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4年目を迎えるJAタウン 新たにお米頒布会など展開
今後は店舗数、会員拡大が課題 (10/18)

 JA全農はインターネット上で電子商取引を行う電子商店街・JAタウンを13年10月に立ち上げ、10月で4年目を迎えた。JAタウンがめざすのは、(1)JAグループの農産物を産地から全国の消費者に直接提供、(2)消費者との双方向の情報交換を通じ、消費者のニーズを反映した商品の開発・販売、(3)JAタウンに届く消費者の声を生かした他の販売チャンネルの強化・活性化が主なもの。10月で4年目を迎えたJAタウンの現状と、今後の事業展開を探る。

JAタウンのしくみ

■JAタウンに結集し、JAグループの活性化を

 JAタウンの売上額は、15年度8800万円(前年度比195%)だった。今年度は9月までの上期で6600万円で、前年比215%の実績となった。また、出店数も増え、10月現在で50店舗となった。現在幾つかのJAが出店を検討しており、17年3月末までに60店舗以上になる見込だ。会員は約8万人となり、そのうち4万4000人に週2回メールマガジンを送り、情報提供している。
 JAタウンを運営するJA全農事業改革・システム推進部(神出元一部長)JAタウングループは、全国で年に数回出店説明会を開き、個々のJAや県域に出店を促している。毎回、10ヵ所程度のJAや県域が集まるが、全体に出店への関心はあまり高くないのが現状だ。グループリーダーの赤羽修氏は、「商店街には賑わいが必要です。JAタウンに行けば、全国の農産物がほとんど手に入ると言っていただけるようになるのが目標です」と語る。また、「JAタウンは、JAグループの中で機能を効率的に分担する仕組みになっています。JAタウングループは商店街を運営し、(1)消費者からの受注と店舗への発注、(2)宅配業者への連絡、運賃支払、(3)消費者からの代金回収など、を行う。店舗は、出店商品の企画、商品情報の作成、商品の荷造り・発送等の業務に集中することができます」と、JAタウンに出店することの有利さを説明する。

■消費者との距離を縮める努力を

 JAタウングループは、インターネットに関して、利用人口の急速な伸び(15年度末7730万人・総務省調べ)や、視聴時間がテレビに迫る勢いであることなどから、今後、生活の中に今以上に根を下ろしていくものと見ている。それに伴い、電子商取引も "特別"な取引ではなくなるのでは、と考えている。
 そのような認識の中で、今後重点的に取り組む課題として、(1)会員拡大、(2)魅力ある商品の提供、(3)営業力の強化、の3点を挙げている。特に魅力ある商品の提供では、各地方の定番商品、旬の商品、栽培方法や製造方法等に特色があるこだわり商品など、JAグループの特色を活かした品揃えに努め、消費者に選ぶ楽しさを提供することでより多くの顧客の獲得をめざす。
 営業力強化に関して、事業改革・システム推進部次長の小原良教氏は、「電子商店街は、商品を画面に載せれば自然に売れていく自動販売機ではありません。料理をしたときや食べるときのイメージが伝わる写真や商品説明の掲載、産地からの生き生きとした情報の提供など、電子商取引ならではの接客努力が必要です。これをきちんとやることが、成功の近道だと思います」と語る。
 また、お試し商品、プレゼント企画による各店舗のファンづくりを進めると同時に、掲示板を利用して消費者とコミュニケーションを図り、顧客ニーズを的確に捉えることが求められている。

■インターネットを通じ全国的なヒット商品に

 JAタウン3年間の実績の中で、成功事例もいくつか生まれている。
 JA庄内たがわ(山形県)は、当初JAのホームページの中に通信販売コーナーを設け、農産物等の販売を行っていた。しかし、知名度の低さによるアクセス数の少なさや、代金回収、債権管理等の課題があり、単独でのネット販売に困難さを感じていた。そのような時、JAタウンの存在を知り、出店することを決意した。出店に際し、理事や消費者で構成される「商品開発委員会」と職員で構成される「JAタウンプロジェクト」で、売れる商品の開発に取り組んだ。その結果、管内では少量しか生産されず規格から外れた『極太アスパラガス』を対象商品として、売り出すことにした。極太アスパラガスは、見かけと違って柔らかく甘いことは知られていたが、「規格に合わない」「数量がそろわない」などの理由で、それまでは出荷することができなかった。しかし、ネット販売の特性を活かし、数量限定販売を行ったところ、JAタウン内で月間販売ランキング1位を獲得する人気を得て、今ではJAタウン内の人気商品の一つとなった。
 また、全農神奈川県本部の店舗では、今年度からJAいせはら特産のブドウと梨を販売し、好調な売上をあげている。同JAは市場出荷はなく、すべて直売で売り切る都市近郊型の産地であるが、高齢化が進み、直売所販売は若い人の負担が重くなり、地域に根付いた直売だけでは、農業振興、経営の拡大に限界があると感じていた。関係者は、JAタウン参加により、産直型販売でこうした限界を打ち破るという所期の狙いはクリアできたのではないかと評価している。
 JAタウングループリーダーの赤羽修氏は、「JAタウンに出店することで、JAグループが持っている安全・安心のイメージを生かして、インターネット上で直売所が設置できる。全国の消費者を対象に、大消費地から離れた地域の産物でもヒット商品になる可能性が出てくる」と語る。

■お米頒布会とねっとdeギフトを展開

 4年目を迎えたJAタウンの新たな取り組みとして、(1)お米頒布会、(2)ねっとdeギフトの2企画がスタートする。
 お米頒布会は、全国各地のお米を揃え、1回の注文で1年間毎月決まった日にお米を届けるもの。お米のプロが選んだお勧め銘柄を届ける『おすすめコース』、全農安心システム米などを届ける『こだわりコース』、月毎に約20銘柄のお米から選べる『わたし好みコース』の3コースが用意されている。利用者はネット上でコースを選び申し込むだけで、毎月お気に入りのお米を手にすることができる。
 お米頒布会は、まず全農パールライス東日本(株)、全農パールライス西日本(株)が出店して運営する。当面は米で実施するが、将来は果物や野菜なども視野に入れており、今後の展開が期待される。
 ねっとdeギフトはカタログギフトのホームページ版で、贈り主が予算に合った商品を選び、届け先(商品を受け取る側)がホームページ上から気に入った商品を選ぶシステム。贈り主の予算に合ったオリジナルのギフトカタログをネット上で作ることができる。
 すでに、JA共済連主催の「はじめましてキャンペーン」で利用されており、それを拡大する形で新たな事業としたもの。
 今後は、2つの新規事業を本格化させ、新たな顧客の獲得につなげるとともに、JAタウンの賑わいを出すため、多くの出店者を集めることが課題となる。出店説明会などを通じて出店を促したり、新商品開発を牽引力に、会員の拡大をめざす。
 現在、ゆず加工品で有名なJA馬路村(高知県)が、JAタウンへの出店準備を進めている。JA馬路村は消費者に直接販売する方法を探り、昭和55年に百貨店の物産展に特産品の"ゆず"を出品した。その後、夏のゆずドリンク、秋冬のポン酢しょうゆを主力に、消費者へのダイレクトマーケティングを徹底して行い、年々売上を伸ばし15年度は約30億円に達している。

お米頒布会
(2004.10.18)


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