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論壇
「米政策改革」への対応


 「米政策改革」に関する2004年度予算の概算要求が示された。そこには名称変更されたものもあるが、基本的には当初示されていた対策を予算面から具体化した内容となっている。この段階で個々の対策の検討も必要であるが、今回の「米政策改革」を考える上でも、それが実施されるようになった背景をみておくことも重要に思える。
 まず指摘したいのは、生産調整を中心に、とくに90年代中頃以降米政策がめまぐるしく変更されてきたことである。
 その経過を見ると、生産調整が本格的に開始された70年は単年であったが、それ以降はすべて一定期間をかけて実施され、平成米騒動期の「水田営農活性化対策」でも3カ年であった。しかし、96年からの「新生産調整推進対策」は当初3カ年の予定だったが、期間中に「新たな米政策大綱」が決定され、2カ年でうち切られた。その後の「緊急生産調整推進対策」も2カ年とされ、2000年から開始された「水田農業経営確立対策」は期間は5カ年であるが、毎年米政策の「見直し」が提言されている。そして、これまでのこうした米政策の変更を集大成したのが今回の「米政策改革」といえる。
 では何故90年代中頃以降米政策はめまぐるしく変更されたのか。それには多くの理由が考えられるが、最も重要なのはこの時期に米の持越在庫量が増加し、その財政負担削減が国政上の課題となったためである。政府は97年に閣議決定した「財政構造改革の推進について」で、「農林水産関係予算は危機的な財政事情」にあるため「重点的・効率的なものにすること」とし、「米の政府備蓄水準の早期適正化を図ること」を強調した。また、「食料・農業・農村基本問題調査会答申」は今後の「行政手法」として、とくに「国際規律との整合性」とともに「財政措置の効率的・重点的運用」を強調していたのである。
 こうした背景のもとで実施された「新たな米政策」では、政府の持越在庫量の削減を目的とした備蓄運営ルールが決定された。さらに、2001年12月の「備蓄運営研究会報告」では150±50万トンとしていた適正備蓄量を100万トン(6月)に削減した。この結果1997年に352万トンあった持越在庫量は2002年には201万トンにまで減少し、備蓄に要した経費は1994年の1980億円が1999年には40億円に激減した。それにもかかわらず、小泉内閣の市場原理主義的な政策により、その後も農林水産関係予算の削減は継続されているのである。
 今回の米政策改革もこうした考えで策定されていることはいうまでもない。2004年度予算の概算要求をみても、全中の要求を取り入れているところもあるが、基本的には政府の予算を可能な限り縮減し、あとは「農業者・農業者団体」の「主役」としての責任と負担を増加する内容となっている。
 経済不況で国家財政にも多くの困難がある現在、農政上の無駄な経費は削減する必要がある。また農業政策において「農業者・農業者団体」の主体的な取り組みが一層重要になっていることはいうまでもない。現に農業の危機的状況を改善するため、多様な住民も含めた創意ある取り組みが地域で強まっている。
 しかし、そのことは政府の責任と役割を軽減することを意味するのではなく、こうした自主的・自発的取り組みが本当に成果を上げるためにも、財政的な支援を含め、国内農業を発展させ、国民の食料を安定的に供給するという理念を明確にした国の政策が不可欠なのである。
 そのためには、市場原理主義に基づいた現在の政策を地域の住民本位、換言すれば消費者も含めた国民本位に転換する必要があるが、「農業者・農業者団体」は個々の対策の改善要求とともに、こうした課題も併せて重視していくべきではなかろうか。 (2003.8.26)



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