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環境創造型農業の実現を宣言 −JA山武郡市が地域農業振興計画  (11/29)

 千葉県のJA山武郡市は11月29日、東金文化会館で同JAが策定した農業振興計画を関係者に発表するイベント「農でつなぐ、いのちと未来」を開いた。
 このイベントは、行政や生協、流通業者などの関係者に同JAがめざす今後の地域農業の姿を知ってもらうと同時に、組合員自らも認識を深めようというのが狙い。企画運営に、青年部、女性部や生産部会も加わり、会場には数多くの生産者が参加した。

■売れる農業から値打ちのある農業へ

中嶋紀一 茨城大学教授
中嶋紀一 茨城大学教授

 同JAの農業振興計画の合い言葉は「安全・安心な農産物は山武の大地から」。茨城大学の中嶋紀一教授や農林中金総研の根岸久子副主任研究員らが外部委員として調査、アドバイスなどをしたが、計画そのものは中堅、若手職員が中心となって策定した。
 計画の柱となるのは2つの宣言だ。ひとつは「環境創造型農業宣言」。この宣言は産地としてのポリシーを示したもので、産地間競争が激しくなっているなか、単に安全な農産物を生産者するだけは生き残れないと「産地の自然環境や作物の作り方そのものをアピールする」農業への転換を図ろうというもの。
 具体的には農薬や化学肥料の使用量の削減のほか、耕畜連携の促進による地域循環型農業、地域の生活者との地産地消、自給への取り組みなど10か条を掲げている。
 中嶋紀一教授は、当日の基調提言のなかでこの宣言について「地域農業の方向転換を示したもの。それは売れる農業、儲かる農業から“値打ちのある農業”へという考え方。この地域の自然を生かし自然を育てる農業ということでもある」などと語った。

  ■農のある暮らしやすい地域

 もうひとつの宣言が「農のある地域づくり宣言」。これは農業者と非農業者が一体となって地域の農業と暮らしを守り発展させる活動に取り組むことを宣言したものだ。
 直売所の運営や、学校給食への供給、食文化の継承に取り組むほか、農業にさまざまな形で携わる人材の掘り起こし活動、ミニグリーンツーリズム活動など6か条を掲げている。
 中嶋教授は、これらの宣言の実現を通じて都市の人々の支持を形成していってほしいと期待を込めた。
 当日は、歌手の加藤登紀子さんが「今、農に想うこと」と題して記念講演。農業を通すと今の日本社会の重大な危機が見えてくると語り、循環型農業の実現などに「地域、地域で取り組み次第に日本を変えていってほしい。農業はこれからのキーワード」などと会場に集まった生産者にエールを贈った。

■組合員、職員でイベント盛り上げ

中川坦 農水省消費・安全局長
中川坦 農水省消費・安全局長

 来賓には堂元千葉県知事(代理出席)、東金市長のほか、農水省の中川坦消費・安全局長も出席、「地域での議論を積み上げて地域農業の将来を描いた」と評価し「JAは地域の司令塔であるべき。全国に先駆けるこの計画をぜひ実現してほしい」と期待を寄せた。
 当日の司会は生産者組織の代表者が務めたほか最後に入組1年めのJA職員が壇上でそれぞれ宣言を行ったり、黒潮太鼓の披露なども行われるなど、組合員、職員の手で会を盛り上げた。 今後の同JAの取り組みが期待される。 (2003.12.10)



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