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WTO交渉 合意に向け双方が努力
ゼーリック米通商代表と亀井農相が会談−BSE問題は進展なし (2/11)

 来日した米国の通商代表部(USTR)のゼーリック代表は2月11日、亀井農相と農水省で会談した。
 ゼーリック代表は、「牛肉貿易は日米双方にとって重要な問題。貿易再開について協力して話し合っていきたい」と亀井農相に述べたが、早期に貿易再開するよう具体的な要請はなかった。また、検査体制や特定危険部位の除去などについては「ステップ・バイ・ステップで進めていくことが重要」と語り、安全確保対策は段階的に進めていく考えを示した。そのほかWTO交渉の年内合意に向けて努力することを表明した。

■日本、全頭検査要求

 BSE対策についてのゼーリック代表の説明に対し亀井農相は、「消費者の安全・安心の確保を第一に考える必要がある」と答え、日本向けの牛肉については、全頭検査と特定危険部位(SRM)の除去が基本であり「消費者からも要請を受けている」と主張。また、BSE調査を打ち切ったことについて「まだ問題が残っているのではないか」と指摘した。
 ただ、議論の応酬はなく互いの立場を述べたにとどまった。

■上限関税の設定に反対

 今回の会談の中心はWTO交渉。ゼーリック代表は1月に各国政府に書簡を送りそのなかで「本年を失われた年にしない」と表明しており、会談でも早期合意に向けて努力すると語った。
 亀井農相は、それぞれの国にセンシティビティ(重要な品目)があり、合意をまとめるには柔軟性が必要だと指摘し、さらにわが国の立場として「上限関税(を設定するという案)が問題。その是正が不可欠」と主張した。
 これに対しゼーリック代表は「センシティビティについては一般論として理解できる」としながらも「(デルベス議長案の関税削減方式の)ブレンド方式(一律削減方式とウルグアイ・ラウンド方式の組み合わせ)では市場アクセスが改善できるかどうか懸念している国も多い。リクエスト・オファー(関心国からの要請による市場アクセス改善)を含めた上限関税の設定は必要」と主張した。リクエスト・オファー方式を入れることによって柔軟性は確保されているとの考えを示した。

■米、輸出補助金で立場変える

 また、「輸出補助金の撤廃が必要」との考えを明らかにし、日本の主張と同じだとして日米が協力できることを指摘した。これまで米国はEUと連携するため輸出補助金については途上国向けの一部品目は廃止するものの、その他は削減という主張だったが、今回、態度を変えたことになる。
 しかし、亀井農相は「上限関税の設定が非常に問題」と市場アクセス分野の重要性を再び強調、「日本は世界一の食料輸入国。自給率について国民の関心も高い」、「市場(ミニマム)アクセスは5%が一般ルールだが、5%を超えて輸入されているものもある。センシティブ品目については限界」と米のミニマム・アクセスの問題点も含め、重要品目の市場開放はこれ以上困難であるとの認識を示した。
 ゼーリック代表は「この問題については十分議論する必要がある」と述べ、日米間で意見は異なるところもあるが「WTO交渉を進めるため、今後も対話を継続していこう」と話し双方で交渉進展に向け努力することで合意した。
 今回のWTO交渉は年末が交渉期限となっている。米国は大統領選を控えており早期に合意をまとめたい意向がある。また、EUも今年5月には加盟国が25か国に拡大するため合意を急ぎたい事情がある。
 合意までには、農業以外にも昨年のカンクン閣僚会議決裂の直接の原因となった「投資」など新分野の扱いもあり、農業分野では途上国対応も課題だ。ただ、合意に向けて早期に動きがあるとの見方も農水省内には出ている。 (2004.2.12)



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