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決意堅く方針「実践」へコメ改革などを特別決議
第23回JA全国大会 (10/10)

 JAグループは今後3年間の活動方針を決める第23回JA全国大会を10月10日、東京・渋谷のNHKホールにJA代表約3500人が集まって開き、「『農』と『共生』の世紀づくりをめざして」JA改革を断行することを掲げた大会議案とコメ改革、WTOとFTA(自由貿易協定)、経済事業改革に関する3つの特別決議を採択した。今大会は特に方針の「実践」を強調し、大会の前日には決議実践交流集会を開き、地域農業振興とJA改革推進という2つのテーマで計約1000人が経験を交流。決議の具体化を話し合った。


改革のためにはJAのイメージ一新を!!
全国大会の様子
 大会ではJA全中の宮田勇会長が主催者あいさつで「食の安全・安心のために組合員が生産履歴の記帳運動を実行し、またJAが地域農業振興の司令塔として役割を発揮すること」などを呼びかけ、さらに▽JA経営の健全化と経済事業改革の推進▽地域社会に貢献する協同活動の強化などを挙げ「これらを実践するにはJA役職員の意識改革が不可欠」とし、JA改革断行への決意を示した。
 来賓あいさつでは日本生活協同組合連合会の小倉修悟会長が「食品表示などでJAの現場でも不祥事が起きたが、こうしたことを2度とくり返さないためJAグループは記帳運動をはじめとする食品安全の体制づくりに取り組んでおり、生協は、その成果に大いに期待している」と励ました。
 また全中が招いた韓国農協中央会の鄭大根(チョンデグン)会長は「韓国と日本の農協はWTO農業交渉対策でも緊密に連携してきた。両国の農業は家族農業が多い。今後はJAがアジアの農業のためにも重要な役割を担っていくようにがんばってほしい」とエールを贈った。
 次いで全中の山田俊男専務が議案を提案。(1)安全・安心な農産物の提供と地域農業の振興(2)組合員の負託に応える経済事業改革(3)経営の健全性・高度化(4)協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化、という4本柱を説明した。
 意見表明では新潟・JA越後さんとうの関譽隆組合長が「すぐやる、必ずやる、できるまでやる、を合言葉にJA改革に取り組んでおり、『JAがあってよかった』という組合を目ざしている」と語った。
 また福岡・JAくるめの今村信義組合長は「改革なくして存続なしの自覚をもって改革を断行するため、プロジェクトを設置して取り組んでおり、立派な改革案ができることを期待している」と報告。
大会記念イベントで歌う森山良子さん
大会記念イベントで歌う
森山良子さん
 さらに、JA全国女性組織協議会の峰島歌子会長は「JA運営の中に女性参画が位置づけられたことを評価したい。改革のためにはJAのイメージ一新も必要だ。男性も女性も一緒になって改革を断行しよう」と決意を述べた。
 続いて特別決議を提案し、大会議案と共に採択した。
 なお大会では国際協同組合同盟のイバノ・バルベリーニ会長からビデオで贈られたメッセージも紹介。
 その中で同会長は市場と競争の原理を指摘。多国籍レベルで活動する強大な組織は我々の脅威だが「打ち負かせない相手ではない」として「協同組合には多国籍企業に真似のできない強みがある。それは住民との強い結びつきをもとに、それぞれの地域社会における質の高い生活や、消費者の本当のニーズに合った農畜産物を提供できることだ」と激励した。

「農業を守って改革」小泉首相あいさつ
小泉首相と、森山さん

 大会記念イベントの森山良子さんのコンサートが終演を迎えた午後5時半ごろ小泉純一郎首相が会場に駆けつけた。この日は衆議院解散、総選挙となったため自民党総裁として全国のJA代表たちにあいさつする機会を逃したくなかったようだ。
 ちょうど小学唱歌の「故郷」が歌われている最中に舞台に立った首相は、森山さんから渡されたマイクを握り「こころざしを果たして、いつの日か帰らん」と歌って得意のパフォーマンスを披露し、ニコニコ顔。 歌のあと本題に入り「農業は国民に食料を供給する基幹的な産業だ。選挙のあと安定した勢力で農業を守りながら(構造)改革を進めたい」などと述べた。

