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リレーションシップバンキングを議論
協同金融の社会的役割めぐってシンポ (3/6)

協同金融研究会の10周年記念シンポジウム(3月6日、東京・日本大学経済学部講堂)

協同金融研究会の10周年記念シンポジウム(3月6日、東京・日本大学経済学部講堂)

◆優位性はどこに

 不良債権処理の加速化などから中小企業に対する銀行の貸し渋り・貸しはがしが続く一方で個人向け小口融資(リテール)競争が激しい。そうした中で信金・信組・農協・労金などの協同組織金融機関は、どのように社会的役割を発揮すべきか。そんな課題を挙げて協同金融研究会(代表=安田原三・日大名誉教授)は「地域との共生を目ざして−市場万能主義に対抗する協同金融の理想像−」をテーマに3月6日、都内でシンポジウムを開いた。
 シンポでは、経営手腕や事業の将来性など顧客情報の蓄積を基に、融資などの金融サービスを提供するリレーションシップバンキングの強化問題が1つの焦点になり▽強化によって農協は貯貸率を高められるのか▽組合員とのコミュニケーション、接触頻度が課題▽大手銀行は統廃合に忙しく、強化している暇がない▽中小企業は強化を求めている▽強化によって協同金融の優位性を求めることができる、などの議論があった。

◆人間性を見て融資

 パネルディスカッションではJAはだの(神奈川)の松下雅雄組合長が接触頻度について▽JA職員は毎月、組合員を訪問▽また大口貯金者は役員が年2回訪問▽市民バンク、生活バンクという考え方で渉外活動をしており▽(員外との関係では)組合員増加運動をしている、などと語った。
 東京中小企業家同友会の三宅一男副代表理事は、金融庁の「リレーションシップバンキング機能強化プログラム」が協同金融と、ほかの金融を同列に扱っていることに対し、同庁との交渉で批判した、と報告。また借り手の人間性を見て貸すといってもリスクはつきものだから、保証協会のほかに、協同金融のリスクを回避する相互保険ができないものか、と提起した。

◆「横のつながり」提唱

 巣鴨信用金庫(東京)の萩原道義常務は▽すでに借り手の人間性などを見て融資しているが、さらに審査基準を上げ、客を見る目のレベルアップを図る▽午後7時まで、どんな用件にも対応できるサービスデスクを設けている▽担当職員は土日曜日もいとわず借り手企業を訪問して報告を出してくる、などと語った。
 一方「労働金庫の分野から見ても都銀の住宅ローン攻勢は激烈だ」「労働金庫は2年前からNPO法人への融資を始めた」などの報告もあった。
 また「協同金融には横のつながりがない。今こそ共通の利益を検討してはどうか。共通のファンドをつくるといったことも考えられる」との提起があった。

◆地域金融の支えを

 基調講演では駒沢大学の斎藤正教授が「地域活性化に果たす協同組織金融機関の責務」と題して「大手銀行の中小企業向け貸出モデルは、アメリカンスタンダードで株主資本利益率(ROE)などの世界だ。協同組織は協同金融スタンダードを考えるべきで、その確立が地域金融基盤を支えることになる」と提起した。
 なお同研究会は協同組織金融機関の役職員・OBや学者らが中心。設立10周年記念としてシンポジウムを開いた。 (2004.3.22)



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