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有利購買と安定供給にさらに力が
JA全農の有明石油基地が竣工

 全農有明石油基地(福岡県大牟田市)の竣工式が11月21日に開催された。同基地は、昨年7月に着工され今年9月に竣工・稼動したJA全農にとって9番目の石油基地だが、輸入船受け入れが可能な基地としては西日本では初めての拠点となる。これでJA全農の石油基地での取扱量は、全供給量の約40%を占めることとなった。

全農有明石油基地全景
全農有明石油基地全景
◆JAの石油事業を支える全国の石油基地

 最近の世界の石油業界は、メジャー同士の合併、OPEC(石油輸出国機構)の足並みの乱れなどによって激動しているが、国内も平成8年3月の特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)廃止以降、国際化、自由化、規制緩和が進み、元売会社の再編・系列化が急速に伸展し、業界内の競争が激化してきている。

 こうしたなか、日本のSSの約9%、供給量の約6%を占め、流通業界最大手の位置にあるJAグループ石油事業は、早くから購買力の強化と主体的事業展開を行うために、JA−SS統一塗装や自主配送体制の確立、JASS−NETなどを活用した合理的・効率的なSS運営の確立など、JAチャネルの構築(JAブランドづくり)と、JA石油事業採算確保に向けての取り組みを進めるとともに、自主供給体制の構築を進めてきた。  現在、全農は「第2次JA石油事業強化全国運動」(11年〜14年3月)を提唱している。この運動では、JAチャネル化を背景に、製品輸入・委託精製などの多様な調達方法による有利購買、安定供給をはかることにしているが、その中心的な役割を担うのが石油基地だといえる。

◆9つの基地で全供給量の約40%を取扱

 石油基地の建設は、昭和52年の釧路石油基地稼動以降、北から仙台(宮城)・新潟・金沢(石川)・東海(愛知)・山陽(広島)・西日本(愛媛)・唐津(佐賀)の8基地が建設され、全農全取扱量約850万klの約30%以上がこれら基地から出荷され有利購買機能を発揮してきた。
 今回竣工した有明基地は輸入機能をもち、タンク貯蔵能力(5万2000kl)は全農石油基地のなかでは3番目の規模だが、備蓄分を除いた流通基地としては最大の基地であり、年間取扱数量は65万klの見込みである。
 有明基地の稼動で、全国9基地の合計タンク貯蔵量は約31万kl、年間出荷量は約330万klとなり、全国の石油基地からの供給数量は全農供給数量の約40%を占めることになる。

有明基地の供給エリア図
有明基地の供給エリア図

◆韓国・台湾に近く、A重油も輸入できる基地

 有明基地は、輸入ができる基地としては、仙台、新潟、金沢に次ぐ4番目の基地だが、他の3基地にはないA重油が輸入できる機能を持っており、供給エリアである九州地区は、施設園芸の盛んなところでもあり、同基地への期待は大きい。
 また、同基地は、国内だけではなく、輸出余力のある韓国、最近国内需要量を上回る石油プラントが建設され輸出余力ができた台湾に近いなど、輸入を視野に入れた基地としては、地理的な優位性をもっている。竣工式が行われた11月21日には、韓国からの輸入第一船が接岸し、A重油約5200klが荷揚げされた。

◆安全・確実・迅速を実現する最新鋭な施設・設備

 有明基地は、最新鋭の施設・設備によって、安全・確実・迅速を追求した石油基地だ。例えば、出荷施設であるローリー積場をみると、18車線(白油10、黒油6、予備2)のうち4車線は28kl車に対応している。そしてハッチ管理システムを採用し、ガスフリーも白油全車線に設置され、作業効率と混油対策の確実性、安全性を高めている。

 供給エリアは福岡県南部、熊本県北部および中部、大分県と佐賀県の一部となり、唐津基地からも一部が有明基地にシフトされることになる。また、従来の基地では受注・出荷を一つのシステムで運用していたが、今回これを受注と出荷のシステムに分け、受注については有明で唐津の分も含めて集約することにした。全農では、今後、受注については現行の各基地受注から、当面4〜5基地に、将来的にはさらに集約し流通コストの低減をはかっていく考えだ。

◆「戦いの拠点」となる基地として期待高まる

 竣工式には、九州地区のJAや経済連、国や県の関係機関、大牟田市・市議会、地元漁協、石油元売各社、関係会社などの関係者と大池裕会長、森口旻副会長、田林聰常務、尾崎亮自動車燃料部長をはじめJA全農関係者など250名余が列席した。式は午前中に有明基地で神事式を行い、午後三井グリーンランド・ホテルヴェルデに会場を移し、竣工披露式が行われた。

玉串を奉奠する大池JA全農会長
玉串を奉奠する大池JA全農会長
披露式会場風景
披露式会場風景

 披露式では、大池会長が主催者を代表して「有明基地の竣工で、有利購買と安定供給にさらに力を発揮できるものと自負しています。また、当基地はガソリン・灯油・軽油に加えて、営農用A重油の輸入もできる基地であり、ハウス園芸の盛んな九州の会員各位の付託に応えられるものと確信」していると挨拶した。続いて、田林常務が基地建設の経過を報告。設計・施工を担当した全農燃料テクノ(株)澁谷晃社長に感謝状が大池会長から贈られた。

 続いて、石井宏和福岡県土木審議監、栗原孝大牟田市長、米ケ田研男JA熊本経済連会長、天坊昭彦出光興産(株)専務が来賓の祝辞を述べ、地元関係者や経済連、全農代表ら12名が鏡開きを行った後、安西萬亀男JA佐賀経済連会長の発声で乾杯し、懇談に入った。約2時間の披露式は、池田静男JAおおいた経済連会長の音頭で万歳を三唱し、森口全農副会長が閉会の挨拶を述べ、無事終了した。

 ここ数年低迷するJAグループの購買事業のなかで、独自のブランド戦略にもとづく積極的な事業展開によって、石油を中心とする燃料事業は着実に進展してきている。そうしたとき「購買事業の大きな柱をなす石油事業の”戦いの拠点となる基地”が竣工したことの意義は、誠に大きなもの」(米ケ田JA熊本経済連会長の祝辞)があるといえる。



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