮を欠くという観点から、ルール自体をどうするかをさらに根本的に問わなければ5年後、10年後の世界の農業を考えた議論にはならない。
 ミニマム・アクセスについては、最新の消費量に基準年を見直すという案が示され日本の主張が反映されてはいる。しかし、国内消費量の10%にまで拡大、としており、そうなればMA米は90万トンに拡大する。
 14日からの東京非公式閣僚会合では、15日午前中に農業が議論される。日本は同案の修正を求めて主張する。その後、2月24日からジュネーブで開かれるWTO農業委員会特別会合が本格的な交渉の場となる。「多様な農業の共存」に向けて山場を迎えた。 (2003.2.14)



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