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論壇
米政策と政府の役割 


 食糧法施行後、生産者・生産者団体の意向や主体的取り組みが強調されてきた。それが、生産調整研究会の「中間とりまとめ」では「農業者の主体的経営判断」となって米政策の基本理念にまで高められ、需給調整に関する行政と生産者団体の役割分担の根本的な見直しも提示された。
 さらに、10月17日に再開された研究会では生産調整配分の即時廃止案も提出され、他の3案も含め共通して全国米需給検討会議(第3機関)による米需給見通しなどの検討、計画流通米制度の廃止と新設する安定供給支援法人(仮称)による供給制度の導入、などが示されている。
 この内容は、基本的には政府は米政策から手を引き、すべてを農業者や民間の責任とする考え方に基づくもので、生産者(団体)の間には米価の低落を促進し、水田農業の崩壊につながるとして批判が強い。
 いうまでもなく、現在の米政策は食糧法に基づいて実施されている。この食糧法は食管法に代わって制定された。それは米においても市場メカニズムによる流通と価格形成が強まり、さらにUR合意によるMA米輸入もあり、実態と食管法の全量政府管理の体系との間に乖離・矛盾が生じたためであった。
 つまり食糧法は市場メカニズムを基調に、わが国の米政策をWTO体制に適応させるための国内体制整備で、「原則自由・例外規制」の体系といえる。
 したがって食糧法では恒常的米輸入を前提に、自主流通米(民間流通)が流通の主体で、政府米は備蓄に限定され、流通業者も指定・許可制から登録制となった。計画流通米のほか計画外流通米も認められ、制度的にも需給実勢による価格形成が促進された。
 しかし制定当時、“食管法の部分的手直しに過ぎない”との批判も聞かれたように、食糧法では一面で米の需給と価格安定における政府の役割も規定していることを無視するわけにはいかない。例えば法律の目的を「政府による主要食糧の買入れ、輸入及び売渡しの措置を総合的に講ずることにより・・・・需給及び価格の安定を図る」(第1条)ことと規定している。また生産調整は「農業者ごとに定められた水田で・・・・農林水産省令で定める米穀の生産活動の調整」(第3条2項)であり、基本計画は米穀の需給と安定を図るため「農林水産大臣が・・・・毎年・・・・定めること」(第4条)となっている。
 以上のように、食糧法は「原則自由・例外規制」の体系ではあるが、米の需給と価格の安定について政府の責任と役割も規定していることは間違いないのである。これは食糧法をどう認識するかにかかわらず明白なことである。
 農業生産においても農業者が主体性を発揮し、自らの経営を維持管理していくことは重要である。また、お互いに資金拠出などを行い、地域農業の発展と国民食料の安定供給のために行動することは当然のことである。しかし現在米政策で強調されている内容はそうではない。また米の需給と価格を真に安定させる途でもない。逆に、米も普通の商品としてアグリビジネスの利潤の対象とすることを目指すものといえるのである。そのため法律の無視や拡大解釈はすべきでなく、ましてや一方的な論理による法律改定は許されないのである。
 WTO新交渉が進められている時だけに、食料自給率目標を達成する上からも、むしろ米政策における政府の責任と役割は一層重要性を増しているといえよう。



農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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