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食肉のプロを養成する唯一の学校
全国食肉学校 (3/13)

◆夢を膨らませる一貫した教育
全国食肉学校全景
全国食肉学校全景 サッカーができる広いグランドもある
 食肉業界を目指す人や食肉関連事業で働く人たちが、食肉に関するあらゆる知識と技術を身につけることができる日本で唯一の公的専門学校が(社)全国食肉学校だ。
 同校は、昭和49年9月に、赤城山や利根川など雄大な自然に恵まれ、食肉卸売市場や加工関連企業に隣接する群馬県佐波郡玉村町に、「産学協同による実践教育」と「心豊かな人間形成」をモットーに設立された。すでに1700名余が同校を卒業し、畜産生産者や小売店・量販店、食肉卸業や加工業など、食肉関連産業の担い手として活躍している。
 同校の卒業生で肉牛肥育農家の後継者・内田大樹君(宮崎県・20歳)は「牛については高校で学びましたが、食肉についての知識はまったくありませんでした。ここで牛・豚・鶏肉の処理や商品づくり、調理や流通を学び、将来の夢が膨らみました」という。栃木県の養豚農家の後継者である増渕貴之君(23歳)も「最近は、畜産業を経営するだけではなく、加工品や精肉、惣菜販売といった小売店を経営する一貫経営が活性化していますが、そのためには専門知識が必要です。ここで学ぶ知識や技術は一貫経営に挑戦するという夢の足がかりになる」と同校の教育を積極的に受け止めている。

◆後継者養成の「総合養成科」と営業担当者の実力アップはかる「食肉販売科」

学校の正面玄関
学校の正面玄関 2階3階が寮になっている

 修学コースとしては、内田君や増渕君のような生産農家の後継者や食肉専門店の後継者、食肉産業に就職を希望する新卒者や専門技術・体系的な知識を改めて学ぼうとする人たちを対象とする「総合養成科」(1年間)と、食肉小売店や量販店食肉部門の専門家・MDの養成、営業部門担当者の実力アップのための「食肉販売科」(3・5カ月)の2つがある。
 総合養成科の前期(基礎過程)では、枝肉・部分肉などの食肉処理技術から加工品製造、店舗販売用の精肉加工技術などの基本を実技・演習方式で学ぶと同時に、食肉取り扱い業務関連知識や流通全般についても学習する。
 後期(専門課程)では、教育指定店で店舗販売・加工品製造などの校外実習と校内での食肉販売全般にわたるフォローアップ教育を受けながら、「食肉販売技術士」などの資格試験に挑戦することもできる。また、技能照査に合格すると卒業時に「食肉加工製造技能士補」を取得できる。
 食肉販売科は、食肉の仕入れから販売、プレゼンテーションまでの商品づくりと関連知識、マーケティング、ミートデリカを含む調理などを、短期間で集中的・効率的に学ぶことができるコースだ。
 いずれも基本的に同校の寮に入って学ぶことになるが、寮生活についても「社会人としての一般知識やあいさつの大切さを理解することができた」とか「自分一人で行動するよりも何倍もの成果と経験を生んでくれた」「志を同じくする者同士の交流ができ、全国に情報交換できる友達ができた」と、卒業生には好評で、「心豊かな人間形成」という同校の教育方針が確実に実践されている。
 こうした修学コースのほかに、同校では、食肉関連産業に働く人や管理者が、自己啓発やブラッシュアップに応える1日〜4泊5日の「短期コース講習会」や「セミナー」も開催しており、14年度には15のコースが実施された。

◆基礎から経営管理まで学べる通信教育が好評

講師の話を真剣なまなざしで聞き入るスクーリング受講生たち
講師の話を真剣なまなざしで聞き入るスクーリング受講生たち

 食肉に消費者が求めるものは、BSE(牛海綿状脳症)発生以降、健康で安全かつおいしい食肉といわれているが、必ずしもそのニーズは一様ではなく多様化が進んでいるといえる。そうした多様なニーズに応えるには、食肉販売場面では「対面販売という特性を活用して消費者ニーズに即応した食肉販売を行うことが一層重要な課題」となっている。そのためには「後継者、従業員が食肉の生産から流通、消費にわたる幅広い知識と技術を身につけることが必要」(福岡伊三夫全国食肉事業協同組合連合会長)だが、長期間にわたって学校などで学習することは難しいのが現状だ。
 こうしたニーズに応えて設けられたのが、食肉関連産業で唯一の通信教育「食肉流通業務実践コース」だ。平成11年度から開設されたこの通信教育の内容は6単元に分かれており、その概要を紹介すると以下の通りだ。
【基礎編】 第1単元・食肉概論(食肉の生産・流通、食肉の基礎知識、食肉の栄養・安全性、BSE問題)
【専門編】 第2単元・仕入販売1(取引規格、仕入販売、食肉表示に関する基礎知識)。第3単元・仕入販売2(枝肉・部分肉・商品づくりと原価計算)。第4単元・衛生管理1(食中毒・食品衛生関連法規・施設衛生)。第5単元・衛生管理2(枝肉・部分肉、精肉・惣菜、食品加工・HACCP)。第6単元・経営管理(売場管理、販売計画、マーケティング)。
 この全6単元のテキストでは学べない実践的・専門的な知識・技術を専任講師から直接指導を受けられる4日間のスクーリングも開催される。

◆真剣にそして楽しく実技を習得するスクーリング

スクーリングでの原料処理の実技
スクーリングでの原料処理の実技

 平成14年度の通信教育の受講者は161名だが、業種別に見ると卸売業が全体の約70%を占め、ハムやソーセージなどの加工業と産地の食肉センターや食肉市場関係が各々7.5%と、この3業種で85%以上となっている。年齢別に見ると、20歳代が51%と半分を占め、次いで30歳代が30%強という構成になっている。このうち3月4日〜7日のスクーリングに参加したのは27名だった。
 スクーリングの授業は、部分肉・精肉の商品づくりからソーセージ製造、惣菜の調理までの一連の実技を実際に体験することが中心だが、いまもっとも重視されている衛生管理、受講者がもっとも苦手とする原価計算を部分肉・精肉・加工品の各段階で学習する内容となっている。
 27名の参加者は、講師の話に熱心に聞き入り、さまざまな実技に挑戦していたが、調理実習ではできあがった惣菜などを試食することもあって、実に楽しげに取り組んでいた。
 なお、この通信教育を修了すると、同校がすすめている食肉業界の本格的な資格制度である「食肉販売技術管理士」資格試験のための講習会の学科科目の受講が免除されるという特典もある。 (2003.3.13)



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