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農家まで十分に伝わっていない低コスト生産資材情報

「農業生産資材に関する意識意向調査」(農水省肥料機械課)から


  農水省農産園芸局肥料機械課は、「生産資材費低減のための行動計画の見直しに際し、農家が農業生産資材に対してどのように考え、どう利用しているのか」、その意識およびに意向を把握するための調査を行い、6月20日にその集計結果をとりまとめ発表した(以下「調査報告書」)。
 そのなかから、注目されるものを紹介する。

調査農家の概況

 調査は、東京・大阪・沖縄を除く道府県の水稲稲作を主とする土地利用型農家1016戸を対象に、道府県職員による聞き取り調査方式で、今年4月に実施された。
 回答を得られた農家は956戸(回収率94.1%)で、その経営規模別内訳は、1ha未満が254戸(27%)、1〜3haが337戸(35%)、3ha以上が365戸(38%)。
 専業・兼業別でみると、全体では専業農家が48.2%、1種兼業農家15.1%、2種兼業農家36.7%だが、1ha未満農家の72%が2種兼業農家で、10ha以上農家(147戸)の92%が専業農家となっている。  また、今後の農家経営の意向については、専業農家の45%、10ha以上農家の61%が経営規模の拡大を指向しているが、2種兼業農家の26%、1ha未満農家の24%が経営規模縮小を指向していると回答している。

高いJAの利用率 ――購入先とその理由

図1 各生産資材の購入先は1〜3図の通りだが、肥料・農薬では80%以上が農協から購入しておりJAのシェアが高いが、農業機械の場合には50%強が農協から購入しているが、機械小売商からも40.9%あり拮抗しているといえる。
 購入先を選定する理由として「長年取引しているから」を、肥料63.3%、農薬61.4%、農業機械65.8%が第1位にあげている。「価格が安いから」を第1位にあげているのは肥料9%、農薬10%、農業機械9%にすぎない。経営規模別にみると、規模の大きな農家ほど「価格が安い」という回答が多くなるが、肥料の場合でみると10ha以上規模で15%にとどまっており、農薬や農業機械でも同様の傾向にある。


図2 図3

アラジンを知らない農家が23%も――肥料

図4   平成9年から販売されている「輸入高度化成肥料」(アラジン)については、図4のようにすでに「使用している」農家は22%となっているが、「知らない」と回答した農家が23%もあり、「情報が個々の農家まで十分に伝達されていない状況が伺われる」(調査報告書)。また、使用していない理由として「地域で売っていないから」という回答が29%ある(図5)ことも、今後のアラジン普及を考えるとときに注目されよう。

 約54%がアラジンを使用していないと回答しているが、その理由は図5の通りだ。調査報告書は「農家の輸入高度化成肥料(アラジン)についての知識・経験の不足および商品供給の不十分さが伺える」と指摘している。

 BB肥料(粒状配合肥料)については「使用している」35%、「使用していない」41%、「知らない」24%となっているが、使用していない理由はアラジンと同様の傾向を示している。
 アラジンもBB肥料も経営規模が大きくなるほど使用している農家が多くなり、「知らない」農家数が少なくなっており、経営規模が大きい農家ほど資材への関心が高く、コスト低減を指向しているといえるようだ。  


図5

効果が優れたものを購入――農薬

 農薬を購入するときに重視する事項は(図6)、「効果が優れたもの」61%に対して「価格の安価なもの」は10%となっている。経営規模別にみると「効果」は、1ha未満53%、1〜3ha59%、3〜10ha67%、10ha以上69%と規模が大きくなるほど高くなっている。それに対して「安価」は6%、13%、10%、10%と規模による大きな変化はなく、低価格志向は弱いといえるようだ。

 10a当り1kgの散布ですむ水稲除草剤(1kg粒剤)については、すでに66%の農家で使用されており、「販売されていることを知らない」農家はわずか4%となっており「広く農家に知られている」といえる(図7)。同剤を「利用しない」理由として40%が「使用したが散布しずらい」ことをあげている。その理由を調査報告書は「散布の不慣れ(動力散粒開口部の調製)と考えられる」としている。

図6 図7


高機能・多機能を求める大規模農家――農業機械

図8 備える性能を基本的なものに特化する代わりに価格を1〜2割安くしたHELP農機の利用意向(図8)では、すでに「利用している」3.3%、「更新時に利用したい」32.1%に対して「知らない」が40%強もあり、ここでも情報が農家まで十分に届いていないことが推測される。

 また「今後も利用したいと思わない」という回答が全体では24%だが、経営規模が大きくなるほど高くなり、10ha以上規模では約37%にのぼっていることが注目される。その理由として専業農家の67%、大規模農家の72%が「機能、装備の充実した機械が良い」と回答しており、こうした層では「価格面よりも高性能、多機能な農業機械を求めるニーズもあることが伺える」。また、「大型機械ではHELP農機が設定されていないから」が3〜10haで21%、10ha以上で24%あり「大型機械でのHELP農機の設定が今後の課題と考えられる」(調査報告書)。  


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 この他、同調査では「施肥量の節減への取組」(取組んでいる68%)、「農薬使用量の削減」(取組んでいる68%)や「中古農機の購入動向」「遊休農機の保有状況」「農業機械経費の節減方法」などについても調査しているが、ここでは省略する。

 この調査結果を読んだ感想としては、アラジンやHELP農機など、生産資材費用低減運動の柱としてJAグループが推進している資材の情報が、農家の段階まで十分に伝わっていないということだ。その原因がどこにあるのかを明らかにし、それを解決することで状況が変化するのではないだろうか。  

 

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