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解説記事

協同組合の良さを活かしたコンプライアンスを
――新設された全農法務コンプライアンス室の仕事

 JA全農はこの8月に「法務コンプライアンス室」を新たに設置し、その室長に山内元二氏(前肥料農薬部次長)が就任した。そこで、新部署が具体的にどのような役割を果たすのかを、山内室長に聞いた。

自己管理できる職場風土を

山内元二氏 「コンプライアンス(compliance)」とは、法令遵守という意味で使われることが多い。しかし、企業倫理・経営倫理との関連で論じられたり、リスク管理の一環として論じられるなど幅広い使われ方をされ、一般的には『社会秩序を乱す行動や社会から非難される行動をしないこと』とされている。
 JA全農が「法務コンプライアンス室」を設けた意味を山内室長は自動車の運転に喩えて「協同会社も含めて全農グループが交通ルールをキチンと守って走っていくために、信号機をつけた」ような感じだという。
 年内にはコンプライアンスの基本的なマニュアルをつくる予定だが、「ルールを守って実際に運転するのは、各部門だから、職場での自己管理が基本」となるので、「職場職場でチェックしていく職場風土をつくりだしていく」ための手助けをしていくことが仕事だとも考えている。
 全農グループの事業は多岐にわたっており、それぞれの事業ごとにそれに関わる法令や省令などがあり、それを遵守するのは当然だが、その上にブランド基準、品質基準がある。とくに食品にかんしては「全農」あるいは「農協」ブランドは安心で安全だという消費者の信頼が高まってきており、各部門(会社)におけるコンプライアンス意識の向上はますます重要になってきているといえる。
 ここ数年、食品事故が社会的な問題となることが多いが、そのときの「リスク管理」も重要な仕事だ。現在起きている「狂牛病」問題は、例えば全農グループに直接的な責任はないが、「さまざまな情報を把握して正確に組織につないでいく」ことがコンプライアンス室の仕事だと山内室長。

工業的所有権から情報管理まで

 法務コンプライアンス室としては、各部門・県本部が行う契約から係争、法律相談を行う法務部門とコンプライアンスの2つの仕事がある。
 法務部門としては、今後、工業的所有権、知的所有権の問題やJAマーク・全農マークの権利・義務の問題をどう考えるかに取組んでいく。また、コンプライアンスとしては、インターネットなどITの進展にともなう情報管理をどうしていくのかも大きな課題だろう。
 入会以来約30年を農薬畑できた山内室長だが、「いまは毎日が勉強です」という。そして「民間企業とは違う協同組合の良さを活かしたコンプライアンスのあり方をつくっていきたい」と考えている。
 


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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