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農政.農協ニュース

自由貿易神話の歌ではもう踊りたくない
世界の農業団体リーダーたちが記者会見 (2/17)

 
 WTOミニ閣僚会議を前に、世界9カ国・地域の農業者リーダーたちが、公平で公正な農産物貿易ルールを各国政府のWTO交渉関係者に訴えようと東京に集まり、14日は大島理森農相はじめ、カナダの食料農産相と国際貿易相などに会って、非貿易的関心事項と途上国に配慮した現実的でバランスのとれた農業交渉の大枠(モダリティ)確立などを要請。その後、共同記者会見した。
 15日は都内で開いた「WTO国際市民集会」に続いてデモに参加した。
 共同記者会見には12農業団体代表が顔をそろえ、WTO農業交渉議長のモダリティ第一次案に対する反対や異論が続出した。
 EU(欧州連合)農協連合会の副会長は「受け入れがたい」とし、フランス農業青年組織協議会の代表は「悪い方向へいっている」と指摘。また韓国農協中央会会長は「(農産物)輸出国の主張に余りにも重きを置きすぎている。我々は関税の大幅削減に反対しており、断じて受け入れられない」と反対。さらにカナダ農業生産者連盟会長は「ゆがんだことを推し進めようとしている」と批判した。 JA全中の山田俊男専務は、参加した農業団体共通の「工業製品と農産物は区別すべきだ」という認識などを挙げ「いずれの分野からみても(第一次案は)いけない内容だ」とし「さらに国際的な連帯を強めていきたい」と述べた。
 会見は帝国ホテルで行い最初にJA全中の宮田勇会長が「世界の家族農業者の声をミニ閣僚会議に伝えるために、この集まりを開いた」と説明。各国の団体代表からは「全中と協力できることを喜んでいる」「全中が重要な会議を開いてくれたことを感謝する」などの発言もあった。
 外国人記者の質問も多かった。応答も含めた各国団体代表の特徴的な発言は次のとおり。
 フィリピン自作農民連合会常務=フィリピンのような途上国は輸出補助金や国内支持の財源を持っていない。次期ラウンドでは、財源も資源にも乏しい国の農業者を敗者にし犠牲にしてはならない。貿易で全員が恩恵を受ける方法を考えるべきだ。公正なルールなしでは農業が破壊される。
 スリランカ販売協同組合連合会参事=貧困と飢餓に苦しんでいる。前回ラウンドの自由化で輸入が増え、価格が落ち込み、競争できなかった農業者は転職に追い込まれた。このため現実的で柔軟でバランスのとれた貿易ルールを政府とWTOに要求してきた。今後も闘い続ける。
 米国ファーマーズユニオン理事=米国は自由貿易に依存して市場を開放してきたが、このやり方は間違っている。自由貿易神話は歌い尽くされた。農業者は、その歌では、もう踊りたくない。WTOルールによる競争の勝者は多国籍企業であり、敗者は農業者だ。グローバル企業だけが恩恵を受けるルールはいけない。
我々の見解が米国政府と異なっているとの質問を受けたのは光栄だ。自由化は恩恵でなく、呪いをもたらした。農業法はコストの高い法律となった。
 カナダ農業生産者連盟会長=貿易が農業者を犠牲にしてはいけない。自由化のための自由化では農業者の共食いになる。不公平なルールを排除すべきだ。
 同酪農生産者連盟会長=我々は多国籍企業のスケープゴートになってはならない。彼らがシェアを上げるための踏み台となってはならない。
 インドネシア協同組合協議会副会長=コメやサトウキビなどインドネシアの主産品には市場アクセスに特例を認めるべきだ。日本の主張を支持したい。
 韓国農協中央会会長=韓国農業の状況は悪化し農民は負債を抱え、所得安定策はない。その状況は途上国の水準にとどまっている。それが交渉に反映されなくてはいけない。(2003.2.17)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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