JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします


大綱に基づく改革を着実に推進し
生産者が作る喜びを感じられる稲作農業を
農林水産大臣 大島理森


大島理森氏

 新年明けましておめでとうございます。
 平成15年の新年を迎えるに当たり、皆様のご健勝をお祈りいたしますとともに、農林水産行政の責任者として、所感の一端を申し述べ、年頭のご挨拶とさせていただきます。
 21世紀を迎え、我が国は、新しい時代に対応した経済・行政・社会への大きな転換が求められているところであります。こうした中、将来にわたり安心できる社会の構築に向けて改革の歩みを着実に進めている小泉内閣の下、本年も引き続き、全力でその職務を遂行すべく決意を新たにしているところであります。
 我が国農林水産業と農山漁村は、人の「いのち」を支える食料の供給という使命を担い、農地・森林・海を通じた資源の「循環」、環境との「共生」を実現する重要な役割を果たしております。このような「いのち・環境・共生」の基本的な枠組みづくりを国の責務として受け止め、生産・加工・流通・消費を一体的に捉えた「食料」のあり方、多面的機能を十分に発揮できる「農業・農村」のあり方を常に意識し、また、食の国際化の中で国民の食糧を確保していくための中長期的な戦略を持って、当面する課題に積極果敢に取り組んでまいります。
 
 まず、米政策の再構築について申し上げます。
 米については、消費の減少、生産調整の限界感、担い手の高齢化等まさに閉塞というべき状況におかれています。このような米を取り巻く環境の変化に対応し、水田農業の未来を切り拓くため、昨年12月に「米政策改革大綱」を策定いたしました。
 この改革は、平成22年度という目標年次を明確にして、米づくりの本来あるべき姿の実現を目指すものであり、消費者重視・市場重視の考え方に立って、需要に即応した米づくりの推進を通じて水田農業経営の安定と発展を図るものです。
 このため、担い手が大宗を占める生産構造の確立、農業者・農業者団体による主体的な需給調整の実施、消費者が求める安全・安心な米など多様なニーズに応え得る生産体制づくりや流通改革を実現すべく、生産構造対策、需給調整対策、流通対策を整合性をもって講じてまいります。
 このうち需給調整については、遅くとも平成20年度に「農業者・農業者団体が主役となるシステム」に移行することとしております。これは、生産調整を廃止するというものではなく、行政が生産調整の配分を行うシステムから農業者・農業者団体がその主体的判断で決めていくシステムへと、生産調整のやり方を変えていこうとするものです。また、来年度からいきなり「農業者・農業者団体が主役となるシステム」に移行するものではなく、国や地方公共団体が生産調整に全く関与しなくなるものでもありません。農林水産省としては、移行までの期間において、農業者・農業者団体の自主的・主体的取組の強化のための体制整備を後押しするとともに、移行後においても、客観的な需給情報の提供、自主的な生産調整に関する助言・指導、産地づくり推進のための助成等の支援を適切に行っていきたいと考えております。
 この大綱に基づく改革を着実に推進することにより、生産者が作る喜びを感じられ、消費者の選択の幅が広がるようにしていくとともに、我が国農業の礎である稲作農業が将来にわたり発展を遂げることができるよう、全力を尽くしてまいる所存です。

 WTO農業交渉につきましては、平成12年から精力的に交渉を行ってきたところでありますが、各国の立場や主張の違いが鮮明になってきており、本年3月に交渉の大枠、いわゆるモダリティを確立するという重要な局面を迎えつつあります。
 我が国は、このモダリテイの確立に向けて、バランスのとれた現実的・包括的なものとなるよう、「多様な農業の共存」を基本哲学として具体的な提案をしてまいりました。
 21世紀の世界が抱える、人口、食料、環境等の問題を踏まえれば、農業は、食料安全保障、多面的機能といった重要な役割を果たしていかなければならないものであります。このため、EU等との連携を一層強化し、米国、豪州等の非現実的で極端とも言える主張に対抗するとともに、途上国への働きかけを一層強め、バランスの取れた交渉結果が得られるよう全力を傾注してまいりたいと考えております。
 林野・水産分野についても、地球規模の環境問題や有限天然資源の持続的利用といった観点に立った提案を昨年12月に提出したところであり、引き続き交渉に尽力していきたいと考えております。
 本年2月中旬には、WTO非公式閣僚会合が東京において開催されます。この会議においても、我が国の基本的立場をしっかり主張し、各国の理解と支持が得られるよう働きかけてまいりたいと考えております。
 
