農政ニュース／ＪＡＣＯＭ

　食肉に関するあらゆる技術と知識を習得できる日本で唯一の公的専門学校である（社）全国食肉学校（種市一正理事長、多田重喜学校長）が創立30周年を迎え、11月28日、高崎市のホテルメトロポリタンに農水省・各出資者・教育指定店・学生派遣元・校外講師・研修受託企業・関係機関などから70余名が出席して記念式典が開催された。

◆豊かな食生活と食文化の創造者を養成

　全国食肉学校は、昭和48年11月28日に設立され、農林大臣（当時）の認可を受けて49年４月に開校されて以来30年、群馬県佐波郡玉村で、心豊かな人間形成と産学協同による実践教育を教育理念として「わが国の豊かな食生活と食文化の創造者養成」に取り組んできた。
　この間の卒業生は１７７８名、６ヶ月コース通信教育講座受講修了生２２４５名、公開講座参加者はこの５年間だけで約２０００名を超えている。

　最近の10年間を振り返れば、（１）徳育科目の新設による人間教育のいっそうの充実（２）商品づくり、品質衛生管理講座の開設など、より実践的な研修事業の促進（３）通信教育講座の開講とコース拡大による在宅学習システムの充実（４）食肉販売技術管理士に代表される資格認証事業の取り組み（５）地域サテライト講座（平成15年度、全国６会場）開講など、社会の変化と食肉業界の新たなニーズに応えて、校内に留まることなく積極的な事業を展開してきている。

　しかし一方では、少子高齢化の進行による18歳年齢層の大幅な減少、食肉専門小売業の減少と後継者不足、ＢＳＥ発生による消費不振と企業経営の先行き不安、日本経済の低迷などによる基本財産運用益の大幅な縮小など、学校経営はきわめて厳しい環境下にあるといえる。


	パーティ　和やかに歓談する出席者

◆光り輝く“山の分校”でありつづけたい

挨拶をする多田重喜校長

　こうした中で同校は、40周年に向けて、「マーケットイン」と「ＣＳ（顧客満足）」を基本とした中期３カ年計画を15年度から実行している。それは、学校教育コース、研修・セミナーコース、通信教育講座、資格認証事業の４つを教育事業の基本戦略とするとともに、学校経営については「経営の自立」を確立するために、収入源の拡大と経営コストの削減に努め、より効率的な学校運営と柔軟な労務管理システムを構築していくという内容になっている。
　多田校長は式典の挨拶で「私たちは、この北関東の地にあって、小さな“山の分校”であっても、光り輝く“山の分校”でありたいと思います。そして、多くの卒業生・修了生に向かった光りつづける小さな星になる努力を続けてまいります」と語った。さらに、北斗星（北辰）が旧制高校の寮歌に謳われ校章にも使われていたことを例にあげながら「私たちも、いつかは社会の皆さまから“食肉業界の小さな北斗星”と評価される学校づくりをめざし、奮闘いたします」と、その決意を熱く語った。

◆食肉業界の核となる卒業生たち

本川食肉鶏卵課長　
祝辞を述べる本川一善農水省食肉鶏卵課長

　本川一善農水省畜産部食肉鶏卵課長は祝辞のなかで、ＢＳＥに関わる食肉処理の方法を確定するときに、同校が大きな貢献をした事例をあげながら、卒業生・修了生が「それぞれの地域・職場で食肉産業の基盤をつくり、その核となって活躍して」欲しいし、「食肉学校については、私どもは精一杯の支援をしていきたと考えている」と語った。
　式典終了後、祝賀パーティに移り、70余名の出席者はこれからの同校のさらなる発展に期待しながら和やかに歓談し散会した。
　

◆種市　一正　理事長　挨拶（要旨）
　本校は、全国唯一の公益法人経営の食肉技能・技術を養成する学校として、食肉業界の発展の一助になるように設立、運営されてきました。本校が本日無事30周年を迎えられたのも、ここにお集まりの皆様や関係者の皆様のおかげによるものと厚くお礼申し上げます。
　さて、本校もここまで、決して平坦な道のりばかりでなく、最近ではＢＳＥの発生など食肉業界も激震に見まわれましたが、何とか皆様のご協力により、この間も人材を育み、無事送り出すことができました。この30年間に送りだした１７７８名の卒業生に加え、研修会ならびに通信教育講座の受講修了生たちは、全国各地域、各方面で活躍しており、食肉業界にとってもかけがえのない大きな財産となっているところでございます。
　今後も本校の教育理念である「産学協同による実践教育」と「心豊な人間形成」を大切にし、皆様のご協力のもと役職員一丸となって運営してまいりますので、一層のご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

（２００３．１２．１）