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日本 関税上限設定に反対
−WTO農業交渉 妥協案づくりに向け協議進む (8/12)

 WTO(世界貿易機関)本部のあるスイス・ジュネーブでは、農業分野で米国とEUの共同ペーパー作成に向けた交渉が行われている。
 8月12日、亀井農相は10日のフィシュラーEU農業委員に続き、ラミーEU貿易担当委員と電話会談した。
 ラミー委員は、共同ペーパーの作成について「数値の議論はせず、単にフレームについて議論しているだけ」と数値を盛り込んだ共同ペーパーづくりは行わないことを表明。そのうえで作業はまだ終了しておらず、共同ペーパーが提案できるかどうか「不確実性が残っている」ことを明らかにした。
 亀井農相は改めて日本の立場を主張。「いかなる関税上限の設定(キャッピング)も反対。米国に対しても強く反対している。このポジションを維持してほしい」と述べ、また、センシティブ品目については関税削減幅を小さくする代わりにアクセス数量を拡大するという考え方は、米のミニマムアクセス拡大につながるとして「一部特定品目では受け入れ困難」と主張した。
 これに対してラミー委員は、議論のもっとも困難な点は米国が固執しているキャッピングの問題であることを明らかにし、日本などフレンズ国の反対が強いことからEUも米国提案には反対していると語った。
 また、アクセス数量の拡大については「日本にとってのセンシティブ品目の立場は理解している」と述べ、日本とEUの戦略的な連携の重要性を強調した。
 
◆日本 米・EUに揺さぶりも

 農水省によるとジュネーブで進んでいる米・EUの共同ペーパー作成の議論には日本も参画。とくに米国に対してキャッピング設定とアクセス数量の拡大が市場アクセス分野の骨格となることに強く反対している。
 ただ、議論には参画するもののモントリオールの非公式閣僚会合で米・EUが共同作業を行うと表明しているため、日本が共同提案国に加わるかたちで示されるものではないとしている。提示された案に合意できるかどうかはその後に検討する。
 今回の共同作業は、市場アクセス分野では米・EUに歩み寄りの余地があることから始まったもの。米国提案のキャッピングについては、米国は100%から200%を想定している。490%の米や210%の小麦など高関税品目が多い日本としては受け入れられない案だ。
 しかし、EUでは200%を超える品目はバナナ、バターなどごくわずか。共同作業では数値の議論はしていないとされているが、米国が想定する200%を念頭に置けばEUは議論の余地があることになる。
 一方、国内支持と輸出補助金分野では両陣営の対立は激しい。
 国内支持で米国はハーモナイゼーションの考え方による大幅な削減を主張。米国にくらべ4倍の国内支持額があるEUとしてはとても飲めない案だ。ただし、日本はすでに米国よりも削減実績がある。
 また、輸出補助金についてもEUは漸進的な削減、米国は即時撤廃を主張し対立。日本はEUと同様の立場だが、現実に日本に輸出補助金はない。
 このため日本としては市場アクセス分野の枠組みづくりで、キャッピング設定やアクセス数量拡大といった方向付けがなされないよう、国内支持と輸出補助金の分野で米・EUに揺さぶりをかけることも交渉戦略となっている。 (2003.8.13)


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