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円高で内外価格差 拡大

   11年 海外主要5都市の食料品の小売価格調査


 農水省は、昨年11月に実施した東京と海外主要5都市の食料品小売価格調査の結果を6月6日までに公表した。
  対象都市は、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ハンブルグ、ジュネーブ。調査対象品目は、各都市で販売されている「共通食品」29品目と米、みそ、しょうゆなど「日本食品」の13品目。
  調査結果によると、共通食品では、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ハンブルグの価格は東京の6〜7割程度だが、ジュネーブでは東京の価格に近いものとなっていた。
  ただし、共通食品と日本食品を合わせて比較した結果では、どの都市でも東京と同程度の水準となった。

(表1・東京及び海外主要5都市における食料品の小売価格調査結果

  今回の調査では、過去の購買力平価との比較も初めて示した。
  購買力平価とは同じ品質・規格の食品をたとえば東京とニューヨークで購入する場合にそれぞれいくらで購入できるかを一円あたり、あるいは一ドルあたりで表したもの。
  共通食品について、前回の調査と比べると、購買力平価はニューヨークでは前回167円/ドルが151円/ドル、ロンドンでは前回262円/ポンドが249円/ポンド、パリでは前回28円/フランが26円/フラン、などすべての都市で、購買力平価が改善し東京の価格が安くなる方向に変化している。

  購買力平価が改善した要因として、農水省では@前回調査時点で高騰していた野菜価格が今回は安定してこと、A農産物価格政策の見直し、食料品の流通効率化、関税率の引き下げなどの効果が現れてきた、としている。
  ただし、前回調査にくらべて、内外価格差は各都市において拡大した。内外価格差は、購買力平価と外国為替レートに比だが、各都市で1〜2割前後の円高に振れたため拡大した。

グラフ

  たとえば、ニューヨークでは購買力平価は改善したものの、為替レートが前回の約121円から今回は105円と円高がすすんだ。このため、内外価格差の変化要因として、購買力平価はマイナス0.17ポイントとなったが、為替要因がプラス0.23ポイントなり、結果的に内外価格差は0.06ポイント拡大した。


内外価格差の要因はさまざま

日米の農家の農業粗収益に対する
農業経営費の割合 (千円、%)
  粗収益A 経営費B B/A×100
3,705.3 2,459.0 66
13,162.2 10,406.0 79



  しばしば内外価格差の縮小が日本農業の課題と叫ばれ、わが国では生産者の手取り価格をもバッシングの対象にする風潮すらある。
  しかし、日米で農業経営を比較すると、農業粗収益に対する農業経営費の割合はほぼ同程度。

 

グラフ  また、日米の主要な生鮮食品と加工食品の価格構成比をくらべても、小売価格にしめる生産者価格と流通経費の割合はほぼ同様の傾向にある。

  しかし、日本では農家1戸あたりの農用地面積は少なく作業効率を高める妨げになっているほか、農地価格も高い。さらに賃金、肥料・飼料等の生産資材価格や、ガソリン・電気代などの光熱費も割高で生産コストを押し上げる要因になっている (表2)。


表2・食料品の価格に影響を与える諸要素の主要国との比較


  また、流通経費に影響する燃料費、電気料金、高速道路利用料金も割高となっているうえに、わが国では食品の品質、鮮度に対する消費者ニーズに対応するための、きめ細かな生産や少量パックでの商品づくりと配送が求められていることもコスト増の要因となっている。

  農水省では、食料品の内外価格差は「種々の要因が重層的に関与して形成されている」としている。農産物の価格を考える際には冷静な視点が必要になる。

 

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