 一方、国内の問題に関してでありますが、米政策問題にとどまらず、本年も、食料・農業・農村政策全般にわたり、改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 まず、BSEの発生、食品の不正表示、無登録農薬問題等により国民の皆様から「食」の安全と安心について厳しく問われている中、政府全体として、国民の生命と健康の保護を第一に、食品の安全性の確保等に向けて取り組んでいるところであります。
 現在、政府としては、昨年6月に食品安全行政に関する関係閣僚会議で決定された「今後の食品安全行政のあり方について」を受け、こうした基本理念の下、行政及び事業者の責務の明確化、リスク分析手法の導入、食品安全委員会(仮称)の設置等を内容とする食品安全基本法案を準備しているところであります。
 食品安全委員会の設置に当たり、農林水産省としても、スクラップ・アンド・ビルドの観点から食糧庁組織を廃止するとともに、リスク管理部門を産業振興部門から分離・強化するため、リスク管理を担う「消費・安全局」(仮称)を新設するなどを内容とする農林水産省組織の改革再編を実施することとしております。
 また、無登録農薬問題につきましては、昨年12月、臨時国会で無登録農薬の使用規制、罰則の強化等を内容とする農薬取締法の改正が緊急に行われたところであります。これらの措置を適切に運用するとともに、生産者並びに関係団体におかれましても、農薬の適切な販売・使用の徹底につとめていただき、国民の「食」に対する信頼を一日も早く取り戻したいと考えております。
 さらに、通常国会に向け、食品安全基本法の制定に合わせ、肥料取締法、農薬取締法等農林水産物の安全性の確保に向けた関係法の見直しを進めることとしております。
 食品がいつ、どこで、どのように生産・流通されたかなどについて消費者がいつでも把握できるようにするトレーサビリティシステムについては、牛の個体識別情報を個体識別番号により一元管理すること等によって、牛肉についてその制度を整備するとともに、青果物、米等についても、順次導入を推進します。
 このほか、食の安全・安心に向けて、消費者が知識を深め、積極的役割を果たされることが重要でありますので、「食育」を推進する国民的な運動の展開を図るとともに、わかりやすい食品表示の実現や食品表示の適正化等に取り組んでまいります。
 なお、組織と法制度の両面における対応を含め、食の安全と安心の確保に向けての取組を確実に進めるため、昨年11月より、省内に「食の安全・安心のための政策推進本部」を設置しているところですが、今後、同本部を中心として、国民の皆様に食品安全に関する施策の方向を明らかにしていくための「食の安全と安心のための政策大綱」(仮称)を策定することとしております。
 
 また、農業の構造改革を加速し、意欲ある経営体が活躍する環境条件を整備します。
 まず、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の大宗を担う望ましい農業構造を実現するため、チャレンジ精神をもった新規参入者の確保、認定農業者等担い手への農地の利用集積による経営規模の拡大、農業経営の法人化・集落営農の組織化等に集中的・重点的に取り組むとともに、その基礎となる農地の確保、生産基盤の整備、技術の開発・普及などを推進してまいります。
 また、地域農業や地域経済の活性化に資する構造改革特区制度の着実な推進を図るとともに、農業経営の法人化及び担い手への農地の利用集積の一層の促進等の観点から農地制度の見直しを進めます。
 さらに、組合員の期待に応えうる健全な農協経営の確立、消費者ニーズへの的確な対応など新たな農協へと脱皮を図るための農協改革を促進します。
 
 さらに、農山漁村で人々が誇りを持って生きていくことを基本とする政策を展開します。
 美しい農山漁村の景観の維持を図りつつ、生活環境の整った利便性の高い村づくりの推進に向けて、e−むらづくり計画の策定や自然と共生する田園環境の創造、棚田、里地・里山、海辺の保全等を進めるとともに、都市と農山漁村のつながりの強化などのための対策を総合的に進め、農山漁村の存在を国民共通の財産として位置付けてまいります。
 また、我が国には、食品廃棄物、稲わら、家畜排せつ物、未利用の木材や廃材、貝殻、海藻等の生物系資源、いわゆるバイオマスが豊富に存在しています。このようなバイオマスをエネルギーや製品として総合的に利活用し、持続的に発展可能な社会を実現するための国家戦略として、昨年12月に農林水産省が中心となり、環境省をはじめとする関係府省と連携し、政府を挙げて「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定したところであります。今後、地球温暖化防止、循環型社会の構築、農林漁業・農山漁村の活性化等に向けて、関係府省とも連携しながら、この国家戦略に掲げる具体的施策を実行に移してまいります。
 
 以上、年頭に当たり、私に所感の一端を申し上げました。
 人の生きる基本である「食」を司り、国民の生活に密接した農林水産行政の展開に当たっては、特に国民の皆様のご理解、そして信頼をいただくことが重要であります。本年も、国民の皆様のご意見を真摯に受け止め、21世紀のしっかりとした農林水産業の姿をつくるため、全力を尽くしてまいります。
 皆様方のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。




農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp