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合意の遅れ必至議長案拒否を決議
JAグループのWTO全国集会 (3/18)

 WTO農業交渉の大枠を示すハービンソン議長の2次案が3月18日示された。これに対し「2次案は1次案とほぼ同じ内容だ。認められない」と怒りの声を挙げて19日、東京都内で開いたJAグループの「WTO農業交渉日本提案実現全国代表者集会」は断固拒否を緊急決議した。
 自由化大枠の合意期限は3月末だが、同決議はこのままでは25日からの大詰めの会合が「決裂するのは必至」と指摘した。
 集会では、関税の大幅引き下げやミニマムアクセスの大幅拡大などを提示した1次案の踏襲を、なぜ「2次」案と呼ぶのか、背景を怪しむ発言もあった。
 決議は「決裂」の責任は「輸出国の利益だけに偏重したモダリティ(自由化大枠)を強引に推し進めようとする米国やオーストラリアなどが負うべきである」とした。
 JA全中の宮田勇会長は「日本提案に程遠い」内容だから「もはや3月末の合意にこだわる必要はまったくない」と述べた。
 自民党農林水産物貿易調査会の中川昭一会長(元農相)も、合意を急いで「日本提案を曲げるような生半可な結論を出してはいけない」とあいさつ。
 同党WTO交渉支援議員団の桜井新団長も「期限がいつであれ、いうべきことはいうべし」として、集会での発言は、期限内の歩み寄りは無理であるとの情勢認識を打ち出した。
 対立する日本・欧州勢と米国などの双方が共に1次案受け入れを拒否している局面に、今回のような2次案が出ても妥協の手がかりにはならず、農業交渉の遅れは必至の情勢となった。
 WTO交渉は知的所有権の医薬品問題などでスケジュールの遅れがあり、中でもサービス分野では米国が外国船の国内運航を認めないという自由化逆行で孤立し、またルール分野でも反ダンピング措置の乱発で米国と諸外国の対立がある。 ただ1つ優等生として交渉促進のトップに立たされた農業分野もここにきて他分野なみに遅延となる。
 米国のイラク攻撃が各国政府の喫緊の課題だ。勢い「WTOでの議論はトーンダウンしてくる状況」(中川議員)にもある。
 決議提案ではJA全中の花元克巳副会長が「貿易摩擦を調整するのがWTOの役割だが、現状は調整の基本から逸脱している」と批判。また「水」問題に触れ世界一の食料品輸入国である日本は「世界中から水を輸入していることになる」と自給率向上を強調した。
 決議は政府・国会に「わが国提案の実現に不退転の決意をもって臨むよう」にと求め、今後の展開については宮田会長が「WTO加盟国のうち大半の75カ国が関税の大幅引き下げに反対している」という状況を挙げた。75カ国政府は、関税削減を柔軟に進める「ウルグアイ・ラウンド」方式を支持している。

◆関税率大幅削減なら
  コメも麦も壊滅的
 

WTO農業交渉での日本提案実現へ全国代表者集会の“がんばろう”=東京・平河町の日本海運倶楽部ホール
WTO農業交渉での日本提案実現へ全国代表者集会の“がんばろう”=東京・平河町の日本海運倶楽部ホール

 JA全中と全国農政協が19日開いたWTO対策の全国集会は、この日未明にWTO農業交渉議長の自由化大枠(モダリティ)2次案が出たため、これに対する非難が続出した。
 集会ではJA全中の山田俊男専務が詳しい関係資料の要点を説明した。
 これによると、米国は93年のウルグアイ・ラウンド合意以後、農産物輸出を大きく増やしており、勢い日本や韓国は輸入増大で農産物貿易収支が悪化の一途をたどっている。
 しかし現行の関税率なら90%以上の場合、輸入品価格は国産品を上回る。これが1・2次モダリティ案により平均60%の関税率削減となれば国内農業生産に壊滅的な打撃となる。
 資料は品目別に、コメをはじめ小麦、でん粉、小豆、インゲン豆、こんにゃくイモ、脱脂粉乳、バターなどで国産価格より輸入品の価格が安くなることが懸念されるとしている。

◆WTO農業交渉対策で
  経団連などと意見交換

WTO農業交渉対策で日本経団連の立花常務らと意見交換するJAグループ代表=東京・大手町の経団連会館
WTO農業交渉対策で日本経団連の立花常務らと意見交換するJAグループ代表=東京・大手町の経団連会館

 全国のJA代表らWTO対策の集会参加者約500人は集会後、手分けをして各政党、全国知事・市長・町村会などに日本提案実現を要請した。また各界との連携を強化するため日本経団連、主婦連、全国消団連、日生協、連合を回って、関税の大幅削減などが日本農業に与える打撃や、多様な農業が共存できる貿易ルールの確立などを訴えて意見交換した。
 日本経団連にはJA全中の山田専務らが出向き、日本の食と農をどうするのかという立場からWTO問題を考えていただきたいなどと理解を求めた。
 経団連の立花宏常務は、経団連としても農業問題を検討しているとし「米国は農業法により大変な金額の農業補助金を出している。日本としては、外国から後ろ指を指されないような農業保護のやり方を考えられないのか。それが施策面での農業の構造改革ではないか。構造改革は無用な混乱や摩擦を避けながらやる必要がある」と述べた。
 山田専務が話題にした中国問題では「中国戦略は日本農業にプラスになるように考える。今はG7プラスロシアだが、中国も加える戦略が必要だ」とした。
 また立花常務は、短粒種のコメを食べる東アジア諸国の“コメ同盟”を話題にしたのに対して山田専務は日本提案の中の国際備蓄システムなどを説明した。 (2003.3.25)



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