特別決議の要旨

 3つの特別決議の要旨は次の通り。

★「米政策改革とJAグループ米改革戦略の実践」
 (1)地域水田農業ビジョンのもとで水田営農実践組合が核となって、売れる米づくりに向けた計画生産、麦・大豆・飼料作物の生産振興、集落営農を含めた担い手の確保など、水田農業の構造改革を実践する。
 (2)『販売可能な量だけ作る』という事業方式の確立、『JA米』の生産と販売、コスト削減などの米事業改革を推進する。
 (3)『新たな経営所得安定対策』など万全の施策を盛り込んだ食料・農業・農村基本計画を確立する。
 (4)JAグループは15年産米の集荷を強化し、できる限り早く新米が安定して消費者に届くように組織の全力をあげて取り組む。

★「WTO農業交渉および自由貿易協定(FTA)」
 (1)『世界の多様な農業の共存』を図るため『非貿易的関心事項』への配慮を農産物貿易のルールとして具体的に実現する。
 (2)食料、農業、農村に関する国民の合意形成に取り組み、国内および国際的な協力体制を構築する。
 (3)メキシコとのFTAは我が国の食と農の安全・安心の確保の観点から必要な例外措置を実現する。

★「経済事業改革の実践」
 (1)国産農産物の信頼性向上を目ざし『生産者と消費者の接近』のための販売事業戦略を見直す。
 (2)組合員に最大の満足を提供するため経済事業方式を抜本的に見直す。
 (3)経済事業の収支確立をはじめとする抜本的な経営収支改善に加え、業務執行体制の強化、役職員の意識改革などによりJA経営の健全化を実現する。

農の力は女性からフォーラムで議論

大会後の記念フォーラム。NHKで放映される予定
大会後の記念フォーラム。NHKで放映される予定
 大会後の「農の価値、農の力〜新時代の日本農業をどう築くか」をテーマにした記念フォーラムでは、中村靖彦明治大学客員教授が「農業・農村は命の大切さを覚える舞台だ」と提起。それを受けて石田正人JA北信州みゆき(長野)組合長は、農の価値を宝物とし「それを消費者と共に磨き上げていきたい」とした。 また今村奈良臣東大名誉教授は「農業は生命総合産業だ。教育などにもわたる多様な価値を持つ」と持論を展開。さらに直木賞作家の村山由佳さんは「人間は多くの動物を犠牲にして生きている。謙虚でなければならない」と指摘し、木村尚三郎東大名誉教授は食物と命の連鎖を説いた。
 木村さんは、さらに農村にこそ文化があり、アメリカ型のモノを作る農業よりもヨーロッパ型の土を愛する農業を重視すべきではないか、と提起した。
 農の力については石田さんがJAに力をつけるのは女性。このため女性大学を開設し、また人材を育てるために次世代向けのアグリスクールを開いていると報告。今村さんは農業ほど人材を必要としている産業はないと強調した。
 農村への回帰について木村さんは地産地消はグリーンツーリズムと結びつくとし、石田さんは「農村から外へ働きに出ていくのはよいが、また戻ってきてほしいから飯山市は100万人回帰運動に真っ先に手を挙げた」などと語った。
 さらに村山さんは新規就農について「農地をもっと買いやすくし、その後で土地転がしなどを厳しく監視する制度に改めたほうが良いのではないか」とし、木村さんは「農業がなくなったら工業もなくなる。私としてはグローバリズムよ、さようなら、ローカルよ今日はといいたい」と新時代の農業を語った。

