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解説記事

国際的に通用する試験機関として認定
食品・農薬の分野で国内で初めてISO/IEC17025を取得

―― JA全農 営農・技術センター(農産物・食品検査室) ――


イメージ写真
 農産物、食品、飼料中の残留農薬、重金属類(カドミウム、ヒ素、鉛、スズ)、食品添加物(防かび剤=イマザリル、OPP、DP、TBZ)、臭素の検査を実施している全農農産物・食品検査室残留農薬検査グループは、試験所認定の国際規格であるISO/IEC17025の認定をこの4月に取得した。(認定機関〈JCLA〉)認定の対象は農産物中の残留農薬に関する試験で、食品・農薬分野では国内初めての認定となった。
 ISO/IEC17025の概要は別掲の通りだが、農産物・食品検査室など分析試験機関に分析を依頼するのは、そのデータに基づいて何らかの判断や決定をしたいからで、その情報の正確さには関心をもっているが、自分ではそれを確かめることができない。特にデータの信頼性を判断するには、試験法自体が高度で専門的なために、一般の人たちには理解できない領域だといえる。そこで、こうした人たちに成り代わって、その専門分野に詳しい審査機関が、試験機関の技術能力、管理能力などを客観的な基準に照らして審査し、基準に適合しているかどうかを判断し、適合していれば信頼性の保証として「認定」をし、社会に公表することになる。このときの客観的な基準がISO/IEC17025という国際規格ということになる。

◆検査データは国際的に通用

 この規格に適合したということは、全農農産物・食品検査室が第三者からみても「信頼できるデータを提供できる能力・体制がある」という保証をされたことになる。
 試験機関については、品質保証規格であるISO9000シリーズよりもISO/IEC17025の方が国際的にも重視されており、欧米諸国では1970年代から試験機関の能力を把握する基準、品質システムを確立する基準として利用されてきている。そしてISO/IEC17025認定試験機関で分析されたデータは相互承認協定によって国際的に通用するので、農産物・食品検査室で分析されたデータは、欧米各国でもそのまま使うことができる。
 今回認定を受けた試験方法は果実、野菜、イモ類を対象とする「全農マルチA法(75種類農薬)」と国が告示し農薬の単一成分ごとの分析法(各告示法による単成分分析法)、そしてコメを対象とする「全農マルチB法(33種類農薬)」と各告示法による単成分分析法だ。全農マルチ法とは、同検査室が開発し実用している多種類農薬の同時(一斉)分析法(マルチスクリーニング)のことだ。

◆JAグループの販売事業強化に貢献

 認定取得の意義について神田尚幸同検査室長は、手順・ノウハウの明文化、失敗・目標の不達成は必ず起こることを前提に、その情報が確実にシステムの責任者に伝わり、対策がとられる仕組みなど「透明性」、体制・責任の明確化などがさらに徹底されることになったこと。責任分担が明確になり、帳票類の整備がはかられ、改善活動が活発化するなど業務・事務の効率化とレベルアップに役立つことをまずあげた。
 そして、同検査室の信頼性が国際的に保証されたことで、社会的評価がさらに高まったことによって、全農やJAグループ取り扱い農産物の安全性を確認することによって販売事業の強化に貢献できることや、同検査室が行っている有料受託検査の充実・拡大推進をできると語った。
 今後の課題としては、この認定は一度取得すればすむ永久資格ではなく、定期的な受審が求められており、システムの維持・向上が要求されるので、今後も継続的な取り組みを徹底していくことをまずあげた。そして、認定対象農薬の種類を拡大することと、農産物についても今回カバーできなかった豆類、茶などにも範囲を広げていきたいという。
 同検査室の有料受託検査実績が11年度の400サンプルから12年度は463サンプルと増加し、コメを筆頭に各種野菜・果樹、豆類、茶などの特産物、ジュース、缶詰、梅干など加工食品まで多岐にわたっている。「安全・安心」は消費者の高い関心を集めており、そうしたときに、同検査室が世界に通用する試験機関であるという認定を受けた意義は計り知れないといえる。
 JAグループがこのことを有効に活用して、消費者に国産農産物の「安全・安心」を保証することが、増大する輸入農産物に対抗する大きな力となることは間違いないだろう。

認定証
IEC17025の認定書
【ISO/IEC17025とは】  ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準化会議)の合意のもとに制定された試験所のための認定規格で、試験所(試験機関)の能力に関する一般要求事項のことをさす。
 試験所認定制度は、1947年にオーストラリアで軍が調達する資材を対象に開始されたのが始まりである。その後、1970年代に欧米諸国で試験所認定の仕組みが導入され、1978年に国際規格としてISO/IEC17025の前身であるISO/IECガイド25が発行される。
 日本ではWTO/TBT協定の理念に基づき非関税障壁を撤廃し、国際的な整合性をはかるためにISO/IECガイド25に基づいた試験所認定制度を創設することになり、1996年に(財)日本適合性認定協会(JAB)によって認定事業が開始された。
 次いで、化学関係の認定機関が早期に必要ということから(社)日本化学工業協会によって日本化学試験所認定機構(JCLA)が1998年に設立され認定事業が開始された。


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