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経営の健全性を大きくアピール――14年度決算を承認
JA共済連総代会 (7/24)   

 JA共済連(新井昌一会長)は、7月24日に東京・高輪のホテルパシフィック東京で通常総代会を開催し、14年度決算などを承認し、経営の健全性を大きくアピールした。また、経営管理委員2名の退任に伴う補欠選挙を行い児玉靜秋氏(JA共済連広島県本部運営委員会長)と花元克己氏(JA共済連福岡県本部運営委員会長)の両氏を選任した。

◆「しあわせ夢くらぶ」619万件、LA占率ほぼ半分に

第27回全国共済農業協同組合連合会通常総代会
 14年度のJA共済事業は、既報(4月23日)の通り、長期共済新契約30兆2064億円(前年対比100.8%)、年金共済1924億円(同109.1%)短期共済4763億円(同105.3%)と、いずれも前年度を上回り堅調な実績をあげた。
 長期共済はこれで5年連続して事業量目標を達成したわけだが、昨年4月にスタートした「ひと・いえ・くるまの生活総合保障」の確立をめざす「JA共済しあわせ夢くらぶ」の登録件数が619万件に達し、これの訴求効果が新契約の伸長に大きく貢献したといえる。また、LA体制の拡充をはかり、提案・相談型推進を恒常的に進めてきた効果も大きい。長期共済新契約高に占めるLA実績は、毎年伸びてきているが、14年度は49%に達し、15年度では50%を超えることは間違いないところまできている。
 しかし、長期共済の保有契約高は、引き続く満期と解約・失効の増加で、1.2%減少し382兆9000億円となったが、大手生保や簡保に比べればその減少幅は軽微だといえる。

◆逆ざや拡大や巨大災害リスクへの備えは万全

 14年度決算の特徴としては、厳しい経営環境、運用環境が続くなかで、利差損(いわゆる「逆ざや」)の拡大や巨大災害リスクに的確に対応し、経営の健全性の維持・向上と強固な経営基盤を確立するための措置をとっていることだ。
 利差損は年々拡大していきている(14年度は前年より400億円増の5930億円)が、予定利率リスクに備える異常危険準備金の造成を行い、生命総合共済では行政指導上の累積限度額(4500億円)をめざして832億円を積み立て、期末残高を2527億円とした。
 また、建更共済では、巨大地震に対する支払担保力を確保するために、共済事故リスクに備える異常危険準備金の早急な造成が必要となっているが、14年度には行政指導上の積立準備金676億円を上回る858億円を積み立て期末残高は1兆843億円となった。

◆実質純資産28%アップ SM比率は753%に

 ここ数年間で7社が経営破たんするなど、消費者の「生保不信」がひろがるなか、保険業法の改正によって生保会社は予定利率を引き下げることができるようになったが、このことがさらに消費者の生保会社の経営に対する不信感を増幅しているともいえる。こうしたことから、消費者への安心を担保する「経営の健全性」確保が、大きな課題として問われている。
 経営の健全性を判断する指標としては、総資産、ソルベンシー・マージン比率(SM比率)が一般的にはあげられるが、これに基礎利益、実質総資産や解約・失効率などを加えて総合的に判断する必要がある。JA共済と大手生保会社のそれらの指標をまとめたのがである。
 この表をみても分かるように、JA共済事業は保有契約高、基礎利益(表の注1参照)が前年度と比べるとマイナスにはなっているが、その減少率はきわめて軽微だといえる。特に、基礎利益は利差損(逆ざや)を埋め合わせた後の数値であり、これが十分に確保されていれば逆ざやがあったとしてもそれを上回る利益を確保していることになる。JA共済の場合、逆ざやは13年度に比べて約400億円増えているが、これを埋め合わせた後の基礎利益が4640億円もあり、減少率も大手生保と比べてはるかに低く、経営の健全性は十分に保たれているといえる。
 資産面でも、ほとんどの大手生保会社が総資産を減少させているなか、前年度比で4.6%アップし、ついに40兆円を超えたこと。さらに、実質純資産(表の注2参照)が28%も増え7兆3862億円と日本生命上回った。総資産に占める割合も13年度よりも3.3%アップして18%になるなど、資産面からも経営の健全性にはなんら問題がないといえる。経営の健全性を示す指標とされるSM比率も56ポイント上昇し753%となっている。
 総代会後の記者会見で記者団の質問に答え前田千尋理事長は「基礎利益が4640億円あるので、健全な経営ができる」と自信をもって語った。さらに、予定利率引下げについても「経営が健全であることと、契約者との信義信頼からいってもJA共済は予定利率の引き下げは<しない>」と明確に述べた。

◆利用者の信頼勝ち得る積極的な情報開示と提案・相談型推進

 ここ数年業界全体で上昇し続けている解約・失効率は、0.24ポイントアップの4.47%となったが、表をみても分かるように、大手生保の水準からみればかなり低く、契約者のJA共済に対する信頼が依然として高いことを示している。
 この信頼の高さは、これまで見てきたような経営の健全性が十分に確保されていることによることはもちろんだが、保険共済事業の収益源である3利源(費差損益・利差損益・危険差損益)を業界に先駆けて13年度から公表するなど、積極的に情報を開示して経営の透明性を確保して利用者の理解と信頼を促進してきていること。さらに、営農指導や経済事業をベースとするJAの総合事業の一つとして事業展開されていることによる組合員・利用者の信頼感。そして、LAを中心にJA、連合会の役職員が利用者の立場に立って提案・相談型の推進をしてきた結果だといえよう。
 生命保険(共済)市場は「飽和」市場だといわれている。長引く景気の低迷、長期低金利など取巻く環境も厳しく、どちらかといえば市場は縮小傾向にあるともいわれている。そうしたなかでいま熾烈な生き残りをかけた「大競争」が展開されているわけだが、これは例えれば「耐久レース」ともいえるだろう。JA共済事業は、これに耐えうる十分な力をもっていることが、14年度の決算で証明されたといえる。さらに事業基盤を強固なものとしていくために、今年度の事業の伸展はもとより、農協共済審議会の答申を受けて策定される来年度からの「新3か年計画」に大きな関心が寄せられている。 
JA共済と大手生保の14年度事業概要と主要経営指標

(2003.7.29)



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