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営農経済渉外制度 先進事例に学ぶ成功のポイント
JA全国大会決議実践交流集会から (11/30)

 経済事業改革のキーマンともいえるJAの営農経済渉外担当者。4年ほど前から増えてきて今、2000人強と推定される。信用や共済の渉外担当に比べ、まだ少数だが、JA経済事業の収支改善に向け、今後の増加が見込まれる。だが、せっかく渉外制度を導入しながら失敗した例も多い。JA全中が11月中旬に開いた「JA全国大会決議・実践交流集会」では10分科会のうち「営農経済渉外制度定着の秘訣」という分科会の参加者がもっとも多く、JA組合長らの導入意欲を物語った。一方、制度定着への悩みも多様だった。そこで、この議論を追ってみた。

◆物流と店舗も考えて

 営農指導と一体で生産資材の推進をはかる必要があるとして渉外制度を導入するJAが多いが、同分科会ではその機能発揮のポイントを模索した。
 渉外活動が評価されないのは「支店への1人配置で兼務が多く、農家訪問ができていない」ことなどを挙げて、JA全農経済事業改革推進部JAコンサル室の近藤剛室長は、活動の実態や実績を把握するマネジメントの強化と、JA全体で活動をバックアップする仕組み作りが不可欠だと提起した。つまり経営者の視点の明確化を強調した。
 また物流と資材店舗を合わせた三位一体の改革が必要とした。物流では外部委託によるコスト削減、そして店舗では組合員の利便性を向上させる営農相談窓口の設置を提起した。

◆庭先に足を運ぶこと

 成功のポイントは「まずは農家の庭先に足を運ぶこと」とJA全農肥料農薬部の小高根利明次長は先進JAの声をまとめた。一方、失敗例では、組合員との人間関係ができていないまま過度な「推進ノルマ」を担当者に押しつけ、「種をまく前から刈り取り作業」をさせてしまっているケースを挙げた。このため当初はノルマを設けずに、訪問の仕組みづくりに徹すること、との対応方向を示した。
 金融や共済に比べ経済渉外の位置づけが低いとの問題点では、コンサルタント会社の助言者から「“エース”職員を配置すること」などの指摘もあった。

◆農家台帳を整備して

 先進事例ではJAあきた北(秋田)営農部経済推進課の畠山重信課長が「原則的にノルマはないが、推進目標の達成度に応じて人事考課に反映させ、また優良表彰もしている。生活購買も一緒にやっているが、できれば生活は切り離したほうがよい」と報告した。
 また肥料と農薬の前年度利用状況をもとに推進しているが、農家台帳には購買のほか作物の出荷量や販売率などのデータも載せて活用している。一方、担当者管理は日報制だ。JAの生産資材供給量は今年9月末実績で前年同期を約8%上回っているという。
 次いでJAハイナン(静岡)営農経済部の児島信夫営業担当次長は「JA職員は初めての人にモノを売るのは苦手。知った人の家ばかり訪問する。だから担当者を地元に配置せず、知らない地域で活動させる。これが成功のポイントの一つだ」と報告した。

◆サービスで負けない

 また▽どうしても買ってくれない人の家にも、顔だけは出すこと。いつかチャンスはある▽人材の選択が最重要、などと指摘した。
 さらに▽営農指導と渉外の密接な連携は難しい▽渉外担当は営農指導の研修を受け、半数は土壌分析・診断ができるが、将来はモノ売り専業にするほうが良いようだ▽商系の攻勢に対して営農指導事業を拡充することが大きな課題▽JAのOBによる営農指導の人材センターをつくってはどうか、などと提起した。
 このほかの論議でも、JAのOBを配置するホームセンターがあるなど、その激しい店舗展開への対応策として、営農指導と資材供給を結合したJAの総合的なサービスと信頼感をいっそう高めなければならないとの強調があった。

 広大な駐車場を持つホームセンターの店舗展開が激しい。JA全国大会決議の実践交流集会の「営農経済渉外制度」分科会は、こうした情勢を背景に活発に議論した。
 広大な駐車場を持つホームセンターの店舗展開が激しい。JA全国大会決議の実践交流集会の「営農経済渉外制度」分科会は、こうした情勢を背景に活発に議論した。

 

(2004.11.30)


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