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B級品の麦が売れなくなった

B級品麦を国産飼料として見直し、
 畜産物への信頼を

  鎌形正樹(立正大学研究生)
鎌形正樹氏


 麦の政府買い上げ制度が、2000年から段階的に廃止されることになった。
 それに伴い、売れない・流通経費が出ないほど価格が低い、などの理由で、B級品の麦がうまく流通されない可能性がでてきた。

◇ますます価格下がるB級品麦

 今年から麦の民間流通への移行を進めている茨城県南部のある農協では、昨年まで飼料用として集荷していたB級品大麦を、積極的には買わない方針を出した。そのため、ここの生産者集団である、水田農業担い手組合(この場合転作組合を兼ねている・組合員4戸)では、独自に販売もしくは処分の方法を検討する必要がでてきた。

 この組合では、小規模養鶏農家から餌として買いたいという問い合わせがあり、1999年産のB級品麦は25`袋で約1000円のところを、2000年産は、700円にしたという。大麦のB級品の出る割合は、年によりかなりのばらつきがあるが、1割前後を見込んでいるそうである。今年は約30f栽培して110袋のB級品が出ている。
 また同県北部では、さらに安く、大麦は250〜500円、小麦は500〜700円で取引きされている。どちらも農家と農家集団の相対取引きでの価格であるが、県北の安値に関しては、畑麦ではないかと考えられる。

◇価格的にもB級品麦への切換えは可能

 どちらの価格にしても、買い取り側の小規模畜産農家にとっては、経営的に有利な状況になったと見ることが出来る。自家配合飼料の主原料になっている2種混合飼料(トウモロコシにごく僅かの量の魚粉を混ぜたもの)が、末端の小売店で、20`入りの紙袋が、昨年からほぼ700円台で推移しているからである。

 麦は、トウモロコシの代わりに飼料にするのに適している原料である。『日本標準飼料成分表』(1995年版)を見ると、トウモロコシと比べて粗脂肪では劣るものの粗蛋白質では、優っている。同重量中のカロリーは、小麦・大麦・トウモロコシの順で、1`c当たり4690、4570、4510`カロリーとなっており、熱量的にはほとんど同じと考えて差し支えないであろう。また消化可能な蛋白質・脂肪・炭水化物の合計として表される可消化養分総量は、牛に与えた場合の数値として、トウモロコシ79・9%、小麦78・7%、大麦74・1%となっており、豚・鶏の場合も大きな違いはない。

 大麦は外皮がついたままであるため若干消化が悪いことを考慮する必要があろう。形体的に見ると2種混のトウモロコシは粉砕してあり、それが麦の粒と同程度となっているため、麦の場合はそのまま使うことが可能である。

 以上のように価格的にも栄養的にもトウモロコシ飼料のかなりの部分をB級品の麦に切換えて使うことは可能である。国産飼料を使うことによって、「ポストハーベスト農薬・遺伝子組換え作物の混入の心配がない」というセールスポイントも追加される訳であるから、この点を経営に有効に使いたいものである。

◇輸入飼料で消費者の信頼揺らぐ

 B級品の麦はこれまでの政府買い上げ制度の中で、飼料用の位置付けがなされていた。これは適切な処置であったといえる。民間流通化に伴ってこれがどのようなものになるかは予断を許さない。

 日本の畜産物の自給度は高い。けれどもその餌は、ほとんど輸入に頼っているのは周知の事実である。特にアメリカのトウモロコシの出来不出来に、日本の畜産は左右されてきた。また、国内産だからおいしい・安全であると宣伝してきたが、ポストハーベスト農薬の問題、最近では遺伝子組み換え作物の問題で、消費者の信頼が揺らいでいる。つまりこれは、餌がほとんど輸入で、しかもアメリカからの小麦、大豆、トウモロコシを大量に餌として利用していることによって起きている問題といえる。

 これを機会にB級品の麦など、国産の飼料を輸入飼料と分別して利用し、日本の畜産物への信頼がさらに高まる方向に努力すべきではないか。そのためには、まず全国組織である系統をフルに活かし、単協どうしの情報の交流を密にする必要があろう。そして国産飼料の現物及び情報の提供などを通して、どのように物(麦)と人(農家)を結ぶかというコーディネートする立場でさらに能力を発揮してもらいたい。

 

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