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農政.農協ニュース

第1次案撤回を求めJA全中会長が声明
要請を受け「理解している」と小泉首相 (2/14)

 
WTO交渉日本提案実現 全国農林漁業代表者集会(2月14日・東京・日比谷公会堂で)

 JA全中は2月13日、WTO農業交渉の議長が示した交渉大枠(モダリティ)第1次案について「到底認めることはできない。ただちに撤回されるべきである」との宮田勇会長声明を発表した。
 さらに宮田会長らは官邸で、小泉純一郎首相に「日本提案の実現に向け、内閣が一致して取り組まれるよう」にと要請した。
 第1次案の内容について要請は「関税の大幅削減や輸入数量の大幅拡大、特別セーフガードの廃止などを意図したもの」とし、これらの枠で交渉が進めば「わが国の農業が果たす多面的な機能は崩壊し、国内農業が危機状態になるのは明らか」と強調した。
 そして14日から東京都内で開くWTOミニ閣僚会議では政府として第1次案は「断じて受け入れられない旨を表明」し「日本提案の正当性を十分に主張するよう」要請した。
 これに対して小泉首相は「よく理解している」「日本は輸入国だから」「EU(欧州連合)と協力してやる」などと応えた。また▽作物だけの問題ではない。地域や文化の問題でもある▽このままではアメリカだけが有利になってしまう、などの趣旨も述べた。
 
開会のあいさつをする
JA全中・宮田会長
 農産物の輸入関税について第1次案は、90%を超す農産物の輸入関税を平均60%、最低45%の削減率とするよう求めた。
 もし、これを適用すればアメリカ産のコメ価格(精米短粒種)は60%の場合、キロ約245円(昨年末のSBS入札結果で試算)、中国産は約232円となり、日本の農家の生産費298円(12年産・全国平均)を下回ることになる。
 こうした試算を示しながらJA全中の山田俊男専務は記者会見で、第1次案について関税削減や輸入量拡大などの「数字が余りにも大きい。予想に反して踏み込んだ内容になっている。その背景に何があるのか。ミニ閣僚会議の中で見えてくるのではないか」などと次のように語った。
 この案には、多面的機能など非貿易的関心事項への配慮がどこにもない。EUやCOPA(EUの農業団体連合会)も反対だというからよく連携をとって、やっていきたい。
 
情勢報告をする
JA全中・山田専務
 日本政府としては農水省の対応だけでなく総理もきちんとした姿勢を示すべきだ。すでに国会決議があるが、国民世論が分かれていては効果がない。そのことをよく認識してほしいという訴えをさらに強める。
 90%以上の関税はコメのほかにも麦などの重要品目で多い。(この案を適用した場合)コメの関税率削減を抑えれば、ほかの品目の削減幅を大きくしなければならず、重要品目の中で傷つけあうことになる。
 ミニマムアクセス拡大は10%か8%か見定められないが、10%なら現行の70万トンから90万トンに増えることになる。到底受け入れられない案だ。

◆宮田勇JA全中会長声明

 
集会参加者を激励する外国農業団体

 第一次案は、農産物関税の極端で急進的な削減やミニマム・アクセスの大幅な拡大などを柱としており、農業の多面的機能や食料安全保障を全く無視した到底認めることのできない内容である。
 仮に、この原案がまかり通ることになれば、わが国をはじめ農産物輸入国の農業は、もはや、その存在自体が否定されることになり、国土、自然条件に恵まれたごくわずかな輸出国が「世界の農産物の工場」となって、食料供給は一部の大規模企業的農業者と多国籍企業の支配におかれることは間違いない。
 
代表者集会後、都内をデモする農業者団体
 現在の農産物貿易ルールは、輸出国と輸入国の権利・義務関係に深刻な不均衡を残しているにもかかわらず、第一次案は、輸出規律について、その曖昧さをただすどころか、抜け道を容認し、正当化するような原案となっている。これでは世界145カ国が加盟するWTOが、すべての加盟国にとって平等な信頼に足る国際機関として存続していくことを自ら否定しているとしかいいようがない。 このような提案は「非貿易的関心事項に考慮する」と明確に規定しているドーハ閣僚宣言に明らかに反したものであり、自由化そのものを目的化した極端なモダリティ案と断じざるを得ない。
 このような案は、ただちに撤回されるべきである。我々は、多くの諸国と連携し、今後の交渉を通じて、世界の将来のために農業交渉に参加している国々の真摯な主張を誠実に踏まえた農業モダリティが確立されるよう強く期待する。
 この国の食と農をどうするのか、国民全体で考えていただきたい。(2003.2.14)



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