農業協同組合新聞 JACOM
   

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科学的に証明し消費者の信頼を――牛乳でもトレーサビリティシステム
千葉北部酪農農協と日本ミルクコミュニティで (10/29)

◆HACCP手法導入など徹底した品質管理

 BSE発生以来、消費者の「安全・安心」ニーズに応え、食品事故が起こったときにその原因究明が容易にできるような生産・流通履歴情報が追跡できる「トレーサビリティシステム」が必要だといわれている。
 トレーサビリティが難しいとされる牛乳でも、9月20日に「八千代牛乳」ブランドで知られる千葉北部酪農農協(千葉県八千代市、梅原宏保組合長)でスタートした。同農協は生産者54戸と小さな農協だが、東都生協設立(1973年)当初から取引きがあるというように、同生協やちばコープを中心においしさにこだわった75℃15秒の高温短時間殺菌法(一般的には130℃2秒などの超高温短時間殺菌)による牛乳を生産・販売している。
 生協組合員との交流も盛んに行われており、そこでつかんだ消費者の「安全・安心」ニーズに応えるために、1995年に指定配合飼料のコーンをPHFに、97年にPHFのNON-GMO(非遺伝子組み換え)に切り替えた。さらに98年には、牛乳工場がHACCPの認証を取得。2000年には、指定配合飼料原料から遺伝子組み換え作物をすべて排除。さらに、HACCPの手法を取り入れたチェックシートを全生産者に配布し、工程ごとにチェックして作業することを徹底している。

◆すべての生産情報を記録し一括管理

年間3000人が訪れ、消費者との交流は千葉北酪の「得意技」だが、「口で説明するだけでは信頼されない時代になった」
年間3000人が訪れ、消費者との交流は千葉北酪の「得意技」だが、「口で説明するだけでは信頼されない時代になった」

 BSE発生時に「千葉県産」というだけで牛乳の販売が1割ダウンした。消費者と交流し「口で説明するだけでは信頼されない時代、科学的に証明しなければ信頼されない時代になった」と考え、「生産者概況台帳」(生産者プロフィール、牧場敷地見取図、給餌飼料の内容など)、「牛の個体管理台帳」(耳標番号、生年月日、導入日、最終分娩年月日、産次回数など)と、すべての飼料を把握する「飼料管理台帳」の調査・整備を2001年11月から行い、その情報を必要に応じて「パスポート」として発行し配布できる「酪農生産確認システム」を構築した。これを発展させネット上で公開するのが牛乳トレーサビリティシステム「家畜の情報管理システム」で3月28日にビジネスモデルとして特許出願し受理された。
 現在は、量販店などの店頭で販売されている「こだわり」と生協で個配されている「ノンホモビン牛乳」だけだが、ホームページで消費期限を入力すると、充填日・工場受乳日・搾乳日・生産者が検索される。さらに生産者名をクリックすると生産者情報・飼料、乳脂肪分や生菌数など千葉県酪連酪農指導検査センターの検査成績、飼養牛の一覧が表示される。

◆農家を守るのは農協の使命――安売りはしない

 30年間「八千代牛乳」を取り扱っている東都生協は、千葉北酪で取り組んでいる「安全・安心で美味しい牛乳づくりは、東都生協組合員の願いを実現している」ものであり「今回のシステムの開発は、八千代牛乳への安心がよりいっそう深まるもの」と評価している。
 いま量販店の店頭には数多くの牛乳が品揃えされ競争が激しいが「八千代牛乳は安売りしない」。「農家を盛り立て、生産者を守るのが農協の使命だから」だ。そのためには「安売りせずに受け入れてもらう努力は惜しまない」とも。生産者も「牛乳の質を良くするために頑張れば収入があがる」と、台帳の記帳など煩雑な仕事が増えても、意欲的に取り組んでいる。

◆「メグミルク」も製造日付をネットで公開

 牛乳は、食肉や野菜などとは異なり、農家段階では複数の乳牛からの生乳が混ぜられ(合乳)て貯蔵され、それをタンクローリーなどで集乳し、クーラーステーションまたは乳業工場でさらに複数の農家の生乳が合乳されるため、八千代牛乳のように生産から製造・販売まで一貫しているものは別にして、トレーサビリティは難しいといわれる。
 しかし、乳業工場では食品衛生法や厚労省省令などにもとづいて成分・安全面の品質検査が行われている。とくにHACCPを採用している工場(約6割の工場が取得)ではさらに厳しい品質管理がされてロット単位で出荷され、万が一事故が起きたときには速やかに対応できるようになっている。
 農家段階でも、千葉北酪のように一頭ごとの飼養管理を徹底することや、生乳についても一定の分別管理をして乳業工場の管理システムとつなげることは、不可能なことではないだろう。関係者が食品の安全リスクについて共通認識をもち取り組むことがいま大事なのではないだろうか。
 日本ミルクコミュニティ(株)は、「安全な商品を届けることが使命」であると考え、製造過程と出荷の履歴を管理する牛乳トレーサビリティシステムの構築に向けた取り組みを積極的に行ってきているが、その一環として、同社の基幹商品である「メグミルク」の製造日付をホームページで検索できるシステム「けんさく君」を9月30日からスタートした。
 これは製造日に対する問い合わせが多いこともあるが、食品会社として安全・安心・品質管理に積極的に取り組んでいる「企業の姿勢を、情報開示することで形に表す」ためだという。同社では、メグミルクの他にも「全農安心システム」認証牛乳も販売しており、これからもこうした取り組みを強めていくという。 (2003.10.29)


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