大会前日に「実践」交流集会 コメの「売り方」などを議論
−地域農業振興実践集会

 JA全国大会前日に都内で開いた地域農業振興実践集会には、約500人が参加。JA全中の花元克巳副会長は水田農業ビジョンづくりについて「いかに内容の良いものを作っていくかが課題」とし、水田営農実践組合を核とした担い手づくりでは「農業者個々の技術と勤勉は世界一。これからは、これを基盤に集落が1つになっていくことが大事。JAが集落の中に入ってコンサルタント活動を強化していくことが期待される」とあいさつした。
 中村祐三常務の情勢報告の後、今村奈良臣東大名誉教授は問題提起で「23回大会決議の内容が3年後にどう実現されるか、次の24回大会が非常に重要な大会となる」と今後の『3年間』が持つ意味を指摘した。
 同氏は「集落営農の法人化を進めてほしい。法人は『農家』とは決定的に異なる。経営所得安定対策の本格的実施を要求するならば経営収支の公開をしなければ、大多数の納税者は反対するだろう。青色申告は公開しなくてもよいが、法人は必要な場合、公開を求められる。また農家には倒産はないが、法人にはある」と『経営』視点を説いた。
 さらに地域水田農業ビジョン策定では作物の「売り方を考えること」と力説し、果物の場合、品質では糖度ばかりを追求しているが、糖尿病の患者と予備軍が1600万人もいる時代に、例えば酸っぱいミカンの加工品を製造してもよいではないかなどと提起した。
 集会は、このあと(1)安全安心な農畜産物の提供(2)マーケティングに基づく地域農業の活性化(3)米改革戦略の実践による水田農業の構造改革と米事業改革、の3分科会で議論を深めた。
 米改革ではJA越後さんとう(新潟県)などの事例報告があった。JA筑前あさくら(福岡県)の場合は米20万俵を集荷しているがうち2割近くが業者からは米でなく単なる農産物扱いされている、と報告した。
 しかし生産者は米として売れると思い込んでいるというギャップがあるため、生産者も勉強をし自ら「私の米は、どの店で売られている」といった宣伝を周りでするなど営業活動に乗り出すべきだと提起した。
 意見交換では「米も他の農産物と同じ商品になったといわれるが、米は命の糧ではないか。ここの基本を押さえた議論が必要」との強調があった。
 またビジョン策定では市町村に温度差があり、JAとして対応に悩むとの声も出た。さらに市町村合併で農業支援予算がトータルとして削られるという小泉流改革が地域農業に響いてくる問題も飛び出した。

物流改革テーマに生産資材価格の引き下げを議論
JA改革推進実践集会

 東京・虎ノ門パストラルで開かれたJA改革推進実践集会には予定を超える約620名の関係者が出席者した。
 分科会は「消費者接近のための販売事業の改革」、「生活関係事業の見直し・事業方式の確立」、「経済事業改革を確実に実践するための仕組み」など8分科会を開催した。
 このうち「生産者に実感される生産資材価格の引き下げ」をテーマにした第2分科会では、物流改革を起点とした経済事業改革が議論された。

JAと全農で進める物流改革

 生産資材価格の引き下げの方向について、JA全農では(1)低コスト商品の普及拡大、(2)品目・地域を絞り込んだ仕入れ価格交渉やJA段階での柔軟な手数料設定など購買・供給方式の改善のほか、(3)広域農家配送拠点を整備し物流合理化によるコスト削減も柱のひとつに掲げている。
 経済事業改革中央本部委員会のこれまでの議論でも物流改革がなければ構造的な赤字体質が転換できないという認識のもと、現在、供給高に占める物流コスト比率21%(平均)を5〜6%引き下げることを目標とするなどの議論が行われている。
 同分科会でも、物流改革を生産資材引き下げの“突破口”にする観点から、栃木県JAはが野と全農栃木県本部の実践事例が紹介された。
 この事例の物流改革のポイントは、全農が設置・運営する配送拠点から全農在庫によって集中的に戸配送を行うというもの。受発注や代金決済はJA、配送は全農県本部という機能分担だ。これにより物流コスト比率を9.5%から7.9%に引き下げるという。
 また、組合員とのコミュニケーションの強化のため8名の営農経済渉外員を配置。特徴は、生産資材の販売推進員ではなく、経営コンサルティングや個別提案型の指導購買普及活動、後継者育成などとし、あくまでも農家の営農支援としたことにあると報告した。
 一方、価格決定については全農への不満、不信をパートナーシップで乗り越えるためJAと全農県本部との「共同協議方式」を導入した。市場実勢に基づく価格決定が求められているが、JAはが野の杉山参事は「JA職員もただ単に高いという意識しかもっておらず、系統の努力をみていない」と指摘、JA職員も市場実勢を調査、ホームセンターなど低価格品の品目特性も検証し、価格を協議することとした。
 杉山参事は「物流改革の持つさまざまな経済事業改革への波及効果は大きい」としながらも、「改革のシナリオを描くこと、また、JAと全農県本部が目標を共有化することが大切」と指摘した。
 参加者との議論では、全農もJAと一緒になって現場を確認するなかで新たな機能分担を考えていくべきとの意見や、改革によって組合員の利用率を向上させることが課題との声もあった。また、物流改革の必要性は理解できるが、一方で全農には仕入れ段階での引き下げ努力が求められるとの意見もあった。

(2003.10.20